愛を耕すひとのレビュー・感想・評価
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人間感情揺さぶる壮大なドラマ。
Madsが渋い!
人の勧善懲悪感情を手玉に取るような良く出来た脚本ではあるが、Madsがあってこそ輝く映像の美学。荒野を舞台に、愛と権力、人間の尊厳を語る、歴史観あるストーリー。
自己の利害と欲求を満たす事のみに生きる哀れな領主、フレデリックの憎たらしさ、アン·バーバラの毅然とした素の美しさは、本当に良く描かれている。
“Promised Land”という原題が、“愛を耕すひと”とされた事にしかと頷くラストシーンであった。
先ずは良かったー✨です😊
雰囲気はある映画
ラストシーンの切なさに胸が押し潰されそう
ラストシーンの解釈。僕はケーレン大尉の心の中で生き続けるアン・バーバラを連れて(アン・バーバラの姿は幻であり、ケーレン大尉の心象風景)、彼女の行きたがっていた海の見える街へ移ったと確信し、その切なさに涙が溢れてしまいました。何十年もかけ命も懸けて(時には良心をも棄て)掴みとった爵位、名声、安住の生活、それらのすべてを捨ててアン・バーバラの面影だけを胸に海の見える街へと一人で向かったと思ったのです。しかし、映画鑑賞から一夜明け、彼女の短髪を考えると男爵の地位を得たケーレンの嘆願が通り恩赦(釈放、あるいは奪還)された可能性も否定できないという考えも(だとハッピーエンドですね)。
ケーレンとほぼ同世代にあり、孤独を感じることも多い日々を過ごすおじさんとしてはこれ以上身に堪える映画はなかなかないです。
New York TimesやVulture の受け売りをそのままに「驚くほどに美しく、カタルシスに満ちた、感動的な叙事詩」でした。
邦題ダサいけど
2025年劇場鑑賞51本目。
エンドロール後映像無し。
邦題から感じるのんびり感は全くなく、農業的な困難(自然の厳しさ)と戦う映画かと思ったら国の領地を自分の領地だとゴネて通そうとする貴族との血みどろの戦いでした。原題は私生児という意味らしいです。それはそれで生々しいけど・・・。
国王からの依頼でやっている事業なのに、どうしてあの貴族を訴え出ないのか(こいつが裁判官だとしても本国にそれも含めて訴えればいいのに)ずっとモヤついていましたし、最後も嫌なやつすぎてあれでもまだスカッとしきれなかったです。
最後の最後はどうやってああできたのかいまいち分かりませんでした。史実なのですが、ネットでも全く調べられなかったのでどこまでがフィクションかは分かりませんでした。
色々書きましたが、どうやって困難を解決していくか、というのは面白かったです。
今や珍しくなった正統的な文芸映画。
ある騎士道の心揺さぶる物語
まず邦題に対して否定的な意見が多いが、自分としては、この「愛を耕すひと」という比喩を用いたのは「むべなるかな」という心境です。18世紀のデンマーク近世の時代、開拓者としての成功を目論見、旗揚げしたのだが、冷酷無慈悲な有力者の執拗な妨害を受けて挫けないどころか、果敢に対抗していく。成り行きで、孤児と未亡人と家族同様の愛を育み、結末から察するに、おそらくだが、捕らわれた愛する人のために国王から与えられる称号等と引き換えに釈放してもらったのではないだろうか。つまり、開拓者としての悲願を達成したのだが、最後は苦渋の決断として、実利を捨てて愛を選んだ。テーブルで一人寂しく食事するケーレン大尉演ずるマッツ・ミケルセンの悲し気な表情からそのように感じ取った。そうやって長い半生を畑を耕すように愛の芽を育んできたという意味合いで、配給会社は邦題のタイトルを付けたのだと思う。寡黙で信念を突き通し、国王に忠実であり、弱者に優しいケーレン大尉は、武士道に通じる騎士道としての生き様ではないか。
貧しさと権力による抑圧に耐えながら土地開拓を試みる話
今ほど人権が尊重されていない時代に開拓が難しいとされる土地の開拓を試みる話です。
