ドキュメンタリー公開の美輪明宏からメッセージ「いまこそ日本人に目覚めて欲しい」
2013年8月27日 12:45
[映画.com ニュース]フランス人監督が美輪明宏の生涯に迫ったドキュメンタリー映画「美輪明宏ドキュメンタリー 黒蜥蜴を探して」が8月31日公開する。公開を前に、美輪からのメッセージが届いた。
歌手、俳優、舞台演出、脚本や衣装デザイン、執筆など長年多岐にわたり活躍を続ける美輪は「ひとりの人間には、ご両親、そのまたご両親といたどっていけば、何百、何千という人間の性格と才能が宿っている。それだけ多くの人間の才能が受け継がれているのですから、可能性は無限大なんです。私がマルチに活躍できるのも特別なことではないのです」と語る。
映画では過去のアーカイブ映像から、唯一無二の存在として多大な支持を集めている美輪の生きざまを垣間見ることができる。「日本でも明治までは、お小姓文化や若衆茶屋文化があって、市民権を得ていました。それが日本が軍国主義に走るようになってから、国策に反するということで男色は国賊扱いになったんです。その時代に、アインシュタイン、チャップリン、エジソンら天才が憧れた多様な日本文化は大きく破壊されたのです。私は何とかそれを取り戻したくて、終戦後にお小姓文化を現代風にアレンジしてこういう男でも女でもない姿を演出するようになったんです」と、自身の表現の根底には社会への問題提起があることを明らかにする。
映画では、昨年のNHK紅白歌合戦出場で大きな話題を呼んだ「ヨイトマケの唄」についても触れており、「九州の炭鉱の町で、とても不景気でどん底の生活をしているのに、お金を握りしめて聞きに来てくれる人を見て、この人たちを励ましたいと、作詞作曲をしてビジュアル系の衣装も宝石も毛皮もメーキャップも辞めて、素顔で歌うようになったんです」と語っている。
長崎出身の美輪は、今月放送されたNHK特番で自らの被爆体験を語った。「被爆体験というのは、どんなに言葉を尽くしても、やっぱり体験した人でないとわからないから、自分自身無力感にとらわれそうな気持だったのですけど、今の自民党政権下で憲法9条を改正しようという動きがある中で、いてもたってもいられなくなったんです。いままでテレビでは話さなかったのですが『なんとしても伝えないと!』という想いです」と胸の内を明かした。
9月には美輪自身が舞台美術、照明、衣装に至るまでの全てを手掛け、ライフワークと言える「ロマンティック音楽会」を開催。今年の音楽会では現在の社会・政治情勢に対して警鐘を鳴らす意味を込めて、「悪魔」や「祖国と女達」といった反戦歌を披露する。10月からは野田秀樹演出、宮沢りえ主演による舞台「MIWA」が上演される。
そして自身のドキュメンタリー公開にあたり美輪は 「いま、世の中がとてもきな臭くなってきています。いまこそ私は日本人、特に若い皆さんには目覚めて欲しい。この映画や音楽会がそうした目覚めのきっかけになれば本当にうれしく思います」とメッセージを寄せた。
映画は日本映画配給会社で働いていたフランスのパスカル=アレックス・バンサン監督が、江戸川乱歩原作、三島由紀夫による戯曲を深作欣二監督が映画化したカルト作「黒蜥蜴(1968)」で、妖艶なヒロインを演じた美輪に魅了され、美輪本人への密着取材を敢行。1952年の歌手デビューから、「ヨイトマケの唄」の逸話や生前の深作監督の発言、そして宮崎駿監督「もののけ姫」での声優出演時のエピソードまで、貴重なアーカイブ映像を編集したほか、横尾忠則氏らへのインタビューを収めた。
「美輪明宏ドキュメンタリー 黒蜥蜴を探して」は8月31日から、東京都写真美術館ホール、渋谷アップリンクで公開、同時に東京都写真美術館ホールで「黒蜥蜴(1968)」が35ミリフィルムで上映される。
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
第86回アカデミー作品賞受賞作。南部の農園に売られた黒人ソロモン・ノーサップが12年間の壮絶な奴隷生活をつづった伝記を、「SHAME シェイム」で注目を集めたスティーブ・マックイーン監督が映画化した人間ドラマ。1841年、奴隷制度が廃止される前のニューヨーク州サラトガ。自由証明書で認められた自由黒人で、白人の友人も多くいた黒人バイオリニストのソロモンは、愛する家族とともに幸せな生活を送っていたが、ある白人の裏切りによって拉致され、奴隷としてニューオーリンズの地へ売られてしまう。狂信的な選民主義者のエップスら白人たちの容赦ない差別と暴力に苦しめられながらも、ソロモンは決して尊厳を失うことはなかった。やがて12年の歳月が流れたある日、ソロモンは奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人労働者バスと出会う。アカデミー賞では作品、監督ほか計9部門にノミネート。作品賞、助演女優賞、脚色賞の3部門を受賞した。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。