市子のレビュー・感想・評価
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よってたかって虎にしたのか
まず、杉咲花さん。11月の某映画のレビューでは酷評してしまいまいしたが、監督が違うとこんないい芝居のできる役者さんだったんですね。ごめんなさい。
シチュエーションは異なるけど、ブラックラグーンの名エピソードのあのセリフを思い出しました。
「誰かが、ほんの少し優しければあの子たちは−−学校に通い、友達を作って、幸せに暮らしただろう。でも、そうはならなかった。ならなかったんだよ、ロック。だから−−この話はここでお終いなんだ」
悲しきファムファタール
時制を交錯させながら市子のバックストーリーを紐解いていく構成に引き込まれ、最後まで緊張感が途切れす面白く観ることが出来た。
物語は失踪した市子を追いかける長谷川の視点で展開されていく。市子の過去を知る関係者を訪ねながら自分の知らない彼女の秘密を知っていく中で、彼女がなぜ失踪しなければならなかったのか?その理由が徐々に判明していく…というのが大筋である。
総じてよく練られた脚本だと思うが、過去編の伏線が後半の現代編で回収されていく構成は、ドラマがシンプルな分、やや安易な答え合わせに終始してしまったかな…という印象を持った。これなら現在の時間軸でそのまま描いても良かったのではないだろうか。
尚、”ある事件”の参考人として市子を追いかける刑事が登場してくるが、これによって物語にサスペンス的な要素が加味されていくようになる。これについては上手くいっているような気がした。
聞けば本作は元々は舞台劇だったということである。現在と過去を複雑に往来する本作が舞台劇でどのように上演されたのか気になる所である。映画版を観る限りあまり舞台劇には向かない内容だと思うのだが、そのあたりはどうなっているのだろうか。舞台版は未見なのでよく分からない。
それにしても、本作は誠に強烈な快作…ならぬ”怪作”と言える。
映画を観終わって真っ先に思ったことは、これほどバケモノじみたファムファタール映画もそうそうない…ということである。それくらい市子のしたたかにして大胆不敵な行動には戦慄を覚えてしまった。
しかも、彼女は悪女と言うには余りにも悲しき運命を背負った女である。その出自を知ると同情も禁じ得なかった。
映画を観た後で知ったのだが、市子のような境遇の人間は実際に世の中には結構いるそうである。自分はこの事実を知らなかったので、本作を観て少しだけ調べてみたが、これは法制上の問題に関わってくるので中々一筋縄ではいかない難題のようである。一応、今年の4月から制度が変更されるそうだが、市子のような人間がこれ以上生まれないことを願うばかりである。
市子を演じた杉咲花の好演も素晴らしかった。基本的には”低体温”な演技を貫いているが、要所で苦しみ、悲しみ、怒りをダイレクトに表現し、その迫力には圧倒されるばかりである。そして、そんな彼女が少ないながらも劇中で笑みをこぼすシーンが幾つかある。悲壮感が漂う中、そこだけは救いだった。
一方、映画を観ていて若干分かりづらい部分があったのは残念だった。
例えば、市子の母親は水商売をしていて複数人の男が部屋に上がり込んでくる。詳しい説明がないまま入れ代わり立ち代わり登場するので、観てて少し混乱してしまった。
演出面の不満も幾つかあった。一つには、演技が過剰に映る場面が一部で見受けられたことである。どちらかというと本作の杉咲花はリアリズムを重視した演技に徹しており、それとのバランスで見るとどうしても違和感を覚えてしまう。
終盤の市子の母親の丁寧なお辞儀もその心情を察すれば理解できなくもないが、むしろ無い方が彼女のキャラクターとしては一貫しているような気がした。
終盤「ここで終わったら駄目だ」と3回もハラハラしながら観てて「良し...
