岩井俊二監督、日本映画に警鐘「つくり手に問われている」
2012年5月24日 17:45

[映画.com ニュース] 岩井俊二監督が5月24日、東京・荻窪の「6次元」で行われたトークショー「ドキュメンタリーとドラマのあいまいな関係」に、中村真夕監督とともに出席。ドキュメンタリー映画を製作し改めて感じる思い、震災後の日本の社会について議論を交わした。
宮城・仙台出身の岩井監督は、東日本大震災後に出会った人々との対話を通して原発問題などを掘り下げ、ドキュメンタリー映画「friends after 3.11 劇場版」を製作。「原発について正確な情報が手に入りにくい状況のなか、インターネットを通じてテレビでは報道されない情報をいろいろな人が話してくれた」と述懐した。さらに、被災地出身だからこそ痛感する問題点として、「ボランティアの怖さ」を指摘。地元・仙台の様子を観察し「誰もが助けられるとなっていることは、非常に怖いんじゃないかな。現地に立ち直る力があるのに、『かわいそう』という感情が当たり前になっていることが多い」と語った。
「ハリヨの夏」でデビューを果たした中村監督は、最新作「孤独なツバメたち デカセギの子どもに生まれて」で、静岡・浜松に暮らす日系ブラジル人の青年たちを、2年半にわたり追い続けた。「リーマンショックや震災など時代が目まぐるしく変わるなか、ドキュメンタリーの即効性」を感じたという。撮影中に出演者の帰国問題などに直面し、「人生が劇的すぎて現実がフィクションを超えている。展開が見えない、次になにが起こるかわからない面白さがあった」と振り返った。
岩井監督は、中村監督から「ドキュメンタリーとドラマの境界線」を問われると「20~30年前は事件が起こるとすぐ映画になっていた。“Based On A True Story”が公然となされていたが、段々とつくることができなくなっている。日本映画界がいろんなものに浸食されている」。会場に集まったファンの「物語が社会に対して役割を果たすかどうか」という問いには、「物語が絶えてしまったことはないので、人間の側に寄り添うものだと思う。ただ、今の世を見ると供給過剰だと思うので、本当に必要なのか考えながらつくることが、我々つくり手に問われている」と真しな眼差(まなざ)しをのぞかせた。
長編第2作「スワロウテイル」を「移民に対するあこがれの視点で描いた」という岩井監督は、「日本は手当てしもらうのが当たり前の“病院”みたい。彼らは日本人が失ってしまったバイタリティを持っている」と持論を展開。「彼らと向き合っていないんじゃないかと自分自身も反省したくて、日本の薄情な姿を暗に込めた」と明かし、「日本人という民族のアイデンティティが、見えない壁をつくっている。日本の冷たさであり、将来的には弱点になるんじゃないのか」と懸念を示す。中村監督も「彼らは『出稼ぎにきたのはいいことだ』と言っていて、マイナスをプラスにかえる考え方を持っていた」とたくましく生きる姿を強調した。
海外を拠点に活動する岩井監督は、今後の活動について「海外に行くと日本が小さく感じられる。今年、来年は中国での活動がメイン。いろいろ経験し続けないと。いろいろな世界を見た方がいい」。9月には新作「ヴァンパイア」の公開も控えており、自ら執筆した小説「番犬は庭を守る」の映画化にも意欲をのぞかせた。
中村監督の最新作「孤独なツバメたち デカセギの子どもに生まれて」は、5月26日から全国で公開。
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