市子のレビュー・感想・評価
全354件中、281~300件目を表示
存在のない人生
三年間の同棲生活を経て、義則は恋人の市子にプロポーズをする。
彼の差し出した婚姻届に思わず感極まって涙を流す市子。
しかしその翌日、市子は義則の前から姿を消した。
義則は刑事の後藤から市子という人物など存在しないと衝撃の事実を告げられる。
そして市子は山中で発見された白骨死体と何らかの関わりがあるのではないかと示唆される。
物語は市子の小学生時代に遡り、やがて様々な人間の証言を通して謎に包まれた彼女の人物像が浮かび上がってくる。
市子の境遇が明らかになるにつれて、彼女が背負わされた人生の重荷が観ているこちら側にもずしりとのしかかってくるようだ。
まず彼女が背負わされた重荷は彼女自身にはどうすることも出来ない。
複雑な事情から市子は、難病で寝たきりの妹の月子として生きることを余儀なくされる。
幼くして彼女は偽りの人生を歩まされてしまったのだ。
彼女の母親は男関係にもだらしがなく、市子は家庭でも辛い思いをさせられてきた。
そんな彼女が二つの大きな罪を犯してしまうのだが、人生を捻じ曲げられた彼女に他に選択肢はあったのだろうかと思わず考えさせられてしまった。
幸せを望むことも、夢を見ることも憚られるような壮絶な彼女の人生に胸が痛くなる。
そんな彼女を助けたいと願った男が二人いる。
まずは彼女にプロポーズをした義則、そして彼女の罪を消そうとした秀和だ。
しかし彼らの市子を助けたいという想いは本当に市子のためになっているのだろうか。
ただの彼らのエゴなのではないか。
その答えは物語が進むに連れてはっきりしてきたように思う。
彼女の罪を受け入れ、彼女を守りたいと願った秀和。
一方で義則はほとんど彼女の過去を知らずに生きてきた。
最初は秀和の想いの方が強いと思ったが、彼はずっと市子に見返りを求めていたように思う。
だから市子は共に罪を背負った彼の側を離れてしまったのだろう。
一方、義則は純粋に彼女を助けたいという想いだけで彼女の人生を追いかける旅に出る。
市子が彼の側を離れたのは、真実が明らかになることで二人の幸せが壊れることを恐れたからだろう。
市子に重荷を背負わせた母親のなつみが全ての元凶なのだが、彼女の人生もまた幸せからは程遠かったことが分かり、とてもやるせない気持ちになった。
なつみが市子を助けたいと船に乗り込む義則に頭を下げる場面がとても印象的だった。
この映画は観る者に想像する余地は与えるが、最後に明確な答えを出さない。
果たして市子と義則の人生が再び交わることはあるのだろうか。
二人が初めて出会う祭りの夜店の場面が微笑ましいだけに、悲しい余韻が残る作品だった。
面白かったです。
杉咲花の演技力なんだろうな、グイグイと引き込まれておもしろい作品でした。時系列やら、登場人物やら追うのが大変だったけど、元が舞台作品だと知って納得。この世の中、普通に生きることって大変なのに、最初っからこんなハンディ背負ってちゃ、そら正気でいれないわさ。とんでもないことが起きているのに、花ちゃんだからこそみていられたんだと思う。舞台も観てみたいなぁ。
静まり返る館内
失踪をきっかけに恋人が過去を辿りながら、市子の人生が少しづつ明かされゆく。
けっこう埋まっていた日比谷シャンテの館内はずっと静まり返り、観客誰もがスクリーンに引き込まれ集中している空気が伝わってきました。
波の音と、かすかな話し声だけが聴こえるだけのエンドロールもひとりとして席を立つ人はいませんでした。
杉咲花さんがもう市子でしかなく、なんか僕も市子を守ってあげたいという気持ちになりました。
杉咲花さんの演技だけでも☆5個をつけたい気持ちになりました。
ちょっと観客の想像に委ねすぎ
予告で感じられる重さで大体間違いないです。ずっとその重さです。ところによりきっついです。
ちょっと、
そこで三人が合流してから何があったかは明記しません。
誰が死んだかは明記しません。
このシーンで何があったかは
