新鋭ジョシュ・トランクが語るデビュー作「クロニクル」までの道のり
2013年9月27日 16:45
[映画.com ニュース] 長編監督デビュー作「クロニクル」が全米ランキング4週連続1位の大ヒットを記録し、一躍ハリウッド期待の新人となったジョシュ・トランク監督。早くも大作のオファーが舞い込み、リブート版「ファンタスティック・フォー」のメガホンを託されたYouTube世代の新星が、デビューまでの道のりを語った。
ある日突然、超能力を手に入れた高校生のアンドリューとマット、スティーヴは、刺激的な毎日をビデオに録画する。最初はちょっとしたいたずら程度だったが、使うごとに能力は増幅していき、やがてアンドリューは自らの力に翻ろうされてしまう――。同作では、登場人物が記録したという設定の「ファウンド・フッテージ」スタイルを用い、超能力というファンタジー要素が溶け込んだ高校生の日常をスクリーンに展開する。
米ロサンゼルスの典型的な中流家庭に生まれ育ったという、現在28歳のトランク監督。父親がドキュメンタリーのフィルムメーカーであるため、「編集室の中で過ごすことが多かったせいで、コンテクストから切り離されたフッテージを使って、別の内容のストーリーを作れることを学んだ気がする」と話す。一方、母親は幼稚園の教員で、「幼児の世話をしていて、お昼寝の時にお話を聞かせていることから受けた影響が大きいと思う」とも明かす。ドキュメンタリー調とファンタジーのバランス感覚は子どもの頃に養われたようだ。
注目を浴びるきっかけとなったのは、2007年に動画サイトYouTubeに投稿した「Stabbing At Leila’s 22nd Birthday」という1分半ほどの作品。パーティーで酔っ払った学生がライトセーバーを使ってケンカを始め、駆けつけたストーム・トルーパーに鎮圧されるというホームビデオ風の映像は、ありふれた日常の光景に「スター・ウォーズ」のアイテムが違和感なく溶け込んでおり、「クロニクル」につながるスタイルがうかがえる。すぐさま反響が寄せられたが、トランク監督は「『ワーッ、そうだよ。きっとこんなふうに見えるよ』って反応したんじゃないかな」と、視聴者の感想を代弁してみせた。
その後、テレビやインディペンデント映画の仕事を経て、監督デビュー作として「クロニクル」の構想を練っている時に、高校時代の知人マックス・ランディスとの偶然の再会したことが、大きな転機となった。すでに脚本家としてデビューしていたランディスにこのアイデアを話したところ、ランディスが脚本を担当すると名乗りを上げた。トランク監督は、「理にかなっていると思ったよ。彼なら余計な注釈は入れずに、ティーンエージャーの言葉に近いせりふを書けるからだ」と述懐する。完成した脚本を「トランクが監督する」という条件つきで売り込んだところ、20世紀フォックスによって製作されることが決定した。撮影前には技術面の徹底的な分析など細部まで入念な準備をしたと言い、「とてもよく出来た台本にふさわしいものにしなければならないと責任を感じていたからだ。マックスはすばらしい台本を書いてくれたおかげで、ハードルがとても高くなってしまった」と振り返った。
同作は、12年2月に全米公開されると若い世代を中心に人気を集め、大友克洋氏の漫画「AKIRA」をほうふつとさせるシーンも話題になった。「賛否両論を招くとか、皮肉や風刺を感じさせるような映画にはしたくなかった。でも、この映画は現代の社会を反映していると思う」とトランク監督は語る。「今の社会ではインターネット上で、まるで生きているビデオ・コラージュのような映像美学が見られる」といい、「ストーリーを伝える上で肝心なのはクリエイティブなやり方、誰でも理解できる言葉を使い、同時に、新しいことをやるクリエイティブな自由をたくさん与えてくれる方法なんだ」と、持論を展開した。
「クロニクル」は、9月27日から2週間、首都圏限定で公開。
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