崔洋一監督「血と骨」を語る 「女たちは強くならざるをえなかった」
2012年12月22日 13:00
[映画.com ニュース] 「血と骨」「カムイ外伝」の崔洋一監督が12月21日、日本大学藝術学部映画学科理論・評論コース3年生が企画から作品選定、上映交渉、宣伝、運営までを一括して行う「新・女性映画祭 “こんなふうに私も生きたい”」のトークイベントに出席した。
同映画祭では、世界初の女性映画監督といわれるアリス・ギイの作品群を一挙上映するほか、日活ロマンポルノ「四畳半襖の裏張り」のニュープリント、今年7月に死去した山田五十鈴さんが19歳で芸妓を演じた「祇園の姉妹」など、主に女性に特化した映画を特集する。
上映作品の1本「血と骨」は、作家・梁石日氏が自身の父親をモデルにした同名小説を原作に、1920年代に済州島から大阪に移住してきた在日朝鮮人の金俊平(ビートたけし)とその一家の壮絶な生きざまを描く。崔監督は、「俊平が小さな帝国を懸命に作ろうとするけれど、また壊す原因も作り、やがて壊れていく。女性たちにふてぶてしさが見えるとしたら、それは素朴な欲望。経済、金の力で押さえつけてくる俊平に対し逆バネのようになる。落差の中で懸命に生きた人々を描いた」。また、劇中で「金花子役の田畑智子が自死を選ぶけれど、これは明確な主張。その時、DVに明け暮れた夫(寺島進)は何てちっぽけな存在かと気づかされる。俊平の妻役の鈴木京香が『死んでしまえ!』と叫ぶシーンも非常にすっきりしている。抑圧されるものが非抑圧の側にまわる瞬間。女たちは強くならざるをえなかった」と語った。
学生たちが企画・運営する同映画祭についても、「どんどんやった方が良い。大人たちの映画祭には打算があって、映画祭って実はそうあってはいけない。ある視点をもって新しい発見する場所。今日はフェミニズムをテーマにやり玉にされるのではと思っていたので良かった」と冗談まじりに語った。さらに、「昔の観客たちは黙っていてもリテラシー能力が蓄えられていった。今は誰でも分かる企画ばかり。映画館は安心感を得るために行く場所ではない。ある種スリルな瞬間、インモラルな瞬間を共有できる場所であってほしい。つまりろくでもない場所(笑)。だからお金払うんだよ」と熱弁をふるった。
「新・女性映画祭 “こんなふうに私も生きたい”」は7日間で1132人を動員し、21日に閉幕した。