阿部サダヲ、「寄生獣」でミギーを演じ切り山崎貴監督にどうしても伝えたいこと
2014年11月23日 11:30

[映画.com ニュース] 山崎貴監督、染谷将太主演で岩明均氏の伝説的漫画を2部作で映画化する前編「寄生獣」が、第27回東京国際映画祭のクロージング作品としてワールドプレミア上映され、その全貌が明らかになった。スケジュールの都合で華やかな場に阿部サダヲの姿はなかったが、染谷が演じた主人公・泉新一とともに今作の“中心的人物”となるのは、パラサイトのミギー。渾身のパフォーマンスでミギーに息吹を注ぎ込んだ阿部に話を聞いた。(取材・文/編集部、写真/江藤海彦)
「寄生獣」「寄生獣 完結編」として2部作で映画化される今作は、「月刊アフタヌーン」(講談社刊)に1990年1月号~95年2月号に連載されていた同名漫画が原作。連載終了から20年近く経った現在でも国内外のファンから愛されていることで知られている。正体不明の生物「パラサイト」が人間の脳に寄生し、全身を支配してしまうという設定。主人公の新一は、右腕に宿ったミギーと共生しながら、ほかの寄生獣たちとの戦いや別れを経験し、成長していく。
ミギー役のオファーを受けた阿部は、本編クランクイン前の昨年11月に誰よりも早く撮入。劇中ではCGとして描かれるミギーの声にとどまらず、全身にモーションキャプチャースーツ、頭部にヘッドマウントカメラを装着するパフォーマンスキャプチャー撮影に挑んだ。一般にはなじみの薄い名称だが、パフォーマンスキャプチャー撮影は、表情の変化をデジタルデータとしてコンピューターに取り込む手法を指し、阿部は2日間で撮りきったという。
「前編、後編と2日間で一気に撮ったので、結構きつかったです。モーションキャプチャースーツを着て演じるのも初めてでしたし、何よりも右手に寄生している自分の目線が……。僕の目線って、新一の右手の位置から見ているわけじゃないですか。そこから新一を見たり、別の方向には敵がいることもある。その距離感がまったくつかめなくて、セリフは全部覚えていったんですが、自分の動きが整理されるまでは混乱しちゃいましたね」。
この2日間の撮影を通して、阿部は「寄生獣」という作品のテーマの根源ともいえる“人類”について思いをめぐらせる機会があったようだ。「可能性がすごくあるんだろうなあ、人間って。(深津絵里演じる)田宮良子も人間に興味があるんですよね。本当にこの作品は、哲学的なテーマが含まれていますよね。悪魔みたいになってしまうという怖さをはらんでいますけれど、突き詰めていくとすごく面白いし、改めて可能性を秘めた生物なんだと思います。野球のピッチャーだってどんどん速い球を投げるようになっているし、スマホとかにしても数年前には信じられなかった進歩を見せているじゃないですか。戦争が終わって、たった70年なんだよなあ……」
阿部の思いはミギーの血となり肉となり、パフォーマンスキャプチャーによって思慮深さすらうかがえる。孤独になるはずの撮影だけでなく、稽古にも染谷も立ち会ったといい「小道具などを置いて、染谷君と最初に芝居を合わせてやれたので、助かりましたね。稽古中もセリフを入れてくれていたんですが、彼にしてみれば撮影の全然前じゃないですか。その段階でセリフを覚えていることに感心しましたね。俳優さんとして信頼できました」と明かす。出来上がった本編を見て、「覚醒してからの新一が特にいいですよね。ミギーが寄生した当初の姿とは別人じゃないですか。芝居の仕方がとにかく素晴らしい役者だなって感じました」と年下の“座長”を称えた。
山崎監督とは、「フレンズ もののけ島のナキ」(2011)でゴーヤンの声を担当して以来のタッグ。撮影に臨む姿勢を例に挙げ、「撮りたいと願い続けてきた作品を手がけられていて、やっていてすごく楽しそうなんですよね。その気持ちが伝わってくるから、僕らだって楽しくなれますし。現場でも笑っている姿がすごく印象的なんですよ」と話す。プロモーションについても同様で、「まだ公開されていないってことは、もの作りの最中。記者さんやマスコミの人たちを巻き込んで、みんなで一緒に面白いものを作っちゃおうぜっていう感覚が格好いいですよね。インタビューにしたって、収録にしたって、率先してしゃべってくれるじゃないですか。作品に最も長く携わっているのが監督なんだから、一番わかりやすく伝えてくれると思うんですよ。やっぱり映画って、監督のものだって気がするんですよね」と最敬礼だ。
だからこそ、阿部は山崎監督に伝えたいことがある。「やっぱりね、実写でも出たいですよ。その気持ちはすごくあります。実写としては出さないっていうこだわりもあるかもしれませんが(笑)。映像を見て、『いいなあ』って役者に嫉妬しましたもん。ミギーの動きとか、山崎監督がすごくフォローしてくださっているのは強く感じましたけど、やっぱり(実写に)出たいなあって思いましたよ」。阿部の切なる思い、山崎監督にしっかりと届くはずだ。
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