この事件の行く末は
この後の彼は
が多すぎて、エッッッ終わったでオイ!ってなってしまいました。
法廷遊戯でも疲れる役やってたし、花ちゃん、たまにはひたすら笑ってるだけのおバカな役とかやってや。ママ心配になるでしょ。
基本的人権の尊重……
肝となる「市子の謎」的な部分は大筋で思っていた通りの流れだったからストーリー的な意外さや大どんでん返しとかは無し。
それでも自分の中での高得点となったのは、杉咲花ちゃんの演技一択。
自分のせいではない不可抗力な理由から大変な人生を歩まされてる女の子の心の中の空虚感が何をしている時でも常に感じ取れる演技に魅了されてしまいました👀
先日の『法廷遊戯』でも凄い女優さんだな、と思ったけどここでまた評価ウナギ上り⤴️⤴️⤴️
杉咲花ちゃん、Fan!登録します💜
世の中の市子ちゃん達が幸せに過ごせますよぉに✨
よくわからなかった
時代、主役の入れ替わりの多さと、個人的な相性もあって評価ほどの感情がわかなかった。月子がラストまで写真のみでしか出てこなかったので本当にいたのかなとか散漫になった。ラストの呼吸器を外すとこと、母親のありがとうが印象に残った。他は散文的な感じで、感情が入る前に転換していった印象。ラスト、一緒に自殺?した男の子の家に漫画がたくさんあったのが少し違和感があった。あんだけ悩んでる様子で結構、気持ちに余裕あるように見えた。結果、市子は生きているのかいないのか、曖昧に感じたのと、恋人の青年が何故あそこまで執着してたのかと共感できなかった。父親も実の父親なのかよくわからなかったのと、踏切に置いてくる間に見つかりそうだな、とか山にどうやってとか、関心を引くところが省略された演出だったので、多分、相性の問題かと思った。
「夏」に込めた感情と想い出が、美しくもたまらなく切ない一作
物語はごく普通の若い男女の仲睦まじい生活から始まるものの、そこから一転して、川辺市子(杉咲花)にまつわる謎に引き込まれるまで、実にあっと言うまの展開。戸田彬弘監督の手際は実に見事です。
市子の跡を追う恋人、長谷川(若葉竜也)と刑事(宇野祥平)は、捜査の過程で彼女が二つの名前を使い分けていたことなど、幾つもの不可解な点を見出していきます。過去と現在を行き来しつつ(日付の表記の仕方が秀逸!)、川辺市子とは誰で、彼女に一体何があったのかが少しずつ明らかになってきます。
姿を消した人が実は正体不明の人物だった、と言う作品は既にいくつも登場していて、昨年公開の『ある男』(2022)もその中に含まれる訳ですが、本作で明らかになる市子の過去、そして結末に至るまでの決断の苦しさと寄る辺なさは、映像的にはむしろ淡々と、といってもいいようなあえて抑揚をつけない演出であるだけに、一層の現実感を持って観客に突き刺さってきます。
決して楽しい気分で劇場を後にできる類の作品ではないので、年末の気忙しい状況を忘れるような気楽な映画として本作を選ぶことはちょっとおすすめしづらいものがありますが、是非とも一度は観ておきたい作品です。
日本の家族制度の根幹にある重大な問題点を突いた物語でもあり、その着眼点に感心すると言うよりも、未だにその問題点が放置されていると言うことに戦慄してしまいます。
演劇『川辺市子のために』を原作とした本作は、時系列が前後する構造となっています。丁寧な演出もあって決してわかりにくくはないのですが、市子の名前に関する設定上、どうしても初見では概要の把握が難しくなりがちです。パンフレットでは時系列に整理した年譜を掲載しているので、鑑賞後の資料としておすすめです。
ごく自然に感じられるような外光の描写が実に見事で、潮の香りが漂ってくるような薄暮の海岸、むせ返るほどの湿気と熱気に取り囲まれたマンションの一室の空気感、雑草の草いきれと足裏の砂利の感覚が伝わってくる冒頭の映像など、年末のこの時期に観ても、特に本作にとって重要な意味を持つ「夏」の季節感がよく伝わってきます。
真イクラ見事(改定)
