是枝監督「この子たちを撮れたことが奇跡」　「まえだまえだ」主演作を語る

「奇跡」というタイトルを先に思いつき、鹿児島と博多をつなぐ九州新幹線の開通日、上下線の一番列車がすれ違う瞬間に奇跡が起こるという設定を考えたという。「最初は鹿児島にいる男の子と、博多に住む女の子が別々にそのすれ違いを見に行って、恋に落ちる……みたいなボーイミーツガールの話だったんです」と当初のアイデアを明かすが、今回主演を務めた「まえだまえだ」との出会いにより、脚本を大きく改稿する。

お笑い芸人として舞台やバラエティー番組で活躍する「まえだまえだ」とは、本作のオーディションが初対面。「この子たちに会ったことで、完成した映画だと思います。キャラクターも含めてほとんど2人からもらってきて、設定を考えたようなものです。お兄ちゃんの（前田）航基はとても繊細で、大人の話や状況を瞬時に把握するんです。非常に能力が高いし、弟の旺志郎は天然で、ある意味で天才。2人とも頭の回転が速くて度胸もあるから、その場であれやってこれやってと指示すると、『え～、できるかな』なんて最初は言っていても、できちゃうんですよね。お芝居もクセが付いていなく、ピュアでした」とその高い適応力を絶賛する。

オダギリジョーと大塚寧々が2人の両親役に扮し、橋爪功、樹木希林、原田芳雄らベテラン俳優陣も出演する。「大人との掛け合いもね、橋爪さん、希林さんを相手にしようがオダギリくんを相手にしようが引くことがないので、そういう意味では大したものです。場数を踏んでいるキャリアというのがいい方向に出たんじゃないかな。この子たちを撮れたことは、奇跡的なことだったな」

「誰も知らない」とは違った子ども像が描かれており、本作では子どもが見ても楽しめるテーマとなっている。ファミリー層の観客を意識したのかについては「正直言うと、あんまり、見る人をいつも幅広くは捉えていないんです」と話すが、「でも、僕の娘が3歳なので、自分の娘が１０歳くらいになったら見せたいなと思いました。なので、目線としてはそこへ向けて作っています。だから子どもが見ても大丈夫じゃないかな。今回は難しい言葉も使っていないし、幅広く間口を開く結果になりましたね」と父親としての顔を見せながら語った。

「奇跡」は6月11日全国で公開。