堤幸彦監督、こん身作「MY HOUSE」はヒーロー映画になっていたかも!?
2012年5月26日 14:08
[映画.com ニュース] 堤幸彦監督が5年の歳月をかけ製作したモノクロ映画「MY HOUSE」が5月26日、全国16スクリーンで封切られ、堤監督をはじめ、原作者の坂口恭平、脚本を手がけ主人公とともに路上生活する“先生”を演じた佃典彦が、東京・新宿バルト9で舞台挨拶を行った。
建築家である坂口氏のルポ「TOKYO 0円ハウス 0円生活」(河出文庫刊)と、小説「隅田川のエジソン」(幻冬舎文庫刊)を原作に、堤監督が路上生活者の生き方を通して“自由と幸せ”の本質を問いかける野心作。現在公開中の「劇場版 SPEC 天」をはじめ、大型エンタテインメント作を数多く手がけてきたが「今回は娯楽色が全くない作品にしたかった。色もない、音もない、セリフも少ない。ないない尽くしなので、伝えていくのが大変だった」と宣伝に苦心した様子。それでも「賛否あると思うが、もしいいと感じていただけたなら、周りの方々にも薦めてほしい」と挨拶にも力がこもった。
隅田川のブルーシートハウスに住む“都市の達人”鈴木さんを軸に、エリートコースを目指す中学生や潔癖症の主婦ら、交わるはずのない人たちの生活がある事件をきっかけに交錯していく。堤監督がメガホンをとるとあって、当初はより規模の大きな作品になる構想もあったというが「その分、表現が甘くなっていき、最終的には鈴木さんが公園の子どもたちのヒーローになりかけたことも……。なので1回、作るのをあきらめ、ゼロに戻した」。完成した作品は「本来の姿」だといい、「思い起こせばいろいろあった」としみじみ語っていた。
坂口氏は「堤監督からの電話から、1本の映画が生まれるなんて。今、ここに立っていることが現実なのかわからない」と目を白黒。昨年3月のクランクイン直後には、以前から安全性に懸念を抱いていたという原発での事故が発生し「映画のほうが、現実であってほしいと思うほど」と複雑な胸中を吐露した。シナリオを手がけた佃は、堤監督から「セリフが多い」という注文を数回受けたそうで「でも試写を見たら、もっと削られていて……」と苦笑い。堤監督は「すみませんでした」と平謝りだった。