杉咲花が本当にかわいい
2024年1月6日
杉咲花が主演なのと、サスペンス的なあらすじに惹かれて観に行きました。
観終わった感想としては、杉咲花可愛すぎて好き、ストーリーはもう一捻り欲しい、という感じです。
序盤で市子と月子の2つの名前を名乗っていた点と同い年の子より成長が早い点で、戸籍がない系の話かなと気づきました。
なので、終盤までは少し展開が読めてしまいました。でも、杉咲花がかわいいので気になりませんでした。
展開が読めるとはいえ、市子が苦しみながら、自分のアイデンティティを必死に守って生きているのに報われない描写には胸を締め付けられました。
そう思わせる杉咲花の演技がとても良かったです。
ただ、終盤に北が殺されたあたりで、映画の雰囲気が変わった気がします。
市子は、わざわざ身寄りのない、友人のいない、自殺願望のある同年代の女の子を探して、北と心中したように見せかけて、新しい戸籍を手に入れてました。
観ながら、しびれる〜てなりました。
『普通に生きたい』と願ってたのに、それを許してくれない、真相を知る北が邪魔になって、新しい戸籍を手に入れるついでに殺した、というところでしょうか。
結局市子は、市子として普通に生きたかったけど、また別人として隠れながら生きる道を選んだのだと思うと、どこまでも報われないと思いました。
そして長谷川は市子の過去を紐解くための駒という扱いで、あまり重要な要素ではなかったと思いました。
ラストにもあまり絡まなかったですし。
ただ、市子が市子として普通に幸せに生きることができた一面を見せる役割として必要だったんでしょう。
脚本と杉咲花の好演が光る作品
そろそろ終映してしまう思い、遅ればせながら鑑賞。
戸田彬弘監督自らが主宰する劇団の戯曲をベースとした作品。
3年間共に暮らした恋人の前から突然消える市子。市子の行方を追う中、画面では様々な時制で、彼女の持つ過去を辿り、取り巻く過酷な環境を描きながら、ストーリーは展開していく。
壮絶な境遇を生きた市子という女性を、主演の杉咲花が見事に演じ切り、その表情や話し方から、誰も掴みきれない市子という存在、その生き様を形作っていく。
重いストーリーではあるが、すべての役者がしっかり演じ、実際にある社会問題を多面的に取り上げている。
脚本とキャスティングの良さに、市子を取り巻く生活環境の演出、その空気感を肌身に感じて、2時間集中を切らすことなく観ることが出来た。
観る者にとって、取り方や感じ方が異なるという、映画として完成度が高い作品。
杉咲花の演技が◎
杉咲花は天才という名の怪物です。
戸田監督がとんでもない傑作を産んだ。
いつも仲良くさせて貰ってるので
速攻、監督に感動のLINEを送っちゃいましたよ!
知り合いの監督だからとかそんな忖度なし。
傑作が産まれた瞬間を体験した感じだった。
震えと優しさが交差するなんて感情そう無いです。
この手の映画で
“人間が怖い”はよく聞くけど
“生活そのものが怖い”んです。
その場で息を吸う事がもう…。
重いし悲しいし深いし
初心者向けじゃないから
濃いところにフラグたくさんあるし。
なのに!!
なのにあんなところで優しいシーン持ってこないで。
感情の置き場がない傑作。
そして杉咲花 さん。
天才という名の怪物です。
もう凄いとかテキストで表すの無理。
で、杉咲さんも凄いけど
凄い杉咲さんを演出した監督&演出部。
とんでもない傑作ありがとうございました。
…ラストとか超怖いやん(´;ω;`)
この物語を生きる圧巻の俳優陣
先ず映画を観てしんどくなり、前の日お酒飲み過ぎたのか思いながらなんとか堪えて最後まで観ました。
自分の感想は2回目を観た後にまとめたい。
市子完成披露上映会
杉咲花舞台挨拶からの引用を
「市子」を演じた時間は引き裂かれる様な傷みがあったと同時に自分の中の大切な記憶として何度も何度も再生したい様な多幸感に包まれた時間でもあります。
人は外側から他者を見て…
大変そうとか可哀想とか…
自分の物差しでいろんなことを思うことがあると思うんですが…
中村ゆりさん演じる市子の母が
「幸せな時もあったんやで」という台詞があるように、どんな環境にいたとしても、その人のことはその人にしか分からなくて
どんなふうに感じて
日々何を受けとめているのかは自分たちには解らないこともあって
その上で、どれだけ他者と関わっていくことができるんだろうということを突きつけられる映画になっていると思います。
個人的にはこの映画をどう受けとめるか自分たちの実生活に反映される様な気がしてますし
この話しは自分には関係ないと思っている人にこそ、この映画を観てもらいたいという気持ちがあります。
何か揺さぶられるものがあれば
この映画があったということを広めて頂ければ嬉しいです。
このインタビューに感心しました。
杉咲花、圧巻の演技
#市子
#杉咲花
#中村ゆり
#若葉竜也
#戸田彬弘監督
#映画
圧倒的にベロチュー良いなと思ってしまう下世話なわたし
「市子、大人一枚」と映画館でチケットを購入し
杉咲花さんが市子なんだろうなと映画館で鑑賞
見ている中で、昔派遣で工場勤務してた頃、失踪後偽名とわかったけど行方わからなくなった人や
借金まみれで逃げてきていつも車中泊してる方、家出少年、わけあって追われてる人、原稿を落として逃走中の作家など、私の生活の中で今までにいない人達と出会った頃を思い出しながら映画の行く末をおいました。
