ハル・ベリーが語る「フランキー&アリス」で得た演じる喜びと伝える使命感
2014年9月17日 10:25
[映画.com ニュース] オスカー女優のハル・ベリーの主演した「フランキー&アリス」は、1970年代初期の米国、解離性同一性障害がまだ広く知られていなかった時代に、本当の自分を取り戻すために戦ったある女性の物語。1人3役という難役に挑んだベリーが、10年をかけて映画化権を獲得し、自らプロデュースも務めた入魂の作品について語った。
ベリーはプロデュースを手がけた理由のひとつとして、母親が精神病院に35年以上勤務していた影響から、精神病を抱えた人々に思い入れがあったことを挙げる。そしてもうひとつの理由は、本作が実話にもとづいた“真実の物語”であること。「黒人女性の中に白人至上主義者の人格が宿っていて、しかも主人格を乗っ取ろうとしているなんて信じられないと思った」と告白するが、「だからこそ、この話は世に出すべきだと思ったのよ」と使命感をにじませる。
「チョコレート」でオスカーを獲得したベリーだが、「今までずっとモデル、美女といった仮面の役ばかりで疲れきっていたから、そのイメージを払拭することに喜びを感じるのよ」という。「もっと深くて、リアリティのある役を演じたいから、そういうチャンスをもらえることは幸せだわ」と意欲をみせ、本作では人気ストリッパーのフランキーを演じるために、特訓に打ち込み、出産直後とは思えないプロポーションで官能的なダンスを披露した。
そして、現代版「ジキルとハイド」とも称された本作では、2つどころか3つの人格を演じ分けてみせた。「それがとても楽しかったの、ちっともつらくなかったわ」。精神病の患者の様子を何度もビデオで見ていたため、「どのように演じればリアルになるかという方法は導き出せると思っていた」といい、「3つの人格を行き来するシーンは撮影まで緊張したけど、でも俳優として早く演じたくてたまらなかった」と振り返った。
演じる喜びや楽しみを語る一方で、「しっかりこのストーリーを伝えたいと思った」と女優としても使命感をもつ。フランキーのなかでは、もうひとつの人格アリスが日に日に存在感を増し、フランキーを否定し、消そうとする。「このような精神病を抱えている人々がどうやって日々戦っているか、時に何時間も戦っているかを知ってほしかった。彼らは常に自分を見失わないように必死なの」と、観客に伝えようとする姿勢はプロデューサーのそれとまったくぶれることがない。
映画では、ベリー演じるフランキーがサイコセラピストのオズのサポートのもと、本当の自分を取りもどすべく過去のトラウマと向きあおうとする姿が描き出される。「この映画を見た人々が、周りに助けを求めてもいいんだと思ったり、周りの人を助けたいと思ってくれることを願うわ」というベリーは、現実の世界に家族や周囲の人々に見放されても戦っている人たちがいるからこそ、サクセスストーリーを通してその現状を伝えたかったと語り、映画に込めた思いを観客に託す。「家族や人々が弱い立場の人たち、特に子どもや精神病を抱えている人々のために結束しようと思ってくれたらいいわね」
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