いとうせいこう、原発問題の“嘘”を熱弁 人々の共闘訴える
2012年8月18日 17:30

[映画.com ニュース] 公開中のドキュメンタリー映画「ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳」の長谷川三郎監督とクリエイターのいとうせいこうが8月18日、東京の銀座シネパトスでトークイベントを行なった。
敗戦直後の広島の撮影に始まり、三里塚闘争、安保、戦争責任など、様々な問題について最前線で撮影し続けてきた写真家・福島菊次郎。昨年の東日本大震災による福島第一原発事故に至るまでの長きにわたる戦いの日々を描き出す。
いとうは、「居ずまいを正すしかない映画」と福島氏の姿に感銘を受けた様子。長谷川監督はNHKや民放でドキュメンタリーの制作に携わってきたが、本作の撮影に入るまで福島氏についてよく知らなかったと明かし「3年前にこれまで福島さんが残された60年代の学生運動や三里塚の写真を見た時は大きな衝撃を受けました。常に最前線の深くにいて、そこで戦っている日本人たちを真正面から撮った写真を見た時、ここまで人間に迫れるのか? と思った」と振り返る。
福島氏は活動の中で様々な嫌がらせを受けてきたというが、いとうは「民衆の側から撮ろうとするものを抹消しようとする勢力は世界中にずっと存在してきた。それでも60年代、70年代は、マスコミは抹消されないように戦ってたけど、80年代くらいから抹消する側の方が強くなってしまった。そうするとそれ以降の世代はそういうことがあったことすら知らなくなる」と警鐘を鳴らす。
そんな中で発生したのが福島第一原発の事故。いとうは、ソーシャルメディアの発達などにより民衆が力を盛り返してきた点を高く評価しつつも、「それでもマスコミはいまだにとんでもない嘘を報じたりしている。原発というのは軍事力を担保にした産軍複合体。電力会社ではなく、もっと巨大な権力の問題」と見えざる“敵”の大きさを訴える。「このとんでもないレベルの力と戦うのは容易ではない。福島さんのように1日たりともあきらめないというのがどんなにすごいことか。変えられない世の中だとしても彼は『NOは絶対にNO!』と言っている」と改めて福島氏の強い信念を称えた。
長谷川監督も震災がひとつの転機となった告白。映画のための取材が始まったのは震災以前だったが「どう届ければいいのか? と悩んでいたときに震災が起こった。福島さんが原発事故について『広島と重なる』と言ったときに、これからの日本で起こるかもしれない嘘を予言しているように思えた」と語った。
いとうはさらに、“映画”というメディアで発信していく意義にも言及。「やはり同じ問題でもテレビやろうとするとものすごい圧力が掛かってくる。そういうときに小さな映画館というのは“集会”の場になる。『どう思いますか? どう考えますか?』といったことができるのが映画館というメディア。それをもう一度機能させるべき」と熱く語った。長谷川監督も「映画館の暗闇の中で福島さんの戦後に出合うけど、若い人には消化できないものもたくさんあると思う。持ち帰ってこれからの日本と向き合うヒントにしてもらえたら」と同調し、いとうと握手を交わしていた。
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