べネチア初、ドキュメンタリー映画で金獅子賞「ローマ環状線、めぐりゆく人生たち」監督に聞く
2014年8月15日 10:10

[映画.com ニュース]昨年のべネチア国際映画祭で、ドキュメンタリー映画として同映画祭史上初の金獅子賞(最高賞)に輝いた「ローマ環状線、めぐりゆく人生たち」。公開を前にジャンフランコ・ロージ監督が来日し、その撮影の過程と本作に込めた深い愛を語った。
永遠の都・ローマを囲む全長約70キロ、1日の交通量16万台を誇る環状高速道路“GRA(グラ)”。その周辺に暮らす人々――お城に暮らしブルジョアを装う没落貴族、明るくたくましく生きる車上生活の両性具有者、日々、救急車でGRAを巡回し、仕事の合間に母親の面倒を見る救急隊員など、都市の中心から「こぼれ落ちた」者の日常を映す。
ロージ監督自身、北アフリカ出身で海外での時間が長く、ローマにとって“よそ者”。イタリアの国民的作家カルビーノの「見えない都市」(マルコポーロが語り手として架空の都市について語る小説)を片手にGRA周辺を巡る中で「ローマっ子が見ても、ここがどこなのか分からなくなるような街の姿――想像上の地図とも言うべき構図が頭の中に浮かび上がってきた」という。
「GRA建設当初はこの辺に住む人も少なかったけど、この半世紀で人が増え、逆説的に、いまやGRAこそが“NEW ローマ”であり、この大都市の中心と言えるようになった。そして、その構図はイタリアのメタファーでもある。祖国イタリアはいま、アイデンティティを失いかけている。でもここに登場する人たちは強いアイデンティティや自分の過去との結びつきを持って生きているんだ」
(C)DocLab映画で驚くのは、被写体との距離の近さだ。例えば先に挙げたブルジョアのフリをして生きる没落貴族は、カメラが回っていることを承知した上で、あけっぴろげに全てをさらけ出す。「距離を縮めることこそ最も重要なこと」とロージ監督。時に一つの被写体に数カ月もの時間を掛けて接して信頼関係を築いていった。
「僕の仕事は、どんな人物からも真実を見つけること。些細で小さな瞬間、そこに真実と現実が潜んでおり、その小さなかけらを捉えないといけないんだ。貴族のフィリッポに関しては、僕もずっとあのお城の一室を間借りしてたんだ。ある朝、彼に会いに行ったら葉巻をくわえながらエクササイズしてたんだ。『面白いね。カメラを回していいかい?』と尋ねたところから撮影が始まった。偶然の積み重ねがドラマになるんだ」
長い撮影で最も印象深かったことは、まさに偶然のローマ27年ぶりとなる大雪。「あのフェリーニでさえ、ローマに雪が登場させることはできなかったんだからね(笑)。街に降り積もる雪を見た瞬間、GRA自体が登場人物であることを理解したんだ」
「ローマ環状線、めぐりゆく人生たち」は8月16日より公開。
(C)DocLab
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