“世界のキタノ”がちょんまげカツラでレッドカーペットに登場!
2007年5月22日 12:00
カンヌ国際映画祭が開催第60回目を迎えたことを記念して、現地時間の5月20日夜、世界の名だたる巨匠たち33組35人により製作された短編オムニバス映画「To Each His Own Cinema」が上映された。最新作「監督・ばんざい!」の公開を控える北野武監督が、日本からただ1人この中に名を連ねた。
それぞれが3分の持ち時間の中で「映画館」をテーマにした作品を発表。北野監督の短編は「素晴らしき休日」と題されたメルヘンチックな物語。田んぼに囲まれた田舎町にぽつんと一軒だけあるおんぼろ映画館「ヒカリ座」に、農作業のおじさんがふらりとやって来る。そこで上映されるのは、キタノ映画の代表作であるアノ映画。しかし、そのまま無事に上映が終わるはずもなく……。わずか3分の間に2000人近い観客の心をつかみ、笑いの渦を巻き起こした。
そして、観客の注目を集めたのは、監督たちが一堂に会したレッドカーペット上での北野監督のちょんまげカツラをかぶるパフォーマンス。地元日刊紙の「ニース・マタン」や映画専門誌「フィルム・フランセーズ」は大きな写真付きの記事で報じた。上映翌日、日本人記者向けの会見に臨んだ北野監督は、「浅草の仲見世で買ってきた、ちゃんとしたカツラだからね。正装でなくちゃいけないって言うんで、日本人なら紋付袴にちょんまげでしょ。60年に一度のバカなことをやるチャンス。(映画祭事務局長の)ジル・ジャコブも目が点になってたよな」と狙いが見事にハマったことにまんざらでもない表情。「実はどうやろうか迷ってたら、ビム・ベンダースが『やれ!やれ!』ってけしかけてきたんだ」という秘話も披露した。
また、北野監督自身もカンヌの会場で初めて見たという、他の監督たちの作品について質問が及ぶと「オイラのはベスト5には入ってたね」と自信をのぞかせ、「ロマン・ポランスキーの映画はお笑いでいうならばベタネタで反則級のワザだね。好きだったな。ウォルター・サレスのラップも良かった」と、お気に入りのタイトルを挙げた。
演出にあたっては「3分というのは短い。悲しい映画を撮るには観客の気持ちをそこまで持っていけないし、映像美で見せるには作品の意味を語る時間が足りない。その点ではお笑いの要素が入っている方が心をつかみやすい」と短編製作に対する独自の理論を披露。会場の大ウケの反応は、その演出法がずばり的中した証拠となった。