小泉堯史監督&黒澤和子、若年層の時代劇離れの声を一蹴
2013年10月22日 18:00

[映画.com ニュース] 黒澤明監督の長女で衣装デザイナーの黒澤和子氏、黒澤監督に長年師事した小泉堯史監督らが10月22日、開催中の第26回東京国際映画祭で開催されたシンポジウム「時代劇へようこそ~先ず粋にいきましょう~」に出席し、時代劇の魅力について語り合った。
小泉監督は、演出面における時代劇製作の難しさについて語る。「時代劇における所作というのが、ふだんの生活とかけ離れ過ぎている。座ったり立ったりだけでも難しいし、馬に乗れる人もいないし、ロケセットだって昔のようにはない。黒澤監督の頃と比べると美術も少ないし、セットを作るのも簡単ではない」と明かす。一方で、昔はなかった最新の映像技術への期待も。「僕自身は使ったことはないけれど」と前置きした上で、「CGなどにより新しいものはこれから出てくると思うし、そうした新しい可能性を探る必要は今後、あるのではないか?」と提起する。
黒澤氏は、「私にとって今年以外はみんな時代劇。現代劇と時代劇を分けて考えていない」と語る。「2~3年で髪もメイクも全然違うものに変わっていく。映画は監督のイメージが最優先でそれをひとつひとつ細かく作るなら、そう考えなくてはやっていけない」と自らのスタイルを明かす。
予算面での製作の難しさ、若い層の時代劇離れを指摘する声もあるが、小泉監督と黒澤氏は一蹴。小泉監督は、「本当に作りたければ工夫の仕方はいくらでもある。黒澤監督の『どん底』だってワンカットを長くして撮ったりしている」と話した。黒澤氏も「いまでも若い人で“歴女”と呼ばれる人もいるし、日本人よりも戦国時代について詳しい外国人もいる。いまの人が決して歴史を嫌いなわけではないし、大人がそう思い込んでいる部分ある」と指摘した。
さらに衣裳の視点から、「実は昔の時代劇を見ると意外と衣裳に決まりがないんです。それがテレビなどで次々と作られる中で様式美も生まれたし、労力の問題で『こういう役にはこういう服』と決まってきたところがある。そこで育ったスタッフにとっては、それが思い込みになってしまうところもある」と語り、自由な発想を取り入れていくべきと語る。小泉監督自身、決して時代劇の今後を悲観はしていないようで「若い人に期待したいし、時代劇は決してなくならない。むしろ、斬新なものが出てくるだろうと思っています」と言葉に力を込めた。
小泉監督の最新時代劇「蜩ノ記」は、2014年公開。
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