立場の上下が非常にはっきりとした時代に領主から執拗に嫌がらせを受けながらも懸命に開拓を試みる主人公
軍人あがりでキツい性格の主人公が開拓にあたり仲間を増やしていきますが責任者としての辛い判断を強いられる場面が度々起こります。
いくつもの辛い場面を乗り越えた末に仲間にきつかった彼が「耕されて」自分の本当に欲していたものに気付きはじめます。
畑が大きな実りを迎えた頃に本当に欲したのは地位や名声ではなくかけがえのない物だった事に気付きます。
邦題の「愛を耕すもの」というのは畑を耕す過程で主人公に人としての実りを迎えさせた。
彼に本当に必要だった実りは地位や名声、作物等ではなく愛という実りだったという事かな、と思います。
辛い描写が多いので見終えた後にハッピーな気持ちになれているかは解りませんが続きが気になる面白い映画でした。
昔はこういう時代があった、こういった事が当たり前の様にあったという学びがある映画だなぁと思うので豊かな時代のありがたさが解る映画だと思います。
重かった…
同日公開のセプテンバーとどちらを観ようかと悩んだ結果、マッツ様を拝見したく、こちらにしたしだい。
ストーリーはセプテンバーの方か面白そうだけど、マッツ様の魅了が勝った‼️
いつものようにネットでチケット購入
いつもの席ゲット
朝イチ8:45からだけど、近場の映画館だから
ギリギリの8:30に家を出た。
300メートルほど原付で移動し、財布を持ってない事に気がついた
このところ、財布なしで痛い目にあっているのに、全く学習していない…
8:50に到着
30人程の入り。そこそこ入っている印象
同年代の女性多し。
途中、涙する場面も。
あーハンカチも忘れてる‼️
それほど泣く場面は多くはないが
ハンカチは必要レベル
内容は案外重くて、笑う場面は一切ないけれど良い作品でした
デンマーク、全く場所も分からないし
歴史も知らない
帰って少し調べたけど、幸福度が高い国なんですね
邦題から雨にも負けず風にも負けずなまったり開拓モノだと一瞬でも思っ...
ツボすぎて非の打ち所がない
久しぶりに芯から魂を揺さぶれた。これぞ映画館で観るべき映画。
スケール、時代背景、登場人物、テーマ、演出‥、全てがツボすぎて言葉にならない。
重いテーマながら飽きることなく、エンタメ要素も十分。監督が「ロイヤルアフェア愛と欲望の王宮」と同じと知って納得。
登場人物が善も悪も魅力的。
特に女性たち、なんと強くて気高いことか。自由に人生を選べない時代の生き方に圧倒された。
復讐シーンはもう一度観たくなるマイベスト。
そしてマッツ・ミケルセン、文句なし。上品な佇まい、言葉少なに表情で語る演技はまさに北欧の至宝。あの時代の衣装(ボウタイブラウスとか)がよく似合う。
上映前に流れる似たような邦画の予告が薄っぺらく感じる。邦画ファンの方、すみません。
庶子と愛
デンマーク語の原題“Bastarden”は庶子という意味。主人公は貴族と使用人のもとに生まれ、父親にも認知されず、多くは語らないが自らの出自を気にしており、貴族の称号を得るために荒地の開拓にすさまじいエネルギーをかけたり、たびたび国王の権威を正統性として強調し、身分という正統性に強いこだわりを見せる。
庶子の平民という軍人としても大尉がやっとで社会から認められにくい主人公と貴族社会からほとんど開拓不能と匙を投げられている過酷な自然環境の荒地、そして上級貴族の嫡子という出自の正統性だけで領地を世襲して暴君として振る舞う主人公の力を削ごうとあらゆる残忍な手を使う領主。これらのコントラストが、過酷な環境で同じように放浪してきた人々と協力して荒地を開拓しようとする主人公たちの物語を際ただせている。
主人公は、身分という社会的正統性によって認められることを行動のエネルギーとしているが、彼は出自から家族との愛情のようなものをおそらく知らないのかもしれない。故に邦題の「愛を耕すひと」というのは、最後まで視聴すると中々気の利いたタイトルだと思った。
