「わが母の記」でベルイマンにオマージュ 原田眞人監督が巨匠から受けた影響を語る
2013年8月10日 08:00

[映画.com ニュース] 東京・渋谷ユーロスペースで上映中の企画「イングマール・ベルイマン3大傑作選」で8月7日、トークイベントがあり、ベルイマンにオマージュを捧げたという「わが母の記」の原田眞人監督が巨匠から受けた影響を語った。
原田監督が本格的にベルイマンを好きになったのは2010年からだそうで、「『処女の泉』を高校生の時に見ているのですが、その当時は映画をやるならベルイマンを見ておかなきゃと義務的に見ていて、面白いと思ったことなんて一度もなかった(笑)。それが50歳を過ぎてから、『わが母の記』の原作の井上靖先生の小説を読んで、そこから小津安二郎監督作品や、イングマール・ベルイマン監督作品へと興味がつながっていきました」と語る。
小津とベルイマンの共通点は「母親への愛の強さ」だといい、原田監督自身も映画を見始めたのは母親の影響だと明かす。「ずっと“母もの”の映画への思いが強くあって、いざ自分で『わが母の記』を撮るとなった時に、同じく母親への愛が深いベルイマンへのオマージュを入れたのです」
「わが母の記」で、ベルイマンの『処女の泉』」を見に行った娘役の宮崎あおいに、父親役の役所広司が「ピンク映画なんて見に行きおって!」と怒るシーンについては「実はその当時、『処女の泉』は成人映画指定だったんですね。その頃僕は中学生で、処女と聞いただけで興奮してしまう年頃だったので、どんな映画かなと妄想していて(笑)。そんな記憶をエピソードに盛り込みました」と告白し、会場を笑わせた。
「わが母の記」で、家族のことを書いてしまう作家の父親と、そんな父を告発する娘という設定は、ベルイマンの「鏡の中にある如く」の父娘の関係を取り入れた。宮崎には役所を、父ではなく、男として見つめる目を養ってもらうため、「鏡の中にある如く」のハリエット・アンデションの演技を参考にしてもらったという。
「僕も若いころは難解だと思っていたのですが、彼の生き様を学んでいくと、とてもわかりやすいし面白いんです。5回結婚して3人愛人がいて、その奥さんとか愛人との葛藤が、全部映画に投影されている(笑)。難解などと言われながら、実はすごく人間的な監督ですよね」と巨匠の人間らしさにも惹かれている。「映画に必要な2つの要素“メタファー”と“アンビバレンツ”が、ベルイマン作品には全部見事に使われている。1つの作品で使われた要素が、また別の作品につながっていたりして、次から次へと面白さが転がっていく楽しみがありますね」と映画的魅力を語った。
「イングマール・ベルイマン3大傑作選」はユーロスペースにて上映中。
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