愛を耕すひとのレビュー・感想・評価
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感動的な力作だが、見ていて余りにも辛い
ミケルセン主役のデンマーク映画は「ロイヤル・アフェア」以来だが、この映画は前作よりも泥臭く、血生臭い。過酷な自然と闘って開拓してきたのがデンマークの歴史なのだと遠い我らにも痛いほど伝わる。力強い骨太なストーリーだが、その運命は見ていて余りにも辛い。ただ、実際の歴史にもこういうことはままあったのだろうなと思い、しっかり見なければと、見る側にも気合が入った。それにしても、タタール人はあの時代、デンマークにもいたのですかね。
横暴な領主は、なぜ、ただの退役軍人を苛め抜いたのだろう?
18世紀の中頃、退役軍人のための救護院で食いつめていたルドヴィ・ケーレン元大尉は、耕作不能であるとされていた荒地(ヒース)の開墾をデンマーク王室の行政官に願い出る。開墾ができた暁には、貴族に叙せられることを条件として。荒地の開墾が王の望みでもあったことから、異例なことに許可が下りる。
開墾を志した王の土地に対して、近くの荘園領主フレデリック・デ・シンケルは領有権を主張し、ケーレンの邪魔をし抜く。なぜあれほどまでに、虐めたのだろうか?
ケーレンが、横暴な貴族の落としだねであったことが大きかったのではなかろうか?この映画のデンマーク語の原題は、「出自のはっきりしない者」。シンケルは、顔を見ただけで、それが判ったと言っていた。しかし、シンケルが、食料の足りない開墾者たちに、クリスマスのごちそうの残りを持ち込んだり(ケーレンは、むろん拒んだが)、彼としては異例この上ないことに、取引を申し出たりしたのには(入植が成功した時には、彼に有利になる条件をつけてだが)、他にも、二つの理由があった。
一つは、ケーレンがジャガイモの栽培をしようとしたことだろう。ジャガイモは欧州の救いの神だった。最初に、スペインに入った年代こそ、はっきりしないが、その後は戦争のたびに拡がっていった。フランスには16世紀末に、ドイツでは18世紀初頭に重要な作物になり、デンマークの隣国スウェーデンには18世紀の中盤には持ち込まれている。痩せた土壌と厳しい気候でも収穫が可能なジャガイモは、このヒースにこそ格好の作物であり、偏ってはいるが、ある種の感性を持つシンケルには、それがわかっただろう。
二つめは、やはり女性のことか。一人は、シンケルの従姉妹で、ノルウェーから連れてこられたエレル、もう一人は、かつてシンケルの使用人であったアン・バーバラ。あとは、見てのお楽しみ。
一つ不思議だったこと、タタール人、とりわけアンマイ・ムスと呼ばれる少女が大きな役割を果たすが、タタール人は普通トルコあたりから流れてきた人を指す。アンマイ・ムスは、南から来たと言われ、肌の色も浅黒く、どう見ても(インドから流れてきた)ロマだった。
彼は幸せだったのか
でも僕が欲しかったのは君だけなんだ
いつもはあの女優さんが
一大叙事詩
「007/カジノ・ロワイヤル」(06)で強敵ル・シッフルに扮したマッツ・ミケルセンを初めて観たとき、悪役なのにあまりの魅力的な存在感に心を鷲づかみにされた映画ファンの一人ですが、今作もまた、非常に重厚で見応えのある歴史ドラマのど真ん中にミケルセンが鎮座し、先の読めない怒濤の展開に固唾を呑んで魅入ってしまいました。舞台となる18世紀半ばのデンマーク、荒涼とした荒野(ヒース)の自然の厳しさと対比して、人間のちっぽけさがひしひしと伝わってきました。こんな痩せた地を鍬で開墾しようとするケーレン大尉(マッツ・ミケルセン)の無謀とも思える挑戦の前に立ちはだかる広大な自然、さらには歪んだ権力意識をもつ残忍な領主デ・シンケル(シモン・ベンネビヤーグ)との対立を軸に、様々な人間模様が絡み合い、ぐいぐい引き込まれました。予測不能の展開の先にある結末は、まさに驚きと感動があり、しばらく余韻にひたったまま現実世界に戻れないような充実した映画体験でした。
王
貴族の称号、それなりの報酬を求め王の家を作り、苦を乗り越え偉業を成し遂げた男。
彼は優しく偉大なるも、時に人生の選択を間違えたり。
行動すべき所で踏みとどまったりする。
彼の人生は晩年まで描かれるが、その選択ミスは一生の効後悔、懺悔となったり。
いくら大きな事を成し遂げても人生に悔いは残るんだな。
王たる者も、人で有ればやっぱそうなんだな。
でも彼は最後あれほど欲しかった貴族の称号、お金、地位を、全てを投げ捨てその後悔を取り戻しに行動する。
そうだ、それで良いんだ!