高校の夏に一緒にアイス食べて、別れ際あんな笑顔で手を振られたら、そりゃ好きになっちゃいますよ北くんがストーカーばりに執着するのも仕方がない気もします
本人は気がないかもしれないが、花火が好きや浴衣ええなぁなんて言われたら
叶えてあげたいと思うに決まってますやん。
普通の生活というのは言葉にすればに簡単なようで、現実なかなかの奇跡である
普通を求めた市子がようやく普通を手に入れる時やはり過去の精算が待ってます
とても残酷だとしても償えばいつかはと思うが、市子は消えた
嘘は嘘じゃないと隠せないや、この映画にさまざまな呪言のようなセリフが
あらゆる登場人物を縛っているようで言霊というのは恐ろしいなと思いました。
パンフレットにのってる市子の年表が映画にも描かれていない時系列の心情が触れられていてよかった
でもやっぱりベロチューはずるいって思っちゃいましたね
普通に生きていられれば
どっちだっけ
生きるって残酷
婚姻届とプロポーズ
一般的に1番幸せな時だろう
だけど市子にとっては
幸せが不幸せになった瞬間
現実を突きつけられた瞬間
嬉しい分悲しかった瞬間
DV、無戸籍、在宅看護、育児放棄、、、
複雑すぎる家庭環境の中で、もがいてもがいて
何度も限界がきて でもその都度助けられて
でも幸せにはなれなくて
幸せになりたいけど、なってはいけないと思ってる
嘘ばかりな事、周りに突っ込まれると否定するけど
産まれた時から嘘を重ねて生きてるから
嘘を否定する事は自分をなかったことにしてしまう
自分の中では嘘を重ね続けて生きていく事は当たり前で
その時その時の幸せな気持ちも本物で
味噌汁や花火、ショートケーキ
ごくごく当たり前な小さな幸せが
市子にとっては大きな幸せだった
他人がどんなに理解しようとしても
市子の全ては絶対に分かり合えない
だけど
確実に周りの人に必要とされてた市子
産まれた時から存在が肯定されていたら
市子はどんな子に育ったのだろう…
杉咲花ちゃん圧巻の演技
笑ってるけど深い深い闇がある
法廷遊戯の美鈴役と繋がってる感じがした
若葉竜也さんの演じる不器用だけど真っ直ぐな役が好き
中村ゆりさん、森永悠希くん良かった
中田青渚ちゃんと若葉さんが
また一緒の映画に出てるのが嬉しかった
何度も犯罪を犯していたけど
死者を直接映す描写はなくて、
被害者に気持ちを持ってくのではなくて
加害者の心情に注目させたかったのか
犯罪を肯定するわけではない
けど犯罪の背景を知ったらきっと見方が変わる
鼻歌の虹、壁と天井の虹、空に浮かぶ虹
所々に「虹」の表現があった
暗い表現とは真逆
川辺なつみ、市子、月子の願う幸せだったのか
幸せだった頃の思い出だったのか
色々考えさせられる映画だった
こんなことは架空の話であって欲しい
出演者全員の演技が素晴らしい
寄り添う気持ちを突き放される
恋人に結婚を申し込んだ次の日に彼女が失踪した。
時期を同じくしてテレビから流れてきた死体遺棄事件と関連があるのか?
ミステリー仕立てで進むのだけど、観るべきはそこじゃない。
男が恋人の過去を調べていくうちに、助けたいと差し伸べる手を過去の彼女に手を切りつけられるような話。
最後に彼女自身の独白で二人のささやかな暮しが語られると、「こんな暮らしを続けさせてあげたかったな」と、観ているこっちも思う。
そんな観客は、彼女が海辺を歌いながら歩く、冒頭で映されたのと同じラストシーンの意味を知った時、自分の手も血だらけな事を知るのです。
8年前の遺骨から死因が特定できるほど科学が進んでいるのに、離婚直後の子供も認知ができない前時代性の矛盾に憤る。
杉咲花の演技が圧巻!
新年早々ずーんと重い
名前というアイデンティティの重さ
虹は誰が見ても虹、七色があって見え方もくっきり綺麗でも、ぼんやりと滲んだように見えても虹は虹。
オープニングとエンディング、母親のハミングの虹が物語る、私は市子という名前がある。
無国籍児が色んな理由で存在することも最近ニュースで伝えられ、難病介護の苦労やDVなどの社会問題も描くことで市子というひとりの人間の人生が哀しいものに。
私達に当たり前に生まれた時から持っている名前が、自分のアイデンティティなのだろうけど、意識することはないだろう。
無国籍児として育ち学校にさえ行けない苦悩を見事に描かれ演じられている。
幼少期から彼氏との出会いまでの描写に少し頭の中が疲れるが、市子という人間が辿ってきた人生を観るものに伝えるには致し方なく、しっかりと観なくてはなりません。
私が1番苦しかったのは市子が介護してる月子を死なせたが、帰って来た母親が動揺するでもなく市子にありがとうと言って鼻歌歌いながら台所に立ったところ。
映画としても杉咲さん、恋人の若葉さんの真っ直ぐな演技力、子役や若い役者さん全てが高い演技力でこの重いテーマの映画を締まったものにしていて胸に突き刺さります。
エンドロール中の四人家族が幸せだった頃の会話が市子と母親の胸中に常にあるんだろうと思いました。
このような映画が単館でしか上映されない事が寂しいですね、シネコンも1日で一回上映でもいいので上映してほしいですね。
幸いにも私の住む街には珍しく単館系の映画を上映してくれるシネコンがあるので助かっますが。
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