依田巽チェアマン「エンジンを吹かす時期」と意欲新た
2010年11月5日 11:30
[映画.com ニュース] イスラエルの「僕の心の奥の文法」が東京サクラグランプリに輝き、幕を閉じた第23回東京国際映画祭。ニル・ベルグマン監督は、2002年「ブロークン・ウィング」に続く、映画祭史上初となる2度目の戴冠となったが、映画祭の依田巽チェアマンはこの偉業を予見していたのかもしれない。審査結果が発表される前、東京から巣立った才能として真っ先に挙げたのが、この作品だったのだ。08年の就任時に目標としたホップ、ステップ、ジャンプの節目となる3年目を終え、「東京国際映画祭から目を離せない、というところまではきた」と自負する。2年の任期延長も決まり、さらなる飛躍へ向けた抱負を聞いた。(取材・文:鈴木元)
依田氏の就任1年目、最も目を引いたのは東京・六本木のけやき坂に登場したグリーンカーペットだった。テーマとして掲げたエコロジーを象徴する舞台で、今ではすっかり東京国際映画祭の名物となったが、それだけではない。この3年間でさまざまな施策を試み、映画祭を成長させようと奔走してきた。
「私が始めたころは存在感が弱かった。東京の映画祭、業界の映画祭から、真の国際映画祭であり、一般の観客も楽しめるものにするために、連携ができる、高品質である、チャンスがある、そしてイノベーティブであるという4つの理念を掲げたんです。もっと強く海外に情報発信をしよう、確実に進化していくようにホップ、ステップ、ジャンプでいろいろな仕掛けをして、3年目のジャンプは作品力の強化だと言い続けてきました」
今年は76の国と地域から832本の作品が集まった。その中から選ばれた映画祭の顔であるコンペティションをはじめ、ラインナップには相当な手応えを感じているようだ。依田氏自身も、この1年で70~80本は見たという。
「コンペは非常に重量感のある、品質の優れた作品がたくさん集まりました。作品力は(3年で)一番充実している。審査委員による厳正な選考が行われているので、どの作品が受賞しても、なるほどと言われる自信は持っています」
話を聞いたのは最終の審査会が行われる前の段階だったが、その時点で東京サクラグランプリに決まった「僕の心の奥の文法」に注目しているあたりはさすがだ。審査委員にも、05年に「雪に願うこと」でグランプリを受賞した根岸吉太郎監督を起用するなど、東京から世界へ発信し、再び東京へ回帰するという継続性への強い意識がうかがえる。
一方で、連携の代表的な例として、国際ビジネスマーケットのTIFFCOM、企画マーケットのTPGといった併設部門の充実に尽力した点も見逃せない。特にTIFFCOMは、年々、参加国数、出展社数、来場者数がいずれも右肩上がりで、関係者からは「会場が手狭になり、来年はきつくなりそうだ」という話も聞かれた。
「まだ分母が小さいとはいえ、確実に成長しています。私は、広い所で閑散としているより、狭い所でお互いを肌で感じるざわめき感というか、皮膚感として大勢が参加している雰囲気があったほうがいいと思いますね。映画祭とTIFFCOMの会場が同じ敷地内にあることで、相乗効果も確実に上がっています」
そんな3年を振り返り、ホップ、ステップ、ジャンプは陸上競技の三段跳びではなくスキージャンプのイメージだったという。助走では追い風で勢いに乗り、踏み切った後は向かい風をとらえて舞い上がっていく。では、その後はどこに向かうのか。
10月1日の実行委員会で任期の延長(2年)が内定。正式決定は来年3月だが、早くも次回以降の課題は国際性だと強調する。
「日本の映画業界が、本当のお祭りにできていない。外国、国際ということになると、日本は1億2500万人に向けた市場で、欧米のように63億人に向かってビジネスをしてこなかった。きちんと飛距離をのばして、国際性のある本当に世界が注目する映画祭になってほしいんです。でも最近は映画業界も注目してくれて、ようやくいい協力体制ができ上がった。いよいよこれからエンジンを吹かす時期にきたと思っています」
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