加瀬亮、名匠・木下惠介に思い馳せ「心を込めて作った」
2013年5月23日 21:00
[映画.com ニュース] 日本を代表する映画監督・木下惠介の生誕100周年記念作品「はじまりのみち」の完成披露試写会が5月23日、東京・丸の内ピカデリーで行われ、主演の加瀬亮をはじめ、共演の田中裕子、濱田岳、ユースケ・サンタマリア、原恵一監督が舞台挨拶に登壇した。
「二十四の瞳(1954)」、「喜びも悲しみも幾年月」(57)、「楢山節考(1958)」など、数々の名作を世に残した名匠・木下監督が、脳溢血で倒れた母を疎開させるためにリヤカーをひいて山越えしたという実話をもとに、母への思い、映画監督としての挫折や再生、生きざまを丹念に描き出す。
木下惠介役を演じた加瀬は、「あまり木下監督のことを知らなかったのでたくさん勉強することから始めたけれど、あくまでフィクションなのでそこまで似せる必要があるのかなとも思った。フィクションなりに木下監督の姿勢のようなものが伝われば良いのではと、実際の監督のイメージは一旦横において始めてみることにした」と役作りを振り返った。映画「クレヨンしんちゃん」シリーズをはじめ、アニメーション映画「カラフル」「河童のクゥと夏休み」などで高く評価されてきた原監督にとって初実写映画となったが、「親子愛や有名監督の美談だけに収まらない物語で、木下監督のもっていた過激さが入った映画に仕上がった」と胸を張りながら、「木下監督は叙情的な作品で知られているけどロックでパンクな監督だった。ここにいる皆さんも穏やかだけどロッカー」とキャスト陣を称えた。
寝たきりの木下の母親・たま役を演じた田中は、「私にとっては贅沢な撮影でまずセリフが少ない(笑)。リヤカーで引っ張ってもらって寝ながら見上げる風景は、大きな木や空に浮かぶ雲、風が吹いたりお月様が出たりと、見たことのない格別な景色でこの上なくありがたかった」とほほ笑んだ。加瀬との初共演も、「自然に笑えるし、加瀬さんが泣いてると泣いちゃうし。加瀬さんの体現する静けさに浸らせてもらうのは気持ちよかった」と絶妙な親子の雰囲気を醸し出した。すると惠介の兄役を演じたユースケも、「ずっと僕と加瀬さんは同じ系統の顔つきだと思っていた」と兄弟役に手応え。山越えを手伝う便利屋を演じた濱田は、原監督の「河童のクゥと夏休み」の大ファンだといい、「便利屋だけものすごい身体能力の高さで、もしかしたら河童なんじゃないかって思った。後半はほぼクゥの気持ちでやっていた」と笑わせた。
また、木下監督の弟で作曲家の木下忠司氏も駆けつけ、「原監督の作った惠介を期待して待っていた。私も村に疎開していたからこの話は薄々知っていた。あんなに温かく迎えてくれた人々に非常に感謝している」と当時を述懐しながら、加瀬に花束を贈呈。加瀬は、「心を込めて作ったつもり。緊張するけど、木下監督に縁のある方々にも楽しんでいただければ」と語りかけた。
「はじまりのみち」は、6月1日より全国で公開。