吉田大八監督の初舞台稽古場に潜入 夏菜&池松壮亮が本谷有希子のクセ者キャラに挑戦
2013年8月28日 18:00
[映画.com ニュース] 「桐島、部活やめるってよ」の吉田大八監督初の舞台作品となる「ぬるい毒」が、9月に上演される。現在稽古真っただ中の吉田監督と、メインキャストを務める夏菜&池松壮亮に話を聞いた。
原作は第33回野間文芸新人賞を受賞した本谷有希子の同名小説。吉田監督は本谷の戯曲「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」を2007年に映画化し、その手腕が高く評価されている。今回、再び本谷の原作を基に脚本を書き下ろし、初の舞台演出に挑む。
吉田監督にとって舞台の現場は「まだ手探りな部分もあるが、毎日稽古場に来て、(芝居が)変わっていくことを見るのが楽しくてしょうがない」。そして、「映像に比べると、俳優たちとのコミュニケーション密度が高い。フレームの外が映らないことを前提にできる映像と違い、全部むき出しで見えてしまうことが大変だが刺激的。OKカットを手に入れても終われないのも新鮮」と新たな発見を楽しんでいるようだ。
物語は、自分の人生は23歳で決まると信じる主人公・熊田が、ある日突然電話をかけてきた謎多き男・向伊に魅了されていく日々を描く。本谷作品ではおなじみの、自意識過剰な性格の主人公を演じる夏菜は「無駄にプライドが高かったり、傷つくのが嫌だから背伸びしたり、自分を殻で覆ってみたりして、大人っぽく見せたい、バカにされたくないという思いが熊田は強い」と分析。「今は消えましたが、私も若い頃にこういう時期ってあったな(笑)」と共感した部分を引き出しながら役と向き合っているという。
池松は今作が2度目の舞台作品。役作りで準備したことは「フラットにいようと思って、特別なことはしていません。1カ月半もあるので、(稽古着の)ジャージを用意したくらいでしょうか(笑)」といたってマイペース。「稽古入り前に台本を読んだ時点で感じた手ごたえを信じて突き進むだけです。これだけの期間準備するのだから、いつも以上のことができるはず、と自分にもプレッシャーをかけています」と気合いを見せた。
この日の稽古では、夏菜、池松のほか同世代の登場人物が集う場面を繰り返した。本谷が描いた世界観はそのままに、吉田監督のユーモアが加わったせりふ回しに、取材陣も思わず笑いをこらえられえない場面もあり、秋の公演に期待がかかる。
吉田監督は「撮影とは全然違うテンションで気を抜けない。毎日新しいものをここで作りださなければいけないし、しかも本番ですらない。昨日より今日が良いという手ごたえさえあればやっていける気になります」と力を込めて語った。
「ぬるい毒」は、東京・新宿の紀伊國屋ホールで9月13日から26日まで公演予定。チケットは現在発売中。