キム・ギドク&新鋭イ・ジュヒョン監督、家族ドラマの普遍性で朝鮮半島の南北問題に切り込む
2013年10月26日 07:00
[映画.com ニュース] 韓国の鬼才キム・ギドクが脚本と製作を手がけ、新鋭イ・ジュヒョン監督にメガホンを託した「レッド・ファミリー」が第26回東京国際映画祭コンペティション部門で正式上映され、観客賞を受賞した。映画祭にあわせ来日したキム・ギドクとイ監督が、本作への思い入れやこだわりを語ってくれた。
隣同士に暮らす北朝鮮スパイの疑似家族と韓国の一般家族の交流をユーモラスに描き、朝鮮半島の現況を新しい形で提示した家族のドラマ。25日の映画祭最終日には、一般客からの投票による「観客賞」を戴冠し、イ・ジュヒョン監督が歓喜の舞台挨拶を行った。
これまでも、朝鮮半島の南北問題に独自の視点で切り込んできたキム・ギドクは、「やはり南北分断の現実に対する残念な気持ちが根底にあり、漢民族と“恨”(韓国語で恨みや悲しみの意)民族という2つの言葉をかけた同じテーマを題材にしている。ただし今回は、それをイデオロギーではなく家族を据えて表現しようと思った。イデオロギーを前に押し出してしまうと、自分たちの主張になってしまう。誰もがもっている家族というものであれば、観客は題材に接しやすいし理解もしやすい。韓国の大統領であれ、北朝鮮のキム・ジョンナムであれ、家族がいるわけだから」と狙いを語った。
そんな思い入れの深い本作に新人のイ・ジュヒョン監督を抜てきした理由は、「以前、私が製作した映画でスタッフとして働いてくれた経験もあり、私が脚本と製作総指揮を務めた『プンサンケ』で監督を務めたチョン・ジェホンが彼を推薦してくれた。現場での経験はさほど多くなかったけれど、彼が作ったドキュメンタリーとアニメーションを見て、人間の喜怒哀楽といった情緒をきちんと感じ取れる人だなという印象を受けた。今回の胸の痛くなるようなストーリーも温かい視線でうまく描いてくれるのではと思い、シナリオを託した」と経緯を説明。そして、「ひとたびシナリオを渡したら、その後のことはすべて監督にまかせる。現場に行くなどあれこれ干渉はしない。完成した映画を見てみると、私がシナリオに書いた意図や感情をうまく表現してくれていた。私はアイレベルのカメラワークを多用するけれど、イ監督は色々なショットを使って画面に広い幅を与えていた。新人監督としての自信を感じたし、とても肯定的に受け取っている」と納得の様子だった。
これにはイ監督も安堵の表情を浮かべ、「自分はまだまだ未熟者なので、撮影中もあれこれ考えるがゆえに、本質を見失いそうになった時もあった。そんな時、ギドク監督から映画を作る上で大切なのは幹から派生している枝ではなく、木の根幹が重要なんだと教わった」と最敬礼。庭の柵ひとつで隔たれた北朝鮮スパイ家族と韓国のごく平凡な家族の関係性を巧みに表現し、「最も重要視したのはメッセージ性。北と南の2つの家族が、北朝鮮と韓国のように目に見えない線で分かれて見えるよう表現したかった。北と南の家族への照明の当て方も変え、南はケンカしてもいつも家族が一緒にいて、北は家族が一緒にいてもひとりひとりがバラバラな感じを演出した」とこだわりを明かした。
フォトギャラリー
Amazonで関連商品を見る
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
時代は変わった。映画は“タテ”で観る時代。 NEW
年に数100本映画を鑑賞する人が、半信半疑で“タテ”で映画を観てみた結果…【意外な傑作、続々】
提供:TikTok Japan
年末年始は“地球滅亡” NEW
【完全無料で大満足の映画体験】ここは、映画を愛する者たちの“安住の地”――
提供:BS12
【推しの子】 The Final Act NEW
【忖度なし本音レビュー】原作ガチファン&原作未見が観たら…想像以上の“観るべき良作”だった――!
提供:東映
オススメ“新傑作”
【物語が超・面白い】大犯罪者が田舎へ左遷→一般人と犯罪、暴力、やりたい放題…ヤバい爽快!!
提供:Paramount+
外道の歌
強姦、児童虐待殺人、一家洗脳殺人…犯人への壮絶な復しゅう【安心・安全に飽きたらここに来い】
提供:DMM TV
全「ロード・オブ・ザ・リング」ファン必見の伝説的一作
【超重要作】あれもこれも出てくる! 大歓喜、大興奮、大満足、感動すら覚える極上体験!
提供:ワーナー・ブラザース映画
ライオン・キング ムファサ
【全世界史上最高ヒット“エンタメの王”】この“超実写”は何がすごい? 魂揺さぶる究極映画体験!
提供:ディズニー
映画を500円で観る“裏ワザ”
【知らないと損】「2000円は高い」というあなたに…“エグい安くなる神割り引き”、教えます
提供:KDDI
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。