韓国の鬼才ホン・サンス、加瀬亮と意気投合「ぜひ一緒に仕事がしたい」
2012年11月25日 22:08
“韓国のゴダール”“ロメールの子弟”と呼ばれ、ヨーロッパで絶大な人気を誇るホン・サンス監督の代表作「よく知りもしないくせに」「ハハハ」「教授とわたし、そして映画」「次の朝は他人」の4本を一挙上映する特集企画。仏女優イザベル・ユペールを主演に迎えた最新作「3人のアンヌ」は、現在開催中の東京フィルメックスのオープニングで上映された。
ホン・サンス監督の大ファンを公言する加瀬は、「初めて見たのは『秘花 スジョンの愛』という白黒のフィルム。10年以上前にニューヨークの友だちの家で見た。自分の感覚に合うものがあり、信用できる気がした」と絶大な信頼を寄せ、「監督の映画は自分の中でもずっと見続けたい映画。日本でも広まったら良いと思う」と熱く語った。
撮影当日の朝に脚本を執筆し、その日の撮影分だけを役者に渡すという独特の手法で知られるホン・サンス監督だが、「最初の頃はシナリオを書き上げて現場に臨んでいたけど、撮っていくにしたがってだんだん台本が薄くなっていき、やがて概説だけのシナリオ、ついにはメモだけになっていった。こういう撮り方が自分の気質に合ったものだと思う」と経緯を説明。さらに、「私の映画は見た後に酒を飲みたいと思ったり、笑いながら劇場を出てきたり、観客の反応が幅広い。私としては作品によって良かった悪かったというのはない」とあくまで自然体。すると加瀬が、「自分も“分からない”から始めて、映画製作を通して発見していくのでは。だから監督の毎日によって映画が変わっていく」と考察し、ホン・サンス監督も「その通り」とうなずき、意気投合していた。
加瀬はそんなホン・サンス監督の演出法を、「自分が演じている最中にも『これ嘘っぽいな、恥ずかしいな、本当はこうじゃないのにな』と感じる時がある。演出に応えるのが基本なので自分の解釈はどうでもいいのかもしれないけど、監督の映画を見た時にリアルだな、思い当たるなと思った」。また、イランの巨匠アッバス・キアロスタミ監督が日本を舞台に撮影した「ライク・サムワン・イン・ラブ」への出演を経て、「キアロスタミ監督も事前の説明なしで、台本も直前に渡してもらったので映画の内容は知らなかった。だけど、今まで出た映画の中で一番自分が違和感がなく新鮮に見えた。いつものような計算が働いてないからだと思う」と分析していた。
加瀬は以前からホン監督作への出演を熱望しているそうで、ホン監督は「うれしい。(加瀬は)とても美しい人。さっき『私の映画に出てください』と言って、『はい』と言ってもらった」と約束を明かし、「俳優は重要な存在。監督の意図は俳優を通して伝わるし、俳優によって映画のストーリーもトーンも変わっていく。加瀬さんは俳優としても素晴らしいけど、人として私と話が通じる。ぜひ一緒に仕事がしたいと思う」とタッグを誓った。
「ホン・サンス 恋愛についての4つの考察」は東京・シネマート新宿で12月21日まで、大阪・シネマート心斎橋で11月30日まで上映される。