「耕していたものは愛だった」愛を耕すひと さやたぬさんの映画レビュー(感想・評価)
耕していたものは愛だった
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この映画で印象的だったのは俳優たちの目の演技だ。浅黒い少女を厭い恐れる大衆の目、その少女を娘のように愛おしく見つめる"家族"の目、愛おしい少女を手放し見送る悲しみと迷いに満ちた目。たとえ家族同様の者たちが殺さようとその怒りの感情に満ちた目から涙が零れることは無かった。その決意の裏にはいつも開拓への強い意志があるように見えた。
映画が後半に差しかかるまで「愛を耕すひと」というタイトルの意味を理解するのが難しかった。たしかにアン・バーバラやアンマイ・ムス、アントンとは家族同様の絆を育んでいたが、開拓という最大の目標の元、その絆さえ一次は犠牲にされていたからだ。しかしアンマイ・ムスが他の家族を見つけ、ヒースを去った途端、いかなる状況に置かれようと一滴の涙も流さなかったケーレンの目から涙が零れる。
そこからストーリーは一転。命を懸けて耕したヒースの地を呆気なく去り、自分の人生を犠牲にしてまで命を救ってくれたアン・バーバラを取り戻しに行く。このシーンからは家族を犠牲にしてまで貴族の称号を求めたケーレンと、愛するもののために命を犠牲にした家族の対比が色濃く表現されていて、とても巧妙だと感じた。結局、映画は開拓したヒースの土地だけでなく与えられた悲願の貴族の称号をも捨てたケーレンが、命をかけて愛してくれた愛する人の願いを叶えに行くというラストシーンで締めくくられる。
ケーレンが命をかけて開拓したものは土地ではなく愛だったのだ。
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