「レッド・ファミリー」脚本のキム・ギドク「心から南北統一を願って書いた」
2013年10月24日 15:30
[映画.com ニュース] 東京・六本木ヒルズで開催中の第26回東京国際映画祭コンペティション部門出品作「レッド・ファミリー」の記者会見が10月24日開催され、脚本と製作を手掛けたキム・ギドクとイ・ジュヒョン監督、女優のキム・ユミとパク・ソヨン、俳優のチョン・ウが出席した。
北朝鮮のスパイによる疑似家族と些細なことでケンカの絶えない韓国の一般家庭が、隣同士に住み、次第に交流するようになる。ふたつの家庭のありかたから朝鮮半島の南北問題を、ユーモアを交えながらもドラマティックに描く。
キム・ギドクは冒頭の挨拶で「心から南北統一を願って書いたシナリオです」と主題を紹介し、「このような映画がつくられるたびに世の中が変わっていくと思います。現実問題を考えるきっかけになればよいと思います」と願いを込める。「プンサンケ」に続き、南北問題を扱った2作目の作品となり「韓国には南北問題を扱った映画がたくさんありますが、多くはコメディ、アクション、アイドルスターを使って作られています。私は違った形でアプローチをし、真剣に気持ちを伝えたく、この作品をつくりました」と作品に込めた思いを語った。
イ監督にとって本作が長編デビュー作となる。キム・ギドクはイ監督の短編アニメを見たことがメガホンを託したきっかけだそうで「人間の苦痛を理解し、人間が生きることに温かい視線をもっていると感じ、この作品を監督する能力があると思ったのです。私が予想した以上に立派な作品になっています」と起用の理由を明かし、イ監督の手腕をほめたたえた。
プレッシャーを感じていたと明かしながらも、人々が家族を思う気持ちを鮮やかなドラマに仕上げたイ監督は、「ひとりの韓国人として、このテーマが自分に迫ってきています」といい「作品のテーマはジレンマだと思います。家族愛が生じ、イデオロギーが揺らいでいく。その時どう行動するかが解きたかった問題で、そこに集中しました」と説明した。
表の顔は良妻賢母、裏では非道な命令を下す班長を演じたキム・ユミは「あまりにも大変な撮影だったので限界を感じて投げだしたい時もありましたが、その気持ちに打ち勝って良かったです。この映画はずっと私たちが論じて行くべき話だと思います。日本の方々も共感して下さっているようなのでうれしく思いました」と述懐した。
東京国際映画祭は10月25日まで開催。