M・ゼーゲブレヒト「この時を待っていた」 「バグダッド・カフェ」成功の裏の苦難を明かす
2014年4月25日 15:10

[映画.com ニュース] 日本でもミニシアターブームの火付け役となった「バグダッド・カフェ」(89)で世界中の映画ファンを魅了したドイツ人女優マリアンネ・ゼーゲブレヒトが、最新作「バチカンで逢いましょう」のプロモーションのため初来日を果たした。長らく国際的な作品への出演を控えていたというゼーゲブレヒトは、その知られざる真意を包み隠さず語ってくれた。
ゼーゲブレヒトは開口一番、「『バグダッド・カフェ』のパーシー・アドロン監督と初めて組んだ『シュガーベイビー』(86)は、2人でアイデアを出しあって作った映画なの。そんな思いの込もった作品を、ベルリン映画祭ではじめて買い付けてくれたのが日本の配給会社だった。作品にはそれぞれ運命があって、今回の映画で日本に行けると聞いた時は、とても神秘的な気持ちになったのよ」と深い思い入れを明かした。
夫に先立たれた敬虔なカトリック教徒マルガレーテ(ゼーゲブレヒト)は、心に秘めたある出来事を懺悔(ざんげ)するため、ローマ法王に面会しようと単身バチカンへと向かう。初めて訪れたローマで、マルガレーテは自分と同じように秘密を抱えて生きる老詐欺師ロレンツォと出会い、ひょんなことからロレンツォの甥が営む廃業寸前のレストランを手伝うことになる。
「ローマの休日」(53)をはじめ、ローマを舞台とした名作は数知れず。本作で注目したいのは、イタリアの名優ジャンカルロ・ジャンニーニとゼーゲブレヒトの豪華共演だ。「実はジャンニーニに話を持って行こうと提案したのは私なの。彼はその時ボンド映画を撮影していたので無理かもしれないと思ったけれど、彼は『マリアンネが出るの? 僕は彼女の大ファンなんだ。もちろんやるよ!』と快諾してくれた。私も昔からジャンニーニを尊敬していたし、今回の共演ではとても素晴らしい時間を過ごせたわ」と充実した面持ち。また、言語の問題も「彼は英語が上手なのでコミュニケーションも全く問題なかったし、言葉のもつ色やリズムがお互いにすっと入ってきた。ドイツでは外国語は吹き替えになるのが一般的だけど、今回のジャンニーニのイタリア語は字幕。それは少しリスキーなことだったけど、観客も受け入れてくれたわ」と国境や言語を越えてキャストの魅力が発揮された。

しかしゼーゲブレヒトにとって、本作出演に至るまでの道のりは意外なまでに険しいものだった。そこには、ゼーゲブレヒトの名を世に知らしめた「バグダッド・カフェ」の大成功が一因する。「『バグダッド・カフェ』の後も『ロザリー・ゴーズ・ショッピング』『ローズ家の戦争』と成功が続き、私は国際的に大注目された。ハリウッドから度々オファーもあったの。例えばクライブ・オーエン主演の『トゥモロー・ワールド』。ナチスのように女性が子どもを産まないよう厳しく監視する役で、私には到底できないと思った。『ハリー・ポッター』もオファーがあったけれど、事前に自分が何を演じるのか分からないまま『とにかくロンドンに来てくれ!』と言われ、それも私にはできなかった。アーノルド・シュワルツェネッガー主演の『エンド・オブ・デイズ』もオファーがあったけれど、赤ちゃんを悪魔に差し出す反キリスト教的な物語で、そんなものはできないと断ったわ」と知られざる裏話を明かした。
さらに、「ドイツの俳優はハリウッドに行ってもナチス役をやらされることが多く、がっかりして帰ってくる人も多い。私にとってセリフは全て本当のことで、映画だからと割り切れないの。『いったい何様だ!』と非難もされたけれど、『ローズ家の戦争』で共演したマイケル・ダグラスたちは私の気持ちを理解してくれた。私は自分のやることには責任を持っていたいし、常に自由でありたいの」と愚直なまでにストイック。それでも、「今回もカナダ製作の映画なので国際的なプロジェクトになることは分かっていた。だけど原案者が『私のおばあさんを演じられるのはマリアンネしかいない!』と言ってくれ、私もこの作品で国際的なキャリアを再スタートしたいと思ったの。私はずっと我慢をしていた。本当は映画で世界を駆け巡りたいと思っていた。この時を待っていたの」と清々しく語った。
「バチカンで逢いましょう」は4月26日より公開。
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