韓国の人気監督、“検閲”との駆け引き明かす 中国で「危険な関係」映画化
2014年1月10日 09:20
[映画.com ニュース] チャン・ドンゴン、チャン・ツィイー、セシリア・チャンら、アジアを代表するスターが豪華共演を果たした「危険な関係」が1月10日に封切られる。メガホンをとるホ・ジノ監督は、「八月のクリスマス」「四月の雪」といったラブストーリーを手がけ、韓国映画界のヒットメーカーとして知られる存在だ。公開を前に来日を果たし、初めて挑んだ中国での映画製作や“検閲”との駆け引き、演出へのこだわりを明かした。
原作は仏作家コデルロス・ド・ラクロの同名小説。華麗な男女の恋愛ゲームという筋立ては、アカデミー賞3冠を達成した「危険な関係(1988)」をはじめ、過去に何度となく映画化されており、映画ファンにとっては、おなじみのはず。ジノ監督も「最初はゲーム感覚でも、最終的には本当の愛に目覚めてしまう。そんな普遍性に、私も含めて多くの監督がひかれるのだと思います。読み始めたら、止まらない面白さや共感がある」と200年以上前に書かれた原作に心奪われていった。
本作では、東洋と西洋の文化が混ざり合う1931年の上海を舞台に、裕福なプレイボーイのイーファン(ドンゴン)と貞淑な未亡人フェンユー(ツィイー)が、ある“賭け”を仕かけた女性実業家ジユ(セシリア)との文字通り危険な三角関係に身を投じる。「大切なのはキャラクターが果たす役割を、バランスよく配分すること。大スターが一堂に会す雰囲気ですか? もちろん緊張感に包まれましたが、あくまでいい緊張感でしたよ」。
これまで男女の純愛を描き続けてきたジノ監督にとっては、新境地といえる題材。それだけに、演出面にも大きなチャレンジがあったといい、「今回、自分のなかでほぼ禁じ手だったクローズアップを多用しています。特に登場人物たちの目ですね。危険な駆け引きに巻き込まれる彼らは、本心とは裏腹の表情を見せていますが、やはり目だけはウソをつけない。ぜひ、彼らの目を通して、本当の感情を読み取ってほしいです」とアピールした。
韓国・中国合作だった前作「きみに微笑む雨」(2009)を経て、本作ではキャリア初となる中国単独資本による映画製作で「当局の検閲が大きな壁になることは、最初からわかっていました」。撮影中のジノ監督は、現場で脚本の手直しを重ねるタイプだといい「そのたび、検閲で撮影をストップさせるわけにはいきませんから、気を使いました。当初はフェンユーには、夫がいるという設定でした。ただ、中国で妻の不倫を描くのは不可能に近い。そこで(検閲を)先回りして、未亡人という設定に書き直しました」と明かした。
撮影そのものは順調だったといい「言葉の問題も、すぐにクリアになりました。やはり、現場が映画を完成させるんだと一丸になれば、どんな問題や困難も乗り越えられる。映画づくりに国境はないと改めて実感しましたね」と振り返る。映画は一昨年9月に中国で公開され、大ヒットを記録。ジノ監督は「舞台となった30年代の上海は、物質的な価値を重んじる傾向にありました。当時、金持ちには天国、貧しい者には地獄という世情を皮肉った『天国と地獄』という漫画が大人気だったと聞いています。実は現代の中国も、まったく同じ状況なのです。この作品がヒットした理由は、本当に大切なものを考え直すきっかけを与えたからでしょう」と分析していた。
「危険な関係」は、1月10日からTOHOシネマズシャンテ、新宿武蔵野館ほか全国で公開。
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