ヨーロッパの映画としては、盛り上がる構成のエンタメ色もけっこう強い映画なのだが、ハリウッドや邦画の大作にありがちなセリフで説明してしまうのではなく、微妙な仕草でシナリオが表現されているのは、いい意味でヨーロッパ映画らしいと思った。
むしろ「人の無情さ」が前に出た映画
帰って来てからもずっと考えていて、何度かこのレビューも書き直している。
原題の「Bastarden」は訳すと「庶子」いわゆる私生児ということらしい。
なるほど、主人公ケーレンは私生児だし、アン・バーバラは領主に暴行されて逃亡中、アンマイ・ムスは親も分からず邪魔モノ扱いされている。
どこか似通った存在で、世の中に否定された人々が、居場所を求めて肩を寄せあって必死に生きていく姿を描いた作品。
荒涼とした大地にまさにへばり付く様にして、「新たな繁栄」の萌芽を求める主人公ケーレン。
それを良く思わない領主からの嫌がらせにも屈しない彼の強い信念と、それに関わった人たちとのドラマ。
物語としては非常にシンプルで分かりやすい。
寒々しい曇天の荒野の味わいもいい。
マッツ・ミケルセンの抑制された演技も決して悪くない。
ただなぁ。
すごく雑にまとめると「最後まで悲しい昔話」。
私がこの時代の彼らの習俗や価値観、メンタリティをよく知らないってのはある。敵役の(デ)シンケルが相対的にものすごい悪役だから、他が目立たないってこともあるんだけど、やっぱり登場人物がみんな、良くも悪くも「身勝手」に感じられてしょうがなかった。
タイトル「愛を耕すひと」ってあるけど、「荒れ地を耕すことと上手くかけてみましたけど」みたいな、浅薄な感じが強い。ホントに愛、耕してますか?これ。
最後にはケーレンはあれほど求めた貴族の位も捨て、愛した女性を取り戻して世を捨てる…というのも、物語全体の色合いと違和感がある。
私は、この物語の中ではずっと、主人公でさえも「その瞬間の実利」のために他人を使っている様にさえ見えた。
解決もいわば「暴力」に依存する部分も多くて、もちろん時代を考えれば否定できないし、映画的なカタルシスもあるが、結果として人と人との繋がりや愛情というより、「人の無情さ」が際立つ映画に見えてしまった。
むしろ「『愛』って、なに?」という作品として私は受け止めたんだが、どーだろう。
孤独を抱えてるひと必見!私的本年度ベスト1!(多分)
前々からチラシで気にはなってた作品ですが、まさかこんなに内容のある映画だったとは!
はっきり言って想像以上の作品でした。
主演マッツ・ミケルセン。この人の演技が本当に素晴らしい。セリフではなく瞳で演技をするといった感じで、寡黙な男なのにどういう男なのかすごく伝わってくる。ちなみに「007カジノ・ロワイヤル」(06)の悪役でブレイクしたそうなのですが、私の記憶にはなかったです(^_^;)
監督ニコライ・アーセル。作品を見るのは初めてでしたが、この作品を見て他の作品にも興味が沸きました。
デンマークの原題はBastardenで私生児を意味し、主人公のルドヴィ・ケーレンが地主とその使用人との間に生まれた子供であることに由来しているそうです。
日本の邦題「愛を耕すひと」はなんだか、ちょっと違うような気がしました。
そんな甘っちょろいタイトルではだめだと思います(笑)
壮大な一大叙事詩なんですから。
ストーリーは18世紀のデンマーク、退役軍人であるケーレン大尉は貴族の称号を懸けて不毛の地の開墾に取り組む。それを知った地元の有力者シンケルは自分のものとしている領土が開墾され自らの力が衰退することを恐れ、あの手この手でケーレンを妨害し追い払おうとする。ケーレン大尉のもとにはシンケルのもとから逃げ出した使用人アン・バーバラとその夫が開墾を手伝っていたのだが、ある時夫はシンケルに捕らえられケーレン大尉の前で熱湯をかけられ殺されてしまう。。。
アン・バーバラ夫人、そしてケーレン大尉の家に盗みに入るが捕らえられたタターラ人少女アンマイ・ムスとの3人での奇妙な共同生活が始まる。それはつかの間の幸せな時間でもあった。厳しい自然と闘いながらついにジャガイモの収穫に成功し、入植者たちがやってくるのだが、シンケルは囚人たちを利用して彼らを襲撃させ、二人の入植者の命まで奪ってしまう。
