「切なくも共感を覚える恋の始まりと終わりに、成長の記録」プリシラ とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)
切なくも共感を覚える恋の始まりと終わりに、成長の記録
誰もが羨む存在として、世界のスター=エルヴィスと過ごした歳月(激動の十代)の中で少女は大人になり、自ら去ることを決断する…運命的な出逢いから別れまで。相手のことが好きだからこそ、このまま一緒にいても相手をダメにしてしまって幸せになれないと。"大佐"に飼われているわけだから、彼女が"E"のもとを去ってしまえば、彼は余計に孤立してしまう気はしたけど、それは結果論というか仕方のないことなのだろうか。何が正しかったのかなんて誰にもわからない。最後はすっごく切ないんだけど共感性の高い、人生に付きものの感情に満たされる…。
"その時"は俺が決める。君は先に上の階へ行って、俺は後から行く。薬を飲むんだ。柄物は却下。命令口調の昔ながらの男性像に、信仰心や哲学的な思考。取り巻き友達"仲間"たちと過ごす様子が、ギャング映画みたいだった。世間・周囲の雑音や喧騒に妨げられず・踊らされず、自分を見失わないこと。タイトルロールを熱演するケイリー・スピーニーの素晴らしさと、エルヴィス役として今日の中でルックス含めバチボコに完璧なキャスティングなジェイコブ・エロルディ。
時間経過・モンタージュに差異を伴う反復。ベガス・モンタージュで遊びを知って、一気に大人になった感じがした。からの、エルヴィス好みの黒髪&濃いアイメイクをするシーンでは、『マリー・アントワネット』でThe Strokesストロークスで流れたように、彼女だからこそできる時代設定を無視した選曲もあって、大事なシーンなのだと印象に残る。メディアが書き立てる噂にヤキモキ待たされて、けど自分に対しては同じように接してくれなくて、つらく苦しい思いをしてばかりの月日に葛藤。そして、作品全体の象徴カットかは分からないけど作品後半、家の窓から外を眺めている彼女のカットが、作品のテーマを表しているようでもあった。
ソフィア・コッポラと彼女の作品によく出てくる寝起きなどのひとりのベッド(『ロスト・イン・トランスレーション』『マリー・アントワネット』)=無防備な時間、そしてお金に不自由しない人たちの流れゆく悠久の時、暇・自由な時間に、何よりいつだって根幹を漂う孤独。それでも、これだけ彼女(の作品)がこれだけ支持されるのは、そこにしっかりと感情がある、描かれているから。本作でもそうした繊細なタッチで、彼女がそのフィルモグラフィーで一貫して描いてきたものは確かにあって、まさしく成長の記録であり、別れを選ぶこと。
Don't you worry.
勝手に関連作品『ロスト・イン・トランスレーション』『マリー・アントワネット』『スペンサー』