きのう生まれたわけじゃないのレビュー・感想・評価
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福間健二さんのラストメッセージ
脳梗塞で倒れられ2023年4月に亡くなられた福間健二さん。今作は期せずして遺作となった長編第7作。
学校に行っていない中学2年生の少女(くるみさん)と若い頃に妻を亡くした77歳の元船乗りの老人(福間さん)の交流。
ここにあるのは希望。
ゆったりとした優しい時間が流れた。
そう、人と人が出会い、与えあうことでささやかな希望が生まれるという福間さんのメッセージ。
我々への遺言として十分成立していた。
学校や親に希望を感じない女子中学生、 通りがかりのご婦人や老人らと...
学校や親に希望を感じない女子中学生、
通りがかりのご婦人や老人らと、会話して打ち解けてゆくうちに、
本人も周囲も、ネガティヴネスがそぎ落とされ、いろんなものの見え方が深くなってゆく様子。
"ゆうかんな女の子ではなく、ゆうかんな人"
"人間やめられねえ"
とか、よそでも活用したくなるパワーワードがちりばめられていました。
鑑賞直後の印象は、整理した言葉にはしきれませんでしたが
それはそれでいいかな、出会いのつどの変化はあるよね、と割り切るのでもいいかなとも感じ始めています。
人はむかし鳥だったのかも知れないね
製作者の意図と異なるだろうが、七海の単調で投げつけるような口調によって、発する言葉がもはや意思伝達機能を喪失して意味の無い音声になっているように見え、誰かに言わされているという感触が付き纏う。その結果彼女が「学校や親や社会システムから脱却すれば幸せになれる」と無理に思い込まされている可哀想な子に見えてしまう…のは捻くれ過ぎかな。
きのう生まれたわけじゃない
福間監督の訃報を知ったのは電車の中だった。
あの時、佐々木ユキが乗った電車が東日本大震災後の世界に行くように、
我々を乗せた電車も福間監督のいない世界に向かうのだと思った。
それから半年、福間監督の新作が公開された。
上映後の舞台挨拶で福間惠子プロデューサーも話されていたように
これまでの福間監督の作品が色々詰まった宝物みたいな映画だった。
「わたしたちの夏」の死者と水の流れる音、
「あるいは佐々木ユキ」のもう1人の自分との対面、
「秋の理由」の老人の彷徨う闇。
コロナ禍の未来を感じさせた「パラダイス・ロスト」と同じく、
ご自身のいない世界をも予見していたかのような本作だけれども、
その世界は暖かい眼差しに溢れていた。
映画のその先を魅せ続けてくれた福間監督の映画、
新しくて古い きのう生まれたわけじゃないもの達を大切にしよう、そう思った。
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