苦しみ抜いた末の新たな一歩。「バッシング」の小林政広監督
2006年6月6日 12:00

96年に「CLOSING TIME」でデビュー後、「海賊版=BOOTLEG FILM」「歩く、人」「フリック」などを手掛けてきた小林政広監督の新作「バッシング」。イラクで起こった日本人人質事件を題材に、良くも悪くも現代日本を映し出している本作について小林監督に語ってもらった。
05年のカンヌ映画祭でコンペティション部門に出品された他、同年の東京フィルメックスではグランプリを受賞した本作。だが、製作に取りかかる前は、本作の主人公・有子のように毎日ふさぎ込んでいたという小林監督。「96年にデビューしてから、結構コンスタントに映画を作ってきたんですけど、どうにもこうにも行かなくなってしまったんですね。その間、自分の欲求が食べ物にばかり行ってしまい。糖尿病になってしまったわけです。色々なことがどうでも良くなっちゃって、酒や甘いもの、肉とかばかり口にして、野菜はあまり採らなかったんですよ(笑)」
現代日本の閉塞感を見事に描き出し「自己責任」「自殺」などのテーマが浮上してくる本作。イラクで人質となり、その後解放され、日本に帰国した主人公を待っていたのは陰湿ないじめ。「やはり、(日本は)前と比べて保守的になりましたよね。自分らの子供の頃に戻ってしまったんだなと感じました。去年の選挙の結果にも呆れ返りま したしね」と苦笑い。娘(主人公)のことで職を失った父親が自殺するシーンについても「前は自殺なんかするやつは馬鹿だと思っていたが、ここ何年かでは、毎日ふさぎ込んでいたし、僕自身が飛び降りたいと思っていたんだから」と話す小林監督。
それでも主人公は、父親の死など幾多の苦しみを乗り越えて、再びイラクに旅立つ。「何通りか考えていたんだけど、ラストシーンはやっぱり、何か辛いときがあると行くような場所にしようとは思ってましたね。あの海に帰ってくるのが一番だと思ったんです」と語り、主人公と同様、再び自分と向き合い、自分の道を歩き出した小林監督。映画「バッシング」は、小林監督にとっても、新たな代表作となった。イメージ・フォーラムにて公開中。
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