真イクラ(シャケの娘笑)である杉咲花の真面目な演技は明るい所も暗い所もいいやつなときも嫌な奴の瞬間も関西弁も、その真面目さで納得させられる。「おちょやん」も話題にならなかったかもしれないけどかなり良かった。
スジ的なことを言うと、市子には二つの悲劇が重なって覆いかぶさってきていたが、ここは一つに絞った方が良かったのではと思う。役者では、中村ゆりは年齢を隠さず下品なアピアランスなれど、船を見送る姿などロングになるとその美しさを隠せず、別の意味が出てしまう。ある意味ミスキャスト。
最近「キャラクター」とか「ある男」とか、これまで当たり前と思ってきた基本的なところが実は曖昧な場合もあるということを知らされる。日本の無戸籍者は一万人以上だという。俺が幸せに無知で過ごしてきただけか。わかっているのに簡単にはどうにもならないのかわからないことにも触れる機会が増えたなあ。
追記 殺害場面は一度も映されていない
悪魔やで…
一緒に暮らし3年、プロポーズをした翌日に失踪した女性を探す青年が、彼女を探す中でその壮絶な過去を知っていく物語。
市子の哀しき過去と向き合いながら真相に近づいていく、ミステリーチックなサスペンスドラマといった作品でしょうか。とは言え、失踪の理由は開始1分くらいで大体読めてしまうのですが…。
しかし、物語はそう単純なものばかりでなく、ただ普通の生活を送りたかった、そして何故それができなかったのか…。う~ん、辛い。
市子の過去に接点のある人物を辿って真相を追う展開は良いですね。ちょっと登場人物が多すぎる気がしなくもないが、好みの展開です。
目まぐるしく巡っていく展開に目が離せなくなるし、最後にはどんな真実が待っているのか気になって画面にくぎ付け‼…しかし、な~んとなく嫌な予感が。。あぁいう終わり方しそうな…。お!まだ続くか。あ、でもやっぱり…。う~ん個人的にこの終わり方は好きじゃないんですよね。。
終わり方こそワタクシ的にあれでしたが、終始兎に角夢中にさせられた2時間強で、哀しくもとても面白かった。
物語もそうですが、冒頭のプロポーズシーンが良いですね…。こんな可愛い奥さんと慎ましやかな幸せを感じながら…なんて妄想をしつつ、杉咲さんの演技に心をガッツリ掴まれてしまいました。
んで、印象に残ったキャラクターは彼。やってることはアレだし、思い上がりのストーカーでやべぇ奴には変わりないが、色々と協力してこの扱いって…。
好きだから当たり前なんだけど、長谷川とかには優しかったり乙女だったりする市子なだけに、この都合の良い便利屋的な扱いにちょっと理不尽さも感じてしまったりした(笑)
市子
自分は市子、ただ市子でいることが、ただ市子として普通の幸せを掴むことがなぜこんなにも難しいのか。市子。単なる名前。ただ単なる名前さえ手に入れられない人もいるのか。
杉咲花は本当にいいですね。めちゃくちゃ難しい役だと思いますが、シーンごとに抜群の表情。追い込まれた人間の複雑な表現。さすがでした。
若葉竜也もよかったですね。熱い想いにジーンとくる。
中村ゆりもなんか不思議な色っぽさもあって素敵でした。あの状況での、市子ありがとうね、の重み。
その後どうなったんだろうーとか答えを求めてしまうのは違うなーと思いつつも、気になる。ずーんとくる映画ですな。
深淵なるもの
お、これはいいぞ。
年末までの鑑賞候補作には入ってなかったのだけれど、ポスタービジュアルに惹かれて鑑賞。そしたら、予想以上に面白い! 思わぬ拾い物だった。
真夏のアスファルトの道。何故か女性の低いハミングのオープニングが印象的。
訳ありの彼女の失踪から、ちよっとしたミステリを装いながら、過去と今を行き来しながら物語が進む。まあ、普通のミステリ風に、だんだんと彼女の過去が明かされていくのだけれど、そこにとてつもない闇が帳を下ろしていた。
平板な描写の連続で、昭和のドラマを思わせる撮影スタイル。セリフも掛け合いは静かで、沈黙も多い。派手さは無いのに、何故かグイグイ来て、画面から目が離せない。
なんといっても杉咲花が、秀逸。