怒りに火がついたケーレン大尉は軍隊経験のある入植者とともに、先手を打って囚人たちが潜む場所を襲撃することを提案するが、交換条件として不吉だという理由でタターラ人少女アンマイ・ムスを追放するよう言われ、ケーレン大尉はやむなく従ってしまうのだった。。。
そして、囚人たちの居場所をシンケルの婚約者エレルから聞かされたケーレン大尉は軍人あがりの入植者たちと共に囚人たちを襲撃し皆殺しにしてしまうが、シンケルの手下に見られてしまう。
このことで一気に立場が悪くなったケーレン大尉はついにシンケルに捕らえられ、殺されそうになるのだが…。
ここからのエレルとアン・バーバラ夫人のタッグを組んだ女性たちの活躍にカタルシスを感じます。しかし、当然のことながらアン・バーバラは捕らえられてしまう。。。
そして入植者たちは去り、再び一人になったケーレン大尉は自らの過ちに気づきアンマイ・ムスを迎えにいく。
月日は流れ貴族の称号を手に入れたケーレン大尉の助命嘆願書にもかかわらずアン・バーバラは奴隷収容所への移送が決まる。
娘同然のアンマイ・ムスの手に入れた幸せを見届け温かく送り出し、ひとりになったケーレン大尉はひとつの決心をする。それは苦労して手に入れた貴族の称号を捨ててまでもやりとげねばならない男の決断であった。。。
もっと静かな映画かなと鑑賞する前は思っていたのですが、大河ドラマのような波乱万丈なケーレン大尉の物語で良い意味で大きく裏切られました。
本当に大切なものとは何か、大自然の中でケーレン大尉の権力に決して屈しない姿と変化していく心情に共感し深く胸打たれました。ラストシーンは敢えて具体的に描写せず、結果と希望を感じさせるショットで終わったのが良かったです。久々に映画らしい映画を見たなあと思いました。個人的に2月にして本年度ナンバー1作品ではないかと思えるほど超お薦め作品です。
権力に屈しない
愛を耕すひとというよりは
18世紀デンマーク開拓史で実在した退役軍人の活躍を描いた歴史ドラマ。
物語は主人公ケーレンの幾つかの闘いを描いている。
荒地を支配下に置きたい残虐地方領主との血みどろの闘い。荒地開墾による自然との闘い。当時の封建社会の身分・出自や偏見との闘い。家族を守る闘い。錦の御旗だけで有力な後ろ盾も無い不器用なケーレンは、いずれにもかなり苦戦するのだ。
これらの闘いがまさに怒涛のように主人公を襲い、127分尺が長く感じた程、各々の闘いが確り描かれ、お腹いっぱいになった。
ケーレンは、最初は出自を覆す為に野心に燃え、気位貴族だったが、困難に直面する度に、最初は距離を置いていた未亡人と親から見捨てられた少女とも、家族にも似た関係へ変化していく。特に少女の健気さは観る者をホッとさせる。
鑑賞後感想は、正直言うとちょっとひんやりとしている。本作は一流の歴史ドラマだが、当時の封建社会の厳しさと残虐領主のせいで、現代人目線からは救いの無い展開が、映画のエンタメ性を下げていると感じた。邦題の愛を耕すひと、というホワッとしたタイトルより、原題Bastardenの殺伐感の方が腑に落ちるかもしれない。
この世的な栄達ばかりを求めていた男が、模擬家族と触れあうなかで心の潤いを取り戻し、そうではない人生の価値に気づく話なのです。
マッツ・ミケルセンが母国デンマーク開拓史の英雄を演じた歴史ドラマ。デンマークの作家イダ・ジェッセンが史実に基づいて執筆した小説を原作に、「ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮」でもミケルセンとタッグを組んだニコライ・アーセル監督がメガホンをとり、ミケルセンとは長い付き合いの監督で、風変わりな物語が得意のアナス・トマス・イェンセンが脚本に参加しています。そのためか、本作も一筋縄ではいかない仕上がりとなっています。デンマークのアカデミー賞たるロバート賞で作品賞、主演男優賞など9部門を受賞しました。
●ストーリー
