SABU監督が異色ゾンビ映画で見せる家族愛と小松彩夏の新境地
2013年9月13日 20:00
[映画.com ニュース] 「蟹工船(2009)」「うさぎドロップ」といった原作ものから、デビュー作「弾丸ランナー」に代表される独特のオリジナル作品までを生みだしてきたSABU監督が、「幸福の鐘」以来約10年ぶりにオリジナルストーリーで挑んだ「Miss ZOMBIE」。異色のゾンビ映画ながら、SABU監督は「みんなが泣けたと言ってくれたのがうれしい」と顔をほころばせ、映画初主演を果たした小松彩夏は「今まで見たことがない、新しい自分を発見できた」と満足げにほほ笑む。ふたりは、ゾンビという存在にどのような思いを託したのだろうか。
「自分の作品は基本的に人間を描いていて、壊すところから始まる」というように、SABU監督は人間ドラマを描き続けてきた。今回、限りなく人間に近いゾンビを登場させることで、ある一家の幸せがほころんでいく様子に繊細かつ大胆に迫る。ゾンビの沙羅(小松)は、寺本家で異質な存在としてさげすまれていたが、一人息子の健一を救ったことをきっかけに人間らしさを取り戻す。一方、母・志津子(冨樫真)は沙羅の存在により家族が離散する恐怖に心を病んでしまう。SABU監督は「ゾンビが人間っぽくなり、人間がゾンビっぽくなっていく対比」を軸に、人間とゾンビの関係の滑稽さをシリアスに見せている。
SABU作品は、これまで銀行強盗に奔走する男(「弾丸ランナー」)、男性営業マン(「DRIVE」)など、男性を主人公に据えてきた。本作では、沙羅と志津子というふたりの女性を核にすることで、母性愛というテーマに挑戦している。「家族というものは、我慢や犠牲のうえに成り立っている幸福感のなかにある。異質なものが入ってくることによって、いろいろなものが崩壊していくということを描きたかった。また、ゾンビが完全にゾンビ化せずに踏みとどまっていることができるのは、唯一しがみついている小さな記憶や母性のためだと思う。そういう愛がテーマで、自分たちの行動のなかに愛がちゃんとあるかということがメッセージなんです」
それゆえ、SABU監督が描くゾンビは、映画をはじめ海外ドラマ、アニメなどに見るゾンビブームとは一線を画し、ゾンビに襲われた人々が逃げ惑うサバイバル映画ではない。完全にゾンビ化できずにいる沙羅が、人間の好奇、嫉妬の火種となって愛憎渦巻くドラマとなっている。難しい主題にもかかわらず、小松が演じた沙羅は、セリフも感情の起伏もほとんどない。おまけに初主演という大役を担い、「初主演の作品が決まったと聞いてすごくうれしくて。でも、タイトルが『Miss ZOMBIE』で、脚本を読んでみたら私がゾンビ役で衝撃でした。さらに、モノクロの作品になるという聞き、すべてが衝撃的で驚きの連続(笑)」と戸惑いもあったようだが、繊細な演技でこれまでのイメージを一新している。
「Miss ZOMBIE」は、9月14日から全国で公開。
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