二十四の瞳(1954)

劇場公開日:

解説

「女の園」に次ぐ木下恵介監督作品。壷井栄の原作を同監督自身が脚色している。撮影も「女の園」の楠田浩之、音楽は「三つの愛」の木下忠司。出演者は「女の園」の高峰秀子、田村高廣、天本英世、「昨日と明日の間」の月丘夢路「陽は沈まず」の小林トシ子、笠智衆など。

1954年製作/154分/日本
原題:Twenty-Four Eyes
配給:松竹
劇場公開日:1954年9月14日

ストーリー

昭和三年四月、大石久子は新任のおなご先生として、瀬戸内海小豆島の分校へ赴任した。一年生の磯吉、吉次、竹一、マスノミサ子、松江、早苗、小ツル、コトエなど十二人の二十四の瞳が、初めて教壇に立つ久子には特に愛らしく思えた。二十四の瞳は足を挫いて学校を休んでいる久子を、二里も歩いて訪れてきてくれた。しかし久子は自転車に乗れなくなり、近くの本校へ転任せねばならなかった。五年生になって二十四の瞳は本校へ通う様になった。久子は結婚していた。貧しい村の子供達は卒業を迎えても誰一人望み通り進学出来ず、母の死んだ松江は金比羅の食堂へ奉公に出された。八年後--その頃擡頭した日本の軍国主義は久子を教壇から追い、大東亜戦争は夫まで殺した。島の男の子は次々と前線へ送られ、竹一等三人が戦死し、ミサ子は結婚し、早苗は教師に、小ツルは産婆に、そしてコトエは肺病で死んだ。久子には既に子供が三人あったが、二つになる末っ子は栄養失調で死んだ。終戦の翌年--久子は再び岬の分教場におなご先生として就任した。教え児の中には、松江やミサ子の子供もいた。一夜、ミサ子、早苗、松江、マスノ、磯吉、吉次が久子を囲んで歓迎会を開いてくれた。二十四の瞳は揃わなかったけれど、想い出だけは今も彼等の胸に残っていた。

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スタッフ・キャスト

監督
脚色
木下惠介
原作
壷井栄
製作
桑田良太郎
撮影
楠田浩之
美術
中村公彦
音楽
木下忠司
録音
大野久男
照明
豊島良三
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受賞歴

第12回 ゴールデングローブ賞(1955年)

受賞

最優秀外国語映画賞  
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映画レビュー

5.0ものの本質を理解して、尚、語らない大石先生

けして、戦争反対、言説を尽くして語らない大石先生、子供たちに日常の幸せを願っている、貧しい家の子供が学校を辞めて仕事に、何もしてあげられないけど話しを聞いて傍にいてあげることしかできないと、正直故に、軍国教育に染まる同僚、上役についてゆけず、退職、体制に従順であれば苦もなく軍国教育をし、戦後誤った教育であったと教科書を黒で塗りつぶして民主教育を恥知らずに語る教師、大人たち。横並びの発想と平均であることしか判断できない凡人を批判しているような、そんな国家、教師、大人たちの犠牲になって亡くなった子供たち、全盲で帰還した子供のエピソードに涙が止まらない、柔らかな瀬戸内海の風景がそれとなく平和な日常の尊さを語っている。
単なるお涙頂戴の反戦映画ではなく、日常にある、価値判断、取捨選択が平和を維持することを警鐘している。

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全国連加盟国不可侵条約締結、武装中立主義、多様性男女平等自由主義、5名作4良作3いい作品なので他は2以下です。

4.5木下恵介の「船」

2023年10月3日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

舞台が小豆島で、山や海、白い砂浜など自然背景を存分に活かした構図は言うまでもなく、和船、漁船、観覧船など船の描写が多くあり、櫓で舟を漕ぐシーンや出征のシーンで風になびくテープや船に揺られる人物を写したショットなど、どれもとても美しかった。
映画の中で年を取っていくでこちゃんの役作りは言うまでもなく、子ども達の顔も皆それぞれ個性があり味わいのある顔でよくキャスティングしたなあと感心するばかりだった。

劇中ではメインテーマとして「七つの子」が事あるごとに歌われる。画やストーリーと相俟ってグッと来るシーンもあるんだけど、あまりにもしつこい(しつこすぎる…)。俳優の声を使ったバージョンもあるが、基本はプロの児童合唱団が歌ったと思しきもので、もう歌が上手いわ、伴奏でハーブがボロンボロン鳴るわでなんとも言えない心地になった。更に劇伴には「七つの子」に加えて、誰もが知る童謡がキーを変えたり拍子を変えたり楽器を変えたりと様々な演奏のバリエーションでこれでもかと執拗に繰り返される。ニュアンスに合わせて使い分けていたとは思うけど、貼っていて分かんなくならなかったのかなあと思う程乱用されていた。

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抹茶

4.5仰げば尊し

2023年8月19日
iPhoneアプリから投稿

子供時分に反戦色の強い推薦図書として触れた記憶はあるが、改めて観て、こんな映画だったのかと感じるところが多い。反戦などは時代背景にしか過ぎない。いかなる時代においても通底する生きる不条理と尊さを描いている。
歌をめざすマスノに対する親の言い分に対して、立場をわきまえた上で搾り出す最大限の弁。安っぽい熱血やカタルシスはなく、純然たるひとりの人間の真摯な姿がある。一方では恵まれぬ家庭環境に妥協を受け入れるしかない生徒もいる。無情な結末。先生などと言われても、どのようにして正解を示すことができようか。社会に疑問を呈すれば逆風を受け、教え子が風潮に侵されゆくのを防ぐこともできず、最後は受け入れ難き結果の前に無力に打ちひしがれる。夫も奪われ、余裕も失う中起きる悲劇。青い柿をもいだ子を責めず弔う姿に涙しかない。
人生を嘆き憂いて泣き虫先生となっても、目の前に新しい子供を任せられれば、また向き合い始める。この世がいかに暗くても、光もまたあることを心の中に留めておけば、前に進むこともできる。

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Kj

4.5最良の日本映画の一本

2023年5月29日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

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もーさん
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