オーソン・ウェルズ監督未完の大作「風の向こう側」がカンヌで初公開?
2009年3月4日 12:00
[映画.com ニュース] スティーブン・スピルバーグ監督の右腕として数々のヒット作を手がけてきたプロデューサーのフランク・マーシャルが、オーソン・ウェルズ監督の未完の作品「風の向こう側(The Other Side of the Wind)」を完成させ、今年5月のカンヌ国際映画祭にてお披露目する意向があることが分かった。
「風の向こう側」は、映画史に燦然と輝く「市民ケーン」(41)の監督でもあるウェルズが、ジョン・ヒューストン監督を主演に迎え(共演はピーター・ボグダノビッチ、デニス・ホッパー)、1972年に撮影をスタートさせた作品。文豪ヘミングウェイの晩年をモチーフとした物語で、ハリウッドの老監督(ヒューストン)がセックスと暴力まみれの70年代に時流に乗った作品を撮って落ち目の人生からの復活を懸けるという話だ。だが、同作は相次ぐ資金難により撮影が何度も中断。75年にボグダノビッチ監督らの助力もあって何とか撮影は終了したが、完成には至らなかった。ウェルズ監督が資金ほしさに、「市民ケーン」(アカデミー脚本賞受賞)で得たオスカー像を売り払ったのは有名な話だ。
ボグダノビッチ監督作「ラスト・ショー」のロケーションマネージャーだったマーシャルは当時、ロケ地のテキサス州アーチャーシティで老監督と出会ったという。
結局、85年にウェルズが死去。膨大なノートと編集が済んだ45分間のフィルムが残された。マーシャルとボグダノビッチは最近10年間、それらをもとに完成作業に尽力した。米ケーブルTV局Showtimeからの資金援助も決まり、完成へのめどは立った。
米バラエティ誌にマーシャルは、「Showtimeは同作完成のために資金を支払う用意があるが、それは作品の質に確信があるからだ。同作のネガはパリのラボにあるが、我々はまだ、そこに入ってネガを復元できる所有権を得ていないんだ」と現状を明かす。名プロデューサーは法律上の諸問題をクリアするために東奔西走しているという。
対して、楽天主義者のボグダノビッチの見通しは明るい。「来月あたりには何か動きがあるかもしれない。我々はカンヌを目指している。それは(映画ファンの)全員が待ち望んだ作品だし、映画史そのものだ。長い歳月を経て、とうとう見られるなんて、何かいい感じだ」とコメント。完成間近だと言わんばかりだ。