「ぼくを探しに」シルバン・ショメ監督初の実写映画を語る
2014年8月2日 16:00
[映画.com ニュース]「ベルヴィル・ランデブー」「イリュージョニスト」で知られるフランスのアニメーション作家シルバン・ショメが、初めて手がけた実写長編作「ぼくを探しに」が公開した。孤独な主人公が不思議な女性との出会いから失われた過去の記憶が呼び覚まされ、少しずつ人生が変化していく様を幻想的な世界観と美しい映像で描いたショメ監督に話を聞いた。
初の実写に取り組んだ感想は、「アニメーションの製作は、膨大なお金と時間がかかるので、作っている途中で誰かが病気にかかったりあるいは亡くなってしまったりと大変な面が多いけど、この作品の撮影で経験したのは、誰も病気にならずに撮り終えたことです」と振り返り、「アニメを撮っていてもやり残してしまったことは残るし、実写を撮っても語りきれない部分はあるから、相互補完的にこれからも両方やっていくつもりです」と今後への意欲を見せる。そして、「ただひとつだけ、編集中にベルナデットが亡くなってしまったので、完成した作品を見せられなかったのがとても残念です」と大女優ベルナデット・ラフォンの死を偲んだ。
今作で主人公ポールと友情を育んでいくマダム・プルーストの存在をはじめ、監督の過去作でも女性が常に重要な役割を果たしている。「女性が子どもを育てるし、出産も女性しかできない、教育も母親が行う部分が多いので、女性が世界をつくっていくものであると思っています。女性が世界に置いて重要な地位を占めていけば、世の中もよくなるのではと思っているし、女性を痛めつける人もいなくなると、世の中ずっとよくなるのではないかと思います。僕が思うに、女性と男性というのは、愛情も持ち合うが、友情も持てる存在であると思っています」と持論を語る。
仏文豪マルセル・プルーストの小説「失われた時を求めて」という象徴的な題材を用いたことについては「プルーストはどちらかというと嫌いなんです。すごくブルジョア的で学校で読まされたりしていました。僕はどちらかというと庶民タイプなので、ブルジョア的な世界は好きではないのですが、プルースト自身に興味がありました。彼はぜんそく持ちで、引きこもりながら部屋で小説を書いていた方。最初は出版社からも相手にされず、自費出版して成功をおさめた人。人物として興味があり、それが、本作の主人公のポールに反映されています」と明かす。
日本は大好きな国のひとつだというショメ監督。10年ほど前に来日した際に、テーブルを囲んで食事を共にする精神を大事にする文化が、日仏の共通点だと感じたそうで「新しいものと伝統的なものの融合が上手くいっている国でもあります。世界のあらゆる国のなかでも最も将来性がある国」と絶賛。日本がアニメ大国という一面を持っていることに触れ、「日本では宮崎駿監督や高畑勲監督がとても尊敬される存在ですが、残念ながらフランスではまだそれほどアニメ作家の地位が認められていないのが現状です。僕に対してだけでなく、フランスでも日本のようにアニメ−ション監督に敬意をもってくれるようになったら良いのだけど……。この作品が日本でヒットして少し状況が変わったらいいな(笑)」と願望を語った。