フェラーリのレビュー・感想・評価
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サングラスに花束に真っ赤な車
アダム・ドライバーがとてもかっこよかった。初めて映画で見たのは「スター・ウォーズ」のカイロ・レイン役だと思うけれどその時は見て思わず笑ってしまった。そういう場面ではないのに。それから何本か見たけれど、こんなに内面と外見を見事に作って役になりきったアダム・ドライバーはとても素晴らしくていい俳優だ!と初めて今更ながら思った。
20代の息子を亡くしたら誰だって悲しいがとりわけ家族愛が強いイタリア、フェラーリの継承者としても大切だった長男への墓参りを欠かさないエンツォ、花束持って。教会のミサと同時進行で映し出されるカーレース指示はまるで映画ゴッド・ファーザーだった。
グレイヘアのオールバック、サングラス、スーツが高身長のドライバーにぴったり合っていた。自分の母親と妻ラウラ、一方で可愛い息子までいる密かな愛人リナ(「スノーデン」の彼女と同じように可愛く理性ある役!)との間で苦しみ、会社の危機を抱えつつ、自分の美学を曲げないエンツォという人間がそこにいた。
ペネロペはCHANELの映画CMではがっかりしたが、この映画では最高だった。このスペインの女優はフランスでなくイタリアにぴったりなのだ!目の下は隈、顔色悪く、髪の毛ボサボサ、言いたいことははっきりと強烈に言う。彼女もサングラスかけて、エンツォと同じように脚が開き気味の歩き方をする。イタリアによくある家族での企業展開の感じが伺われた。
ミッレ・ミリアってあんなに長い距離の公道を真夜中に出発して走るんだ!おっかない。美しい風景、トスカーナかなあ、ローマのコロッセオかなあ位しかわからなかったがとにかく凄い。どんな風に撮影したんだろうと感銘を受けた。美しかった。近辺の人達が総出で応援していた。昨年ほんの少しだけ滞在したトリノで、旧市街ど真ん中の公道を凄いスピードで走るレーシングカーを見たことを思い出した。確かにすごく興奮した。観客もみんな大興奮。でも事故は常に紙一重。レーサーはみんな、愛する人に手紙を書いたり万が一のことを仲間に頼むんだろうか。
映画の冒頭、白黒のニュース映画のような映像で若きエンツォのレーサー姿が映る。その笑顔はアダム・ドライバーだった。
おまけ
エンツォが早朝に愛人の家を出て妻のいる自分の家に戻る際、息子を起こさないよう、隣家(あったかな?)に顔見られない(または迷惑かけない)よう、エンジンかけずに静かに車を出したところに胸が痺れる程の感動を覚えた。車を愛し車を知り尽くしている男🚗
クライマックスは
どこだ? 事故の大惨事か、スタート前のマセラティとの丁々発止か、それとも虎の様な奥さんか?散漫になっていたのは否めない。でもペネロペクルス良かったなぁ、推しになっちゃいましたよ。
イタリア人と言えばカイロレンなのかな? 今回は面長に見えなかった。赤い車体が美しいね。
あくまでもエンツォの伝記映画なのだが、ミッレミリアの再現度が強すぎて引いてしまう
2024.7.5 字幕 イオンシネマ京都桂川
2023年のアメリカ&イギリス&イタリア&サウジアラビア合作の映画(130分、PG12)
原作はブローク・イェーツのノンフィクション『Enzo Ferrari: The Man, the Cars, the Races, the Machine』
実在の実業家エンツォ・フェラーリの1957年頃の激動を描いた伝記映画
監督はマイケル・マン
脚本はトロイ・ケネディ・マーティン
物語の舞台は、1955年頃のイタリアのモデナ
モータースポーツのカーメイカーのエンツォ・フェラーリ(アダム・ドライバー)は、妻ラウラ(ペネロペ・クルス)と共にフェラーリ社を経営してきたが、業績は下降傾向で資金繰りも悪化していた
エンツォはモデナ郊外に愛人のリナ・ラルディ(シャイリーン・ウッドリー)を囲っていて、彼女との間にピエロ(ジュゼッペ・フェスティネーゼ)という息子がいた
ラウラとの間にもアルフレッド、ディーノ(ベネデット・ベネデッティーニ、幼少期:ガブリエル・ノト&エドゥアルド・ブラルディ)がいたが、共に若い頃に亡くなっていた
ある日、フランスからジャン・ベーラ(デレク・ヒル)というドライバーがやってきて、ライバル会社のマセラティと契約を結ぶことになった
彼は新車で最速タイムを叩き出し、一躍時の人となった
業績悪化が叫ばれる中、フェラーリはミッレミリアと呼ばれるイタリア北部のブレシアからローマを往復する1000マイルを走破するレースに参加することを決意する
このレースで優勝すれば多大な宣伝効果になることが見込まれ、それに全てを賭けようと考えるのである
だが、その一方で、ピエロの認知問題が放置できなくなり、銀行家のうっかり発言でラウラに知られてしまう
ラウラは権利の譲渡と引き換えに金を要求するものの、小切手を現金化すれば破産手続きに入られてしまう
そこでエンツォは条件を提示し、レースで勝つために全力を投入することになったのである
映画は、ミッレミリアについて知っているかどうかで印象が変わるのだが、その再現度は凄まじいの一言である
