「アーティスト」M・アザナビシウス監督「サイレント映画は欠如の映画ではない」
2012年4月8日 10:30

[映画.com ニュース] VFXや3Dなど技術革新が日進月歩で進む現代の映画界において、白黒サイレントのフランス映画が作品賞含む最多5部門受賞という驚きの結果をもたらした今年のアカデミー賞。ミシェル・アザナビシウス監督が作品について語った。
1927年のハリウッドが舞台。大スターのジョージが新人女優のペピーを見初めてスターへと導く。時代はサイレントからトーキーに移行し、ジョージは落ちぶれていくが、彼に思いを寄せるぺピーがジョージの復活のために陰ながら奔走する姿を描く。物語は音楽と共に時折挿入される字幕のみで進み、言葉を発さない登場人物たちのしぐさ一つ一つから目を離さずにはいられない。
サイレントという手法を選んだ理由を「非常にシンプルではありますが、美しいストーリーを語るのに適した技法ではないかという直感がありました。おそらく今までにない斬新な手法で語れるのではないか、何か世界初のような試みができる気がしたのです」と明かし、こう断言する。「サイレント映画は、トーキー映画から単にせりふを抜き取った、そういう欠如の映画ではないと私は思うのです。サイレントならではの別の語り口があると信じていたのです」
劇中では、過去の名作へのオマージュを感じさせるシーンがいたるところで発見できる。「本当に完璧な監督」と敬愛するビリー・ワイルダーの作品から本作製作のインスピレーションを与えられたという。「ほかの監督の作品を見て、別の時代の作品にこたえるという作業を今回私はしたわけですが、それは音楽や絵画の世界では割と普通になされていることにもかかわらず、映画界ではなかなかありません。ひとつ例を挙げるとしたらクエンティン・タランティーノ 監督が、もっとポップなやり方で過去の作品にオマージュを捧げています。そういうアプローチは懐古趣味的なものではなくて、過去を尊重するということです。そのことによって、より落ち着いて、聡明な形で未来に進んでいけるのではと思うのです」
オスカーハンターとして知られるハリウッドの名プロデューサー、ハーベイ・ワインスタインが、本作の魅力に早々に目をつけて北米での配給権を獲得。ジャン・デュジャルダンが最優秀男優賞を受賞したカンヌ映画祭後から、アカデミー賞へ向けての本格的なキャンペーンが始まった。ワインスタインとの仕事はどのようなものだったのだろうか。
「世の中には作品の力があっても、その作品を気に入るような観客層に届かない状況が存在することがあります。そこをワインスタインがうまく見定めて、どのような対象に向けてキャンペーンを張るべきか、そういう仕事をうまくやってくれたと思います。もし、彼がいなかったら我々はおそらくオスカーを獲っていなかったでしょう」と断言する。そして、「彼のすごいところは、人並み外れた状況分析能力です。ですから、映画に限らず冷蔵庫やアイスクリームでも、彼の手にかかれば世界のベストセラーになってしまうのではないでしょうか」と笑った。
「アーティスト」は公開中。
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