E・イオネスコ、A・バルトロメイを迎えた「ヴィオレッタ」でアートの限界を問う
2014年5月9日 16:10

[映画.com ニュース]アートを追い求めた女流写真家と、母の愛を欲し被写体となった娘。カメラを通して結ばれた母娘関係は、いびつに歪んでいく――1977年、母親が娘のヌードを撮影し物議をかもした写真集「エヴァ」で、フレンチロリータの星となったエバ・イオネスコが、写真家の母イリナ・イオネスコとの実話をベースに、少女アナマリア・バルトロメイとともに撮りあげた初長編作「ヴィオレッタ」で、アートの限界を投げかける。
イオネスコ監督は、なぜ本作の映画化に踏み切ったのか。「これは私が生きた人生の一部分です。ですが、私の人生を話すというよりも、この作品の主題や写真に興味がありました。昔の経験をただ話すのではなく、母と子どもの葛藤(かっとう)というテーマを語りたかったのです」。フランスの名女優イザベル・ユペールを主演に迎え、実体験にシド・ヴィシャスとのエピソードなどを織り交ぜ、物語として構築した。
ヴィオレッタ役はオーディションで選ばれたが、イオネスコ監督はバルトロメイと出会うまで5カ月もの歳月を要し、約600人の少女たちと対面した。「私の幼いころに似ているかではなく、この役を演じられる子、私の話や意見を聞き、話し合える人を探しました」と10歳(撮影当時)のバルトロメイに白羽の矢が立った。
女優を目指していたとはいえ、オーディション時は演技未経験だったバルトロメイ。これまで生きてきた世界とは異なる生活に身を置き、リハーサルを重ねながら、イオネスコ監督とヴィオレッタをつくりあげていった。「役者としての経験がなかったのでそのときはわかりませんでしたが、今になって思うとすごく難しい役をもらったんだなと感じます。当時は一生懸命やっているだけで、そんなに難しいとは思わなかったのです」

本作をきっかけに女優として踏み出し、今後の女優業について「この作品はデビュー作だったので、影から光の当たるところにきたような感じでいます。もともと女優になりたいと思っていましたが、ヴィオレッタを演じたことで、より女優業を続けたいと思うようになりました。このあと、いろいろな作品に出演しましたが、この分野、こういった作品に出たいとか限定せずに、オープンに考えています」と目を輝かせた。
イオネスコ監督は、「完成まではどのような映画になるのかわからないため、心配している方もいました。私としては、のぞき見するように興味から見られるのは嫌だったので、そういった人にも納得をしてもらえるような映画をつくろうと苦心しました。私の半生をただ映画にするのではなく、テーマをみなさんに伝えたかったのです」と明かす。
母娘の葛藤(かっとう)という大きな軸を中心に、芸術家としての思いも込められている。「1番大きなテーマは、やはり母と娘の関係です。そのなかに、ロリータ的でいてアーティスティックな画や、歪んだおとぎ話などの要素も盛り込みました。もうひとつの軸として、アートにも限界があるのではないか、どこまで突き進んでいいのかといった問題も掲げているのです。母親は自分の芸術を求めていたのでしょうけれど。ヴィオレッタがだんだんと、ヘビがニョロニョロするような魅力的な大人の女性になっていくところはもちろんですが、『最終的にどこまでアートとしていいのか』という倫理的なことを考えてもらいたかったのです」
「ヴィオレッタ」は、5月10日から全国で公開。
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