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長谷川和彦監督、衝撃のデビュー作「青春の殺人者」に秘められた複雑な胸中を告白

2014年3月22日 10:05

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デビュー作「青春の殺人者」を語った長谷川和彦監督(中央)
デビュー作「青春の殺人者」を語った長谷川和彦監督(中央)

[映画.com ニュース] 長谷川和彦監督が3月21日、デビュー作「青春の殺人者」HDニューマスター版のブルーレイ&DVD発売記念特別上映に参加し、小説家の樋口毅宏氏、映画評論家の樋口尚文氏とともにトークイベントを行った。

作家・中上健次氏が、千葉で起きた実在の親殺し事件を取材し執筆した短編小説「蛇淫」を映画化。主演に当時24歳だった水谷豊、ヒロインに当時17歳だった原田美枝子がキャスティングされ、1976年度キネマ旬報ベスト・テン第1位を獲得した。

長谷川監督は、実在の事件を映画化する重みについて「彼(主人公)のえん罪を晴らそうと思って作っているわけじゃないし、真相を問いたいわけじゃなかった。実在の犯罪とは別にフィクションを作ったつもりだけど、モデルにしてるのは確かだから、死刑が確定した時はつらかった。今も獄中にいる被告に悪い気がしている」と複雑な胸中を明かした。

また、脚本と完成した映画が大きく異なることについて、脚本家の故・田村孟氏から再三抗議を受けていたことは有名な話だが、「猛さんの息子さんから『親父は褒めてたんですよ』と言われ、怒ったままあの世に行ってしまったと思ってたからちょっとうれしかった。いつも『豪傑ぶってるだけのただのバカだ』と言われていたから」と安堵の表情を垣間見せた。

特典映像の総合監督を務めた樋口尚文氏は、「初めて見たのは、1976年10月23日の初日だったと思う。『犬神家の一族』『愛のコリーダ』、その翌週に上映されたのが『青春の殺人者』。日本映画はどん底の時期だったけれど、新しい娯楽のあり方を模索する活力もあった時期」と当時を振り返った。

樋口毅宏氏は、自著「テロルのすべて」を捧ぐというほど長谷川監督を敬愛しており、初めて本作を鑑賞した時は「ただただ衝撃。茫然自失。とんでもないものを見てしまった」と衝撃を明かし、「水谷豊さんはドラマ『熱中時代』の先生役のイメージがあったので、こんな役をやっているんだという驚きもあった」と述懐。そして、「ゴジさん(長谷川監督)は昔、“毒をベースに痛快で途中1回だけ涙できる”原作を探していると言っていた。その時僕は『さらば雑司ヶ谷』という小説を出したばかりで、『原作料1円も要りませんのでどうですか』と公式サイトの掲示板に書き込んだ。すると本当に読んでくれ、丁寧な感想までもらい、結果『俺が撮るには軟弱すぎる』と言われた。お会いしてしゃべるのは今日が初めて」と馴れ初めを明かした。

樋口尚文氏も、「ゴジさんは本当に“欲張りん坊”。それは映画監督に最も必要な才能だけど、全部が成功作では身がもたない。がっかりする人もいるかもしれないけど、積極的な“失敗作”を撮ってほしい」と期待を寄せた。すると長谷川監督は、第3作目について「『やーめた』と思ってるわけじゃない。半年後にはクランクインだという気持ちは変わらない」と秘めた決意を明かしながら、「近しいダチまで映画をやめちゃうくらい、俺の現場は負担をかけてしまう。どうせ人に迷惑かけるんだから、迷惑をかけるだけ価値のある企画をやらないといけない。だから本当に撮りたい映画以外、撮っちゃいけないような気がしてる」と心の内を吐露。そして、「次回作の試写で会いましょう」と締めると、会場からは大きな拍手が送られた。

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