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「美を追求した作品」長編デビュー作がコンペ入り「ニーナ」エリザ・フクサス監督に聞く

2012年10月28日 14:50

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エリザ・フクサス監督
エリザ・フクサス監督

[映画.com ニュース] 第25回東京国際映画祭コンペティション部門に出品された「ニーナ」が上映され、このほどイタリアから来日したエリザ・フクサス監督に話を聞いた。

北京への留学を控え、他人の家の動物を預かるアルバイトをしながらひとりで夏休みを過ごす学生ニーナの見る世界を描く。撮影は、近代建築が立ち並ぶローマ近郊の街エウルで行われた。建築物と空間を独自の感性で切り取った映像は、1シーン1シーンがインスタレーション作品のように美しい。

取材に入るやいなや記者は監督本人から「この作品の欠点は?」と問われた。欠点だとは思わないが主人公の心情の移り変わりよりも、映像の美しさに目が行ってしまったと正直に話すと、「そう、この作品では美を追求したのです。美しいものを見たいという気持ちは一種の麻薬のようなものなので、どうしても物語に勝ってしまうことがあるかもしれません」と説明する。

「ニーナ」の一場面
「ニーナ」の一場面
(C)2012 Magda Film, Paco Cinematografica

レイモンド・カーバーの短編のようなミニマリズムを好むといい、本作も79分と短く、ドラマチックな表現はいっさいない。「小さい世界の中で、強い感情も接触もなく、ニーナの感情はフィルターを通したような感じで描いています。一般的にイタリア人は強い感情でぶつかっていくタイプなのでこの作品とは正反対です。ですからイタリアよりも日本に居場所がある映画だと思っていました。ローマでなく、東京の映画祭に参加しているのも偶然ではないと思います」。

フクサス監督は1981年生まれ、今回初めて手がけた長編作品がコンペ入りし、「優勝しなきゃと思ったわ(笑)」とにっこり。「幼い頃、親に黒澤の映画を見せられて育ちました。『』の狐の嫁入りのシーンがとても強く印象に残っています。今回の作品で熊のお面を使いましたが、どこかしら影響されているのかもしれませんね」。スタイリッシュな映像とともに繊細な感情を静かに描き出す作風は、監督自身も認識するように日本人向きと言える。今後の活躍に期待したい若手女性監督だ。

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