劇場公開日 2023年12月8日

「天使と、悪魔と」市子 シューテツさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0天使と、悪魔と

2023年12月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

いやぁ~、今年も終わりかけの時期に問題作を見てしまいましたよ。
本作を見ていると、それぞれの映画にはそれぞれの目指す地平があり、それがどんどんと多岐にわたり、昨今の作品は昔の様に単純には理解や感動を見ている者に与えてくれない作品が増えてきたように感じてしまいます。
本作などはまさにそれで、確実に力作だとは思うのだけど、何か理解できないモヤモヤも残り、その為に単純に絶賛したり傑作だって言われることも拒否している様な気配も感じられました。この辺り、最近の日本映画の力作に共通している要素であり項目かも知れません。

基本的に、サスペンス&ミステリー風味の作品なので、何を言ってもネタバレに繋がってしまい感想が書き難いのですが、別にネタバレ書いても読み手には何のネタバレにもなっていない様な作りにもなっています。要するに答えを用意していない作品であるからです。
“答え”というのは“テーマ”でも“メッセージ”と置き換えて貰っても良いのですが、珍しくもテーマもメッセージもない問題作なのです。
だからと言って、決して空っぽの映画ではなく、非常に濃い密度の作品でもある訳です。なので鑑賞後モヤモヤとしてしまうのです。

モチーフ的には『ある男』に通じる作品で、物語的には主人公「市子」とは一体何者だったのか?を探す旅という部分では同様でした。
しかし過去が明らかになったとしても、結局彼女がその状況下でどのように性格形成されたのかは他の登場人物にも観客にも理解できないし、その行動について(神目線もなく)肯定も否定もせず観客に委ねられるのは、多くの観客にとってはしんどい(というより答えのない)宿題を突き出された気分になるのです。
ナポレオンのキャッチコピーが「英雄か、悪魔か」で、本作のコピーは「本当の彼女を誰も知らない」ってなっていましたが、こちらは「天使と、悪魔と」で良いのでは…

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シューテツ