ウェス・アンダーソン、カンヌ映画祭オープニング作の撮影を述懐
2012年6月5日 12:45

[映画.com ニュース] 第65回カンヌ映画祭でオープニングを飾り、注目を集めたウェス・アンダーソンの新作「ムーンライズ・キングダム」。1960年代の米東海岸、ニューイングランド島を舞台に、周囲の環境になじめない12歳の少年、少女の逃避行を、レトロな色彩に包まれた独特の映像スタイルで描いた。
ふたりの新人子役を主役に添えながら、ビル・マーレイやジェイソン・シュワルツマンといった常連俳優に加え、ブルース・ウィリス、エドワード・ノートン、ティルダ・スウィントンら豪華キャストが脇を固めた本作は、アンダーソン監督の集大成とも言えるようなエモーショナルな作品に仕上がっている。
ウィリスは記者会見で、「ウェスと仕事ができたのはとても光栄。特にこれまで自分がやったことのないような役柄だったので新鮮だった」と語り、「この映画は普遍的な愛に関しての物語。誰もが愛されることを必要としているということなんだ。みんなも愛が必要だろう?」と発言して会場を沸かせた。さらにマーレイが、「こういう低予算でもアート系の映画をウェスと一緒に作れることをいつもうれしく思っている。そのために他の映画に出演して頑張ってたくさん稼いでいるんだ」と語ると、会場には笑いが起こった。まるで芝居の一座のように和気あいあいな雰囲気は、キャストの幸福な映画体験をそのまま裏付けるようだった。
アンダーソンは、インタビューで今回の撮影の体験について語っている。「基本的に僕はいつも同じ顔ぶれと仕事をするのが好きで、それは一種の同窓会のような感じなんだ。今回はそこに新しいメンバーを加えて、ちょっと新鮮な空気を入れた。とても楽しい体験だったよ。エド(ワード・ノートン)とは前から一緒に仕事がしたいと思っていて、やっと実現した。60年代を舞台にしたこの映画は、画家のノーマン・ロックウェルが描くアメリカのようなイメージにしたくて、エドはちょっとロックウェルの絵に出てくるような雰囲気の人だと思ったんだ」。
少年、少女のせつないファンタジーというテーマについては、「自分が子どもの頃に感じたこと、楽しかったことを映画にしたかった。僕の場合、この映画のような素敵な女の子との恋の逃避行はなかったけれど(笑)、こんな子ども時代を過ごせたらいいなという願望が反映されているんだよ」と打ち明けた。(佐藤久理子)
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