浮世離れした存在感が作品にぴったりマッチしていて、話の先を知りたいような知りたく無いような、不思議な感覚にとらわれる。彼女の、死んではいないけど、生きてもいないような目。単なる絶望感とも、諦めとも違う、深い沼の底のような目が良い。それを覗きたいが、近づくのが怖く思える。崖の上から真っ暗な海を覗くような感覚だろうか。
エクソシストより、よほど怖いかも。
そこそこの客足だったのだけど、エンドロールで、最後まで誰も立たなかったのが印象的。好き嫌いはありそうだけど、一見の価値あり。
3.6なかなか難役を杉咲花が良かった
戸籍問題にヤングケアラー問題にそんな状態でまともな精神状態では無くなってしまうだろう可哀想過ぎる境遇。。。幸せになりたくも求めてはいけない贖罪的な思い。。。最後はなんだか報われない感じで、救ってあげて下さい😢
傑作というよりは問題作、杉咲花に脱帽
タイトル通りです。
技術面で細かく気になる点はあれど、圧巻な作品の内容とそれを見事に演じ切った杉咲花に言葉もありません。
ラストの汗と鼻歌が示す結果と、それでも前に進む彼女の足取りはしばらく頭から離れないでしょう。
自分を生きる
闇を抱えた女性の話である。
福祉が介入しなくてはならない家庭は沢山あるが、これはとてもきつい。
自分の存在が無いことになるなんて。
ケーキ屋を友達と開きたいという話になった時、本当に自由で、自分の人生を生きられると嬉しかったのだろうな。長谷川と出会った時も、プロポーズされた瞬間も。
警察が市子に接触する場面はなかったが、時間の問題か。その後が気になる。
杉咲花ちゃん、ムコ…無辜ゲームの次は無戸籍の話か…などとつまらない事を思いつつ、難しい役どころでしたが演技が素晴らしかった。
若葉さんも、この役がよくあってて良かったと思う。
今日は「天外者」の特別上映も見てきたので、森永悠希君二本立てでした。
杉咲花さんの素のような表情が好き
切ないというよりただただ哀しい。生まれや環境は選べないし、安全圏にいる人間がこうすれば良かったとか、なぜそうしなかったのかなど、外野から口を出すのは容易い。その中で与えられている選択肢があまりにも少なくて過酷で、より現実みがあった。恋人の誠実さに救われていた市子、大雨に打たれて歓喜する市子、そして夢を語る市子の顔が美しかった。だからこそやるせない。杉咲花さんの素のような自然な表情がとても良かったです。
市子と義則の出会いのシーンが一番好きです。何かが始まる予感、互いにピタッとハマるような感覚っていいですよね。
引き込まれたが、ラストがよくわからなかった
面白いというか、不思議な魅力のある映画でした。
市子がかわいそうでもあり、怖くもあり、純粋に見えるけど壊れてる面もあって、引き込まれました。
ただ結末がよくわからない。ラストの鼻歌を歌いながら歩く市子。
市子は自殺志願者の望みを叶えて、その後戸籍を奪ったのか?
それとも3人で心中して、ラストのシーンは幸せだった過去の一場面なのか?
考察が必要な映画だと思った。
ストーリーのおどろおどろしい展開は、 舞台系の人が作った作品と知り...
ストーリーのおどろおどろしい展開は、
舞台系の人が作った作品と知り、納得
演技はみなさん良かったです
あと、
お味噌汁は朝ごはんのイメージでしたけど、
それは私だけですか?
けっこうはまりました。
2時間の作品でしたが、丁寧にストーリー展開されていて、観ご耐えありました。
杉咲さんはじめ、素敵なお芝居でした。
もっとこういった秀作を上映してくれる映画館が増えて欲しいと思いました。繰り返し観たい作品でした。
仮定法過去完了
帰宅して事の次第を悟った母の「ありがとうな…」が刺さる。
倫理観や正義感や夢や希望では解決にならず、幸福からの逃亡すら強いられ、(経済的に、とは異なる意味で)底辺という表現すら生温い境遇に生きる人がいるという現実を突き付けてくる。観ていて正気を保つのが困難な程の恐るべき作品だと思う。
全354件中、281~300件目を表示