32歳の長編デビュー作で高評価 日系米国人フクナガ監督に聞く
2010年6月18日 16:22

[映画.com ニュース] 南米大陸を縦断する列車の屋根に乗り、アメリカ移住を目指す少年少女の姿を描いた「闇の列車、光の旅」。同作が長編デビューとなった日系米国人のキャリー・ジョージ・フクナガ監督に話を聞いた。
父や叔父とともに南米ホンジュラスからアメリカを目指す少女サイラと、ギャングの一員として先の見えない生活を送っていたメキシコの少年カスペルが、移民たちでひしめく列車の屋根の上で出会う。2人はふとしたきっかけでともにアメリカを目指すことになるが……。
フクナガ監督は、父方の祖父が日本人という日系米国人。メキシコは「5歳くらいからよく通っていて、半分育ったような場所だった」というが、列車の屋根に乗った移民たちの存在は、今回の映画を撮るためのリサーチのなかで初めて知ったという。2005年に手がけた短編映画は、トラックに乗せられた移民たちがそのまま放置され、窒息死した事件を題材とした。その短編が高評価を受けて長編監督デビューが決定。引き続き移民についてリサーチを続けていたところ、「メキシコで列車の屋根に乗って移動する人々がいて、それが非常に危険なことだということを知り、映画にしようと思った」
脚本執筆にあたり、実際に移民たちと一緒に列車の屋根に乗る旅を経験。そこで感銘を受けたのは、移民たちがユーモアにあふれていたということだ。「彼らは、最悪の事態でも何かしら面白いことを見つけて大笑いしていた。だから、映画にもそういうシーンを入れようとしたんだけど、スタジオ側から『旅を楽しんでいるみたいに見える』と言われて、カットしなければならなかった。でも、それは旅が楽しいからではなくて、つらい現実を笑ってどうにかやり過ごそうということだったんだけどね」
それでも、弱冠32歳で手がけた長編初監督作は、サンダンス映画祭監督賞を受賞するなど高評価を獲得。ユニバーサル、フォーカス・フィーチャーズといった大手スタジオと契約も結んだ。次回作はミア・ワシコウスカ主演の「ジェーン・エア」で、ドキュメンタリー的な社会派映画の次が文芸作品と、早くも多才さを感じさせる。「映画はなんでも好きなんだ。だから、いろんな種類の映画を作りたい。とは言ったものの、特殊撮影のためだけに作ったような映画は作りたくないけどね(笑)」
「闇の列車、光の旅」は6月19日より公開。
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