「設定が突飛すぎる」DOGMAN ドッグマン デビルチックさんの映画レビュー(感想・評価)
設定が突飛すぎる
設定が突飛すぎて感情移入できませんでした。そこが僕には雑に思えました。
例えば主人公・ダグラスの父は闘犬を仕事にしており、常に飢えさせておきたいため、犬に餌を与えると激怒します。その怒り方は尋常ではなく、とんでもない暴力を振るいます。ある日、ダグラスが犬に餌を与えていることを知ると、父はダグラスを檻に入れてしまいます。以来、ダグラスは犬とともに生活をすることになります。
この設定なんてまさに突飛すぎて感情移入できません。
また、ダグラスは「富の再分配」と称し、犬たちを富豪の家に侵入させて盗みを働きます。そのやり方は、たとえ本当に富を再分配していたとしても、到底、共感できるものではありません。しかもダグラスはお金に興味はないと言いつつも、富豪から盗んだ装飾品を自ら着用して舞台に出演し、金庫に保管しています。これって富の再分配と言えるでしょうか。
みたいな感じで、共感したり感情移入したりする要素がなく、突飛すぎるので、子どもが何の裏づけも検証もなく思いつくままアイディアを出して行って、それを繋げて映画にしたような印象を持ちました。
ただしこの作品の通底には常にキリスト教があり、それ故僕には理解ができなかったという面はあると思います。キリスト教や聖書の知識があればもっと違った印象を持ったのかもしれません。おそらくキリスト教社会で生きてきた人には理解できるのでしょう。でも僕には分かりませんでした。
じゃあこの作品が面白くなかったのかというと、そういうわけでもありません。ダグラスは自分の理解や常識の外にあるキャラクターなので、そういう人物が何を考え、どういう人生を送ってきたのかということには興味があったりします。だからこの作品が、ダグラスへのインタビューによって構成されているのは秀逸だと思います。ダグラスには共感できないけど、精神科医のデッカーには共感できるんですよね。