1755年デンマーク。貧窮にあえぐ退役軍人ルドヴィ・ケーレン大尉(マッツ・ミケルセン)は、ユトランド半島の荒野の開拓に名乗りをあげます。見返りとして、貴族の称号の特権を宮廷に要求するつもりでした。
その土地は全くの不毛の大地。草木も乏しく、わずかな下草は土ごと凍りついています。暖かくなればマシになるかと思われましたが、大雨が虚しく地面を荒らし、とても肥沃な改良は望めそうにないのです。
そんな不毛な地を望むなど無謀にもほどがあると他の貴族たちは半ば呆れ、半ば見放していました。
それでもついに努力が実ったのか、土壌に改善の兆しがみられます。そこに牧師アントン(グスタフ・リン)の紹介で、良い人材がいるとして紹介されたのが、小作農民のヨハネス・エリクセンとその妻アン・バーバラ(アマンダ・コリン)でした。この若夫婦はワケあって以前の雇用主から逃げ、隠れていたのです。
ある夜中、アンマイ・ムス(メリナ・ハグバーグ)という少女が盗みに入ります。少数民族ロマ(蔑称タタール人)の出自の子のようです。どうやら近くにロマのキャンプがあるようでした。
そんな中、近くのハルド荘園の地方判事であり、このケーレンのいる荒野の所有権を独占しようとしている地主であるフレデリック・デ・シンケル(シモン・ベンネビヤーグ)が、ケーレンの耕作の話を聞きつけます。ケーレンが成功する保証は全くないとしても、自分のあずかり知らぬところでそんなことを勝手にされるのことに、腹の虫が収まらなかったのです。彼はサイコパスのような冷血漢で手段を選ばない人間でした。そしてケーレンを妨害するために嫌がらせを行い、それは非道な暴力にまで発展していきます。
ケーレンは自然の脅威とデ・シンケルの非道な仕打ちに抗いながら、シンケルに夫を殺されたアン・バーバラとケーレンの元に身を寄せてきた少女アンマイとの共同生活によって、まるで家族同然のような生活を過ごすことになります。それはケーレンの頑なに閉ざした心に変化が芽生えてゆくことに…。最後にそれぞれが見えた希望とは?
●解説
『愛を耕すひと』の英題は「The Promised Land」で、オリジナルのデンマーク語のタイトルは「Bastarden」です。これは「私生児」を意味しており、主人公のルドヴィ・ケーレンが地主とその女中の間に生まれた私生児であったことに由来しています。
彼が貴族の身分に執着したのも、自らの出生が原因でした。なので損得抜きにして、がむしゃらに誰もが不可能と思っていた荒野の開拓に取り組んだのでした。
ケーレンは、そんな過酷なことに自分を追い詰めていく無感情で、孤独なストイックに徹した人物でした。
そんな彼が、アンマイという差別された民族の少女を囲い込み、未亡人となったアン・バーバラと関係を持ってしまう展開は、貴族になるという目標とは真逆の選択をしてしまうのです。貴族になりたいのなら、ケーレンに恋する、シンケル邸に身を寄せる令嬢エレル(クリスティン・クヤトゥ・ソープ)を妻に迎えた方が有利だったでしょう。
けれども、あの開拓の人生の中で、ケーレンは最終的にはそこに価値を感じなくなっていきます。本当に自分がなりたかったのは貴族ではないということ。出生のコンプレックスから、この世的な栄達ばかりを求めていた男が、模擬家族と触れあうなかで心の潤いを取り戻し、そうではない人生の価値に気づく話なのです。出自や身分を超えて慈愛を抱いていく展開が面白いところ。
荒野を覆いつくす冷たい氷がやがて溶けていくかのような、繊細なニュアンスで内面の変化を伝えるミケルセンの演技はさすがです。言葉以上に多くを物語る豊かな表情ひとつひとつに誰もが息をのみ魅了されることでしょう。
●感想
後半はさらなる残酷な試練が降りかかり、過ちを犯したケーレンは失意のどん底に突き落とされていきます。登場人物の狂気や怨念が、血生臭い殺りくと復讐を招き寄せるストーリー展開には愕然としました。甘さや感傷は一切ありません。ゆえに、最後のかすかな希望に胸を打たれたのです。
血塗られた開拓史
人並みで十分に満ち足りている
孤独な王様
全73件中、41~60件目を表示