ベネチア映画祭、G・クルーニー主演作に高評価 園監督最新作にも喝さい
2013年9月2日 12:14
[映画.com ニュース] 第70回ベネチア国際映画祭のオープニングを飾ったアルフォンソ・キュアロンのSF映画「ゼロ・グラヴィティ」が、現地で大きな評価を受けた。スペースシャトルの突発的事故により、宇宙空間に放り出された船乗員ふたり(ジョージ・クルーニー、サンドラ・ブロック)のサバイバルバトルを描いた本作は、その緩急織り交ぜたリズムと無音状態を効果的に用いた演出により隠喩的なストーリーが語られ、体感型3D映画の醍醐味に輪を掛けた感動作に仕上がっている。
立ち見も出た会見では、キュアロン監督が主演のふたりを絶賛するとともに「たとえ宇宙空間の話でも、観客とエモーショナルなつながりを持てる人間ドラマにしたかった」と語った。相変わらずジョークが好きなクルーニーは、ブロックとの息のあった共演ぶりについて「ふたりでヨガをやって準備をしたんだ」と会場をなごませた。ベネチアで圧倒的な人気を誇るクルーニーは、公式上映のレッドカーペットでも、イタリアのパワフルなアラサー、アラフォーマダムたちの歓声を浴びていた。
スティーブン・フリアーズのコンペティション参加作品「あなたを抱きしめる日まで(原題Philomena)」も高い評価を得た。1950年代のアイルランドで、10代で妊娠した未婚の女性が修道院に送られ、出産後むりやり子供を里子に出されて生き別れになった実話を映画化した作品。カトリックへの批判的な視点をときにユーモアあふれるセリフで包み、シンプルなストーリーテリングながら円熟の味わいを見せる。
一方、オリゾンティ部門で早くも話題になったのが、園子温の「地獄でなぜ悪い」だ。29日の公式上映と前日のプレス上映ではともに拍手を受け、上映中は何度も笑いを取るなど、海外の観客にもコミカルな味が受けた。園監督が17年前に書いたというストーリーをもとにした本作は、ブルース・リー、東映ヤクザ映画、タランティーノ映画などのパロディにあふれた、映画ファンを熱くする要素と、映画の規則にとらわれない破壊的なパワーが批評家たちをも納得させたようだ。
現地には園監督と妻の神楽坂恵、出演の長谷川博己、二階堂ふみが参加。園監督は、「かつて映画が撮りたくてもなかなか撮れなかったときは、映画の神さまはずいぶん意地悪だなと思ったが、いま振り返るとこうしてベネチアや海外の映画祭に何度も来られるようになって、良かったと思う」と感慨深げに語った。(佐藤久理子)