ベルリン国際映画祭、金熊賞はルーマニア映画が受賞
2013年2月18日 11:32

[映画.com ニュース]第63回ベルリン国際映画祭の閉幕セレモニーが2月16日(現地時間)に開催され、金熊賞がルーマニア映画「Child’s Pose」に決まった。これが長編3作目となるカリン・ピーター・ネッツァー監督による本作は、交通事故で人を死なせてしまった男の母親が、その恵まれた経済力を生かして息子をかばおうと奔走する様子をドキュメンタリータッチで描く。ひとつの事件を通して、シリアスな人間ドラマに格差の激しい社会や非協力的な警察への批判を込めた点が、政治的な映画を支持するベルリンの伝統にかなったようだ。
前評判が高かったチリ映画「Gloria」は、主演のポリーナ・ガルシアが女優賞を受賞。60歳を目前に控えた離婚歴のある女性の、それでも枯れまいとする生き方を、辛口のユーモアを交えながら語る。テーマと比して明るさと希望を感じさせるところに人気が集まった。
「ノー・マンズ・ランド」でアカデミー賞外国語映画賞に輝いたダニス・タノビッチの新作「An Episode in the Life of an Iron Picker」は、審査員グランプリとともに、主演のナジフ・ミュジッチが男優賞に輝いた。ボスニア・ヘルツェゴビナに住む一家の妊娠中の主婦が、貧困のなかで医者にも掛かれない状況を、シビアに淡々と描く。監督賞は「Prince Avalanche」で、インディ映画らしいオフビートなコメディを撮ったデビッド・ゴードン・グリーンが輝いたほか、脚本賞はイランで軟禁中のジャファール・パナヒが共同監督を務めた「Closed Curtain」が戴冠。パナヒ監督は自ら脇役で出演も果たし、隔離された軟禁生活を送る作家の物語に、自身の状況を投影させるとともに、その空想の世界を映像化させた。こうした受賞作品を見る限り、今年のベルリンも全体的に社会派映画に関心が集まったと言える。
日本映画関連では、フォーラム部門に出品された池谷薫の「先祖になる」が、キリスト教関係者によって選出されるエキュメニカル賞を受賞した。本作は東日本大震災で息子とともに家も失った男性が、自ら家を再建する姿を追ったドキュメンタリーだ。
また、仙台市の団体からの提案により、3月に仙台でプチ・ベルリナーレが開催されることが決定した。ベルリン映画祭のジェネレーション部門とのコラボレーションで、青少年を対象にした長編と短編を含め数本が上映される予定だという。映画祭ディレクターのディーター・コスリックは、「仙台の市民団体からの提案を受け、我々に少しでも何かサポートできることがあればとお引き受けした。仙台の人たちに希望と元気を与えるような作品を紹介したい」と語った。(佐藤久理子)
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