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井筒和幸監督「『黄金を抱いて翔べ』は男のロマン」

2013年4月2日 13:00

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「男性にこそぜひ見てもらいたい作品」と力を込めた井筒監督
「男性にこそぜひ見てもらいたい作品」と力を込めた井筒監督

[映画.com ニュース] 日本を代表するミステリー作家・高村薫氏のデビュー作で、日本推理サスペンス大賞受賞の傑作ミステリーを妻夫木聡浅野忠信ら実力派俳優陣で映画化した「黄金を抱いて翔べ」が、4月2日にブルーレイ&DVD化。本作で時代にあらがう硬派な男たちの生きざまを描いた、井筒和幸監督に聞いた。

「古い人は“ケイパー映画”って言うんだけど、犯罪映画は男のロマンだから」と井筒監督は言い切る。「ケイパー(caper)」とは、俗語的な意味で「犯罪、悪事」という意味を持つ語で、「ケイパー映画」とは、犯罪のプロフェッショナルたちが集まり難攻不落のヤマを攻略するジャンルを指す。

大阪のメガバンクの金庫に眠る240億円の金塊を奪うため、ワケありの6人の男たちが結集する。計画に参加する理由はそれぞれ違うが、社会の片隅の孤独の中でもがいている姿は、共通。そんな男たちがはい上がっていこうとする反骨・反逆の生きざまを、井筒監督はダークなトーンとヒリヒリとしたスリルで活写する。それだけに、「男性に見てもらいたい気持ちが強いね」と言葉が強まる。

90年に「小説新潮」で原作が発表されて以来、「映画の題材として面白いと思っていて、ずっと頭の片隅にあった」というだけに、満を持しての映画化……と思いきや、「そうではない」とはぐらかす。とはいえ、映画で描かれているのは、改稿が加えられてラストが異なる単行本版ではなく、初出の「小説新潮」版。こだわり続けてきたのは明らかだ。

「バブルがはじけ出した発表当時(90年)と、今の時代の雰囲気(閉塞感)が似ているとか言われるけど、社会は言うほど変わっていないですよ。時代のタイミングが合うから狙って映画化したわけでもない。あの頃から社会はすさんでいたよ。金が回ろうが回ってなかろうが、そこに生きている人たちや時代はそんなに変わらないと思いますね」

だからこそ、妻夫木演じる主人公・幸田が人生の袋小路から抜け出そうとする姿に、誰もが共感を持つ。「特に話し込んだり、役作りの指示はしなかったね。かなりストイックに作ってきた。悲観主義をどうつかみ取るか、彼なりに思うところがあったんじゃないかな」というキャラクターは、悲壮感たっぷりに見る者の心をつかむ。

撮影の苦労は「特になかった」としながらも、「実際にやるのが大変やったかな」と、カーアクションや爆破ほかアクションの撮影について振り返る。「ライブでやらないとね、演じているやつらの顔に緊張感が出ない。CGアニメに頼っていたらダメですよ」と語る。とにかく本物、そしてフィルムの質感にこだわり、暴力までを見据えて“人間”を描き切ろうとするのが井筒作品なのだ。

「できるだけ大きな画面で、ブルーレイで見てほしい。フィルムで撮った映画の質感や細部までのこだわりがすごく分かると思うし、それで良かったらぜひ『映画館で見たい』という声もあげてください。今は、評判の映画がまた名画座や地方の映画館にかかることも増えてきたし、もう1回ロードショーしてほしいね(笑)」

黄金を抱いて翔べ」ブルーレイ&DVDは、本日よりセル&レンタル開始。

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