レースはイタリア車同士が争い、結果としてフェラーリがワンツースリーを独占してしまうので、誰がどうなったかは分かりにくい
スペインから自分を売り込んだデ・ポルターゴ(ガブリエル・レオーネ)と、彼のナビゲーターとして同乗したエドマンド・ガンナー・ネルソン(エリック・ヒューゲン)が乗った車が大事故を起こし、観覧者9人(うち5人が子ども)が犠牲になってしまう
レースはこの事故を受けて開催中止となり、デ・ポルターゴの体は車体の下敷きになったあと、真っ二つになっていたそうだ
このあたりが結構リアルに描かれているので、心臓の弱い人は注意されたほうが良いのではないだろうか
映画は、モータースポーツの華々しい開発競争とかレースを描いているのではなく、この時期にまとめて起こったエンツォの事情を余すところなく再現している
それゆえにヒューマンドラマの側面が強く、伝記映画として見る分には良いが、モータースポーツ映画として見ていると結構しんどい内容になっている
ちなみに、ピエロは無事に認知され、フェラーリ姓を名乗り、今では副社長クラスの幹部に名乗りをあげているので、エンツォの母アダルジーザ(ダニエラ・ピッペーノ)の見立ては正しかったのだろう
いずれにせよ、個人的にはミッレミリアの詳細は知らなかったので、事故のシーンがリアルすぎて引いてしまった
コントロールを失った車がどうなるのかという怖さと、避けようがない瞬間的な出来事なので、観戦する方も命懸けなんだなと思う
ドライバーは死を覚悟して乗るが、観客はそうではない、という言葉が印象的で、その他にもエンツォの経営哲学や人生訓がさらっと登場するので、全てのセリフに重みがある
成功者としての哲学は素晴らしいのだが、戦時中のいろんなことがあったとは言え、下半身をちゃんとコントロールしないと大変なことになるのだなあと感じた
モナコグランプリのレースを思い出させる映画内のエキサイティングなレースが見もの
モルディブに行く飛行機の中で鑑賞。
以前、『ランボルギーニ』を見て非常に面白かったことから、今回も期待して試聴。
ランボルギーニでは、ランボルギーニが立ち上がっていく様子から描かれていたのに対して、フェラーリは既にブランドの地位を確立しており、フェラーリそのものというよりも、パートナーや子供との関係性など、エンツォ・フェラーリの波瀾万丈な人生が多く描かれていた。
レースのシーンは圧巻で、本気で走る男たちの熱い想いが伝わってよかった。
アダム&ペネロペのベストアクト
アダム・ドライバーの、
芝居の説得力に圧倒される。
指先から手首の角度、
全身の所作、
エンツォ・フェラーリの、
経営のセンスやバランス、
リテラシーを文字通りなぎ倒していく、
スピードとパワーは、
暴れ馬フェラーリそのもののアグレッシブさを体現していた。
カイロ・レンや、
マリッジストーリー等で、
爆発的な怒りの芝居は見てきたが、
少し表の出力は落として、
内に秘めるとでもいえばいいのか。
ペネロペ・クルスも、
影響されたのか化学変化か、
ポテンシャルは高いのは、
証明済だが、
ベストアクトの作品のひとつになるだろう。
エンツォのように現場を仕切る、
マイケル・マンのスタッフからの評判はよく聞くが、、、、
彼の技術のひとつでもあるのだろう。
『フォードVSフェラーリ』で、
名車のスピードに頼らない、
魅せ方について書いたが、
本作はスピードで勝負する。
愛息と名車ディーノ、宿命。
欧州オールドマネーの退屈と熱狂
エンツォ・フェラーリは高級スポーツカー事業を一代で創始して世界屈指のブランドに育て上げたが、いま初めて人生の挫折を味わいつつあった。ライバル社マセラティの猛追を受けて主要カーレースの首位から脱落、会社は経営難に陥り、妻との関係にも隙間風が吹き始めていた。フェラーリは全てを逆転させるべく世界最大の一般公道レースミッレミリアへの出場を決意、新型車の開発に猛進するが、それは新たな悲劇につながる道でもあった。
ヨーロッパの古い富裕層の生活にひそむ退屈さと熱狂を、薄暗がりに長い残光が伸びているような照明が巧みに縁取っている。この時代に自動車は電子機器などいっさい持たず、すべては鋼鉄とオイルと皮の塊にすぎなかった。それを両の手と足でダイレクトにあやつる快感は、この映画の主題のひとつ。そしてそれがもたらすスポーツカーというものの「走る棺」としての性格も、終盤に息を呑むような鮮烈さで描かれる。
イタリア語訛りの英語をしゃべる横柄でチャーミングで奔放な富豪の姿を、アダム・ドライバーは見事に演じた。そして妻役のペネロペ・クルスは、「ありあまる富と安定、しかし生活から抜き去りがたい不幸と凋落の影」というオールドマネーの本質を優雅に形にしてみせた。
マイケル・マンはハリウッドを長年生きのびてきただけあってさすがの手練れで、教会のミサと試走コースのクロスカッティングを筆頭に、編集リズムがいちどもスピードを失わない。大したものだと思う。
ただ脚本面では、エンツォや登場人物たちの生活にいまひとつ決着のつかないところが残り、傑作にはなりそこねている。
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