麻薬の蔓延は誰のせい?「そして、ひと粒のひかり」監督が語る
2005年10月18日 12:00
本年度のアカデミー賞主演女優賞ノミネートを筆頭に、世界各地の映画祭24部門での受賞を果たした「そして、ひと粒のひかり」。公開を前に、初長編映画ながらハードな題材をしっかりと演出してみせたジョシュア・マーストン監督が来日、インタビューに応じてくれた。
コロンビアの村で絶望的な生活を送る少女が、自らの妊娠をきっかけに街を出る決意をし、麻薬の運び屋としてニューヨークへ旅立つという刺激的な内容の本作。製作したきっかけを聞いてみると「あるレストランで、コロンビア出身の元運び屋の女性と出会ったんだ。そこで彼女から、運び屋の実態を聞いたんだけど、それが面白くてね。食い入るように聞いたよ」
本作を見ていると、貧困のために運び屋になってしまうという悪循環の構造が浮かび上がってくる。これについては「まず、誰が麻薬を買うのか、ということを考えたい。田舎では麻薬を栽培する人はいるが、買う人はいない。買う人は都会にいるんだ。そして、法律的には違法となっているが、違法だからこそ大金が絡むようになる。この問題は貧困だけでなく、麻薬を取り巻く法制度にも起因するのでは?とも思うね。僕はこの問題を考える時『麻薬を取り締まる法律がなかったら、どうなるだろう?』と考えてしまうんだ」
また、演出については「元運び屋の女性から僕が話を聞いたときの驚きを、観客にも感じて欲しかった。だから、ドキュメンタリータッチにするつもりはなかったけど、スクリーンを見ているときに、劇場で劇映画を見ているということを意識させないようにしたので、ドキュメンタリーのように感じてもらえれば、それはそれで嬉しいよ」と真摯に語ってくれた。「そして、ひと粒のひかり」は渋谷シネ・アミューズにて公開中。