若松孝二監督、新作は「60年代の摩訶不思議な日本」を思い出して製作
2012年3月24日 15:00
[映画.com ニュース] 若松孝二監督が3月24日、東京・テアトル新宿で行われた「海燕ホテル・ブルー」の初日舞台挨拶に、片山瞳、地曵豪、大西信満とともに登場した。若松監督は「この世の話ではなくてあの世の話かもしれない」と本作について話し、「2本重い映画をつくったあとで、60年代の摩訶(まか)不思議な日本を思い出して、作品をつくりたくなった」と製作の経緯を語った。
独自の製作スタイルを貫く若松監督は、「スタッフとも俳優とも打ち合わせはしないし、メイクも衣装担当もいない」ときっぱり。「(メイクで)泥みたいな塗ったら芝居なんてできない。計算してもできるわけがない。人生は1秒先もわからないんだから。撮影もそのとおりで、無の状態でその役をやりなさい」と役者に指示するそうだが、「自分の頭の中で編集はできている。でも俳優やスタッフに説明しないまま、“なんでわからないの”と怒ってしまうのは悪いクセだよね」と笑いを誘った。
「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)」(2008)、「キャタピラー」(10)に続く今作は、作家・船戸与一の同名小説を映画化。獄中で殺された仲間の復讐を誓ったひとりの男の姿を描く。片山、地曵、大西をはじめ井浦新(ARATA)、廣末哲万らが出演。音楽は若松監督の熱烈なファンであるジム・オルークが担当し、「『連合赤軍』のときが全然ダメで、5、6回つくってもらったけど、今回は“これだ!”と一発OKだった」と若松監督お墨付きだった。
今作は地曵、大西ら若松組おなじみのメンバーが参加した。地曵は「『連合赤軍』では実在の人物を演じて責任も大きかったけれど、今回は自由に演じることができた」。大西は「監督の現場での立ち方など、今回は根本的に違っていた」と説明し、「監督の恐ろしい眼差(まなざ)しのなか、ある意味自由にやらせていただいた。基本的に若松組は怒号が飛び交うので、地曵くんも自分も相変わらずひどい目にあいました(笑)」と述懐した。
若松組初参加となった片山は、「ご一緒できたら幸せだと思っていた」と感激しきり。「若松組の役者はひとりで現場に入るしきたりなので、最初は不安でした」と厳しい現場に戸惑いも多かったようだが、「でも役者としてひとりで立つことを教えてもらった」と笑顔をのぞかせた。物語のカギになる女性を演じ切った片山に、若松監督は「オーディションで50人くらいとあったけど、パッと『この子だ』と思った」と賞賛を送った。