キミの一番はもう持っていたじゃ無いか、ただ無自覚だっただけだろう、キミが得たモノは偉業や、農産資源じゃ無いよね。
彼が施設で娘抱きしめ、最愛の人を救い出し、何も無い野原に強引だろう、法に背いてもただ妻を助けたかった転げ捨てられた手錠に、切なさと正しさと、決意の行動が描かれてた。
正しい王でも選択を誤り、自分を恥じるんだな。
間違いは有るさ、でもソコを全力に、全てを捨て正しさに向かうのが本物で有って欲しい。
これが史実だって?やるやんカッコいいやん。
荒野の果てに見つけた小さな春の芽
敵の狂いっぷりがしんどかった
主人公はマッツ・ミケルセンだけに、とにかくいい男として描かれていましたね。
敵の横取り汚職貴族・シンケルの気が狂っていて、嫌がらせの遣り口が陰湿なのがしんどかったわー
そのシンケルが、どうやってマッツに●されるのかを楽しみに待つこと、110分くらい。
邦題がネタバレみたいになっていました。
理不尽に負けず自分を貫く
BASTARDEN
18世紀のデンマーク開拓史の実話という事だが、正直言って時代背景の知識はほぼゼロの状態で鑑賞。ただ、それでも観ている間に登場人物の人間関係は分かるので問題はない。
非道な領主からえげつない仕打ちを受けながらも、貴族の称号を懸けて荒野の開拓に挑む退役軍人の話。悪徳な権力者というのは、どこの国にも実際にいたんだなと率直に思う。
原題の「BASTARDEN=私生児」は、貴族と使用人の間に生まれ、父親に認知されなかった主人公の出自のことを表してるのだろう。だからこそ貧困から脱するためだけでなく、自らの尊厳のためにも過酷な挑戦を続けたのだと推測。途中から家族とのつながりに目覚めていくところも人間味を感じるストーリー。
マッツミケルセンの演技と佇まいはやっぱり格好いいの一言で、それだけで観ていられる。もう今年で60になるらしいが、こんな風に年を重ねたいと思わせてくれる名優ですね。
主役の演技に高評価。
人を失い愛を知る
【追記】2025.7.15
この映画はもっと評価されて良い作品だ。静かな作品だが観終わった後暫く考えさせられるのだ。あの重い鉛色の曇り空の下の凍てつく大地の如く…。不毛と言われた土地であったが其処には明らかに愛が芽生えてあったのだ。
【レビュー】2025.2.22
この映画の日本語タイトルは嫌いではない…。
"愛を耕すひと" 自身では全く気付いていなかったが、、、確かに彼は愛を耕していたのだ。それも毎日毎日コツコツと……。。 自分自身が気付くまで。
この物語りの主人公は私生児として生まれ育ったケーレン。彼は彼自身のアイデンティティを証明する為(ここでは貴族の称号を獲る事)、只々猪突猛進となって不毛と言われた大地を耕す事を目指す。それはある意味、彼自身が自分に課した呪縛であり生きる糧なのである。その過程で擬似家族を体験し人としての温かみを初めて知る。しかし移住民の差別で我が子同然であったアンマイを手放した事でバーバラも離れて行く。そして悪徳貴族のシンケルに捕らえられる。一方バーバラはシンケルによって自分の夫を殺された恨みもありシンケルを殺害し投獄される。この助けがありケーレンは解放される。その後ケーレンは荒地開拓の功績が認められ男爵の称号を得るが、その家には誰も居なくなり…その寂しさからケーレンは食事中ひとり涙ぐむ。。愛を知った瞬間だ‼︎
これは私たちの分‼
貴族の称号を得るために不毛の土地を開拓しようと奮闘する元軍人が、悪い地主に邪魔されながらも様々な人と出逢っていく中で…といった物語。
中盤までは、割と静かな場面が多くを占めるが、そこは北欧の至宝!その画をずっともたせてくれるのは流石です!それでいて、はじめは子供相手にも容赦がないですね。「知るか!」にはゾクッとしましたよ(笑)
逃亡者の夫婦やゴロツキの少女等々、アウトローな人々がその時々の利害によって集まったり去ったりする流れは見応えがありますね。権力と人間の汚さがこれでもかと…。
また、思いの外ロマンスやアクションなんかもしっかり見せてくれましたね。収穫祭の影で湖のシーンなんかは思わずニヤニヤしちゃいましたよ。イチャつきやがって(笑)‼んで、若き地主も、恐れられながらも一目置かれていない感じがまた良い味出している感じ。
終盤はいよいよ事が大きく動き出した感じで緊張感が‼あの方とあの方のニヤミス!?…からのこの共闘(⁉)はアツい。これは彼の分、そして追撃のあそこは…きっと苦しめられてきた彼女たちの恨みなのでしょう。
登場人物も皆良キャラ揃い。逃亡者夫婦や神のお兄ちゃん、ゴロツキ達…。この土地の開拓に関わった全ての人達が魅力的でした。
しかし、ちょっとわからなかったのが、この時代の背景とか詳しくないがケーレンは国王のお墨付きなんだったら、有力者とはいえシンケルの一人くらいどうにでもできたんじゃないのかな?この時代の地主がとても権力を持っていることはわかるが、国王の土地を好き勝手しても黙認されるほどなのか?
とにかく、この時代と悪権力、自然の厳しさをまざまざと見せつけられながらも、そんな哀しみの中に隠れた小さな幸せ…春の芽のような希望をほんのりと感じられる良作だった。
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