青春ジャック 止められるか、俺たちを2のレビュー・感想・評価
全8件を表示
敗者復活で必要悪
粗筋から、ミニシアター経営の方に舵を切るかと思いきや、範囲を広げつつ上手く纏めていた。
シネマスコーレ支配人に抜擢された木全を演じる東出の、純粋な熱を秘めた穏やかさが素晴らしい。
出番は少ないが、悪戯っぽい微笑みで受け入れる妻のコムアイも良かった。
前作の吉積を思わせる金本の拗らせっぷりと、また別の拗らせ方をした井上を演じた芋生と杉田も見事。
ちょい役の田中麗奈や本人役の竹中直人まで隙がない。
名古屋と東京で散漫になるかと心配したが、バランスよく繋げてある。
締め方も今回は全方位的に前向きで爽やかで、気持ちよく観終えることが出来た。
若松監督が10年前設定の前作とまったく同じことを言い続けてたのも、何だか嬉しかったなぁ。
最後、インタビュー映像かと思いきや…亡くなった後も彼らはずっと撮り続けているのだろう。
終盤、井上は「殺したい人もいなければ在日でもない」と嘆く。
これは『アイデン&ティティ』で中島が言った「不幸なことに、不幸なことが無かったのだ」を想起した。
贅沢な悩みだが、創作者にはつきものなのか。
映画愛に溢れつつ、エンターテインメントとしても抜群の群像劇でした。
エンドロールで芋生悠の役名が“本名”になっていたのも心憎いです。
全体的になんとなく良かった。
井上淳一と金子法子の青春ストーリーが良い。
井上は自分が、「在日かゲイか部落」でないと嘆く。差別された怒りが有れば、それを映画にぶつけて生かせると思っている。撮りたい対象も怒りもないから映画が撮れないと言いたいのだろう。
金子は自分は、「女で、才能がなく、在日」だから映画監督にはなれないと嘆く。若松監督に弟子入りした井上が河合塾の映画監督をやる記事を見て落ち込む。
木全は落ち込む金子を井上が監督している現場につれて行き、若松監督に仕切られている実情を見せる。この時、「何でここに連れてきたんですか?」と聞く金子に対し、木全がなんかいいこと言ったと思うんだが記憶にない (^^)
無い物ねだりはなにも若者だけではないが、若者がやると青春っぽくて良いなと思った。
金子が屋上から顔を出して井上を呼ぶところと、屋上の場面が印象に残った。
名古屋にミニシアターを作った若松監督は、客の入りが悪いなあとボヤく。一方、支配人になった木全純治は、若松孝二に振り回されるがやや楽天的だ。
若松監督は、客が入らなきゃつぶれちゃうよ。ピンクでも何でもいいから客を増やせと思っている。
木全はいい映画を上映すれば、その内だんだん客も増えますよと思っている。
いい映画を上映したいという想いはどちらも同じだが、やや温度差があり2人のやり取りが面白かった。
、前作でも誰かが若松監督に、「視界から消えろ」と言われてたような気がする。
映画は熱だ!
シネマテークが閉館し、名演小劇場も休館中。
かつて存在したシルバー劇場、ゴールド劇場も利用したことがあるが、名古屋からミニシアターが姿を消しつつあるのはとても寂しい。
とりたててシネマスコーレが居心地の良い劇場だという印象はないものの、ラインナップは面白いものが多かった。
そんなシネマスコーレの誕生エピソードを興味深く拝見することが出来た。
とにかく画面から伝わる熱量が程よく、重すぎずも軽すぎずもしないとても心地の良い作品だった。
それぞれの登場人物の人生にしっかりと寄り添った作品でもあり、支配人の木全、映画監督になりたい金本、井上、そしてもちろん前作に引き続き井浦新演じる若松孝二監督もとても魅力的に描かれていた。
木全は本当に映画に対する熱が強く、名画座の集客が悪く、ピンク映画をかけざるを得なくなった後も、映画の未来を信じてインデペンデント系の映画を上映することを若松監督に強く訴えかける。
その熱意が今もこの劇場がしっかりと名古屋の地に根付いている要因でもあるのだろう。
奥さんとのエピソードもとても心が暖かくなった。
そして夢を追いかける金本と井上。
夢を追いかけることは決してポジティブなことばかりではない。
むしろこれ以外に選択肢はないと執着してしまえば、ただひたすらに苦しいものである。
金本と井上の存在はとても対称的に感じた。
どちらも人間的には闇を抱えており、決して好感の持てる人物ではない。
最初は井上は口ばかりの男だと思っていたが、若松監督を追いかけて新幹線に乗ってしまう場面には驚かされた。
彼はとても行動派な男だったのだ。
そしてあまりビジョンがないようにも感じられるが、実は心の中には強い想いを持ち続けている。
彼の初の監督作品もほぼ若松監督に乗っ取られた形になってしまうのだが、それでも悲壮感はほとんどなかった。
一方、金本は自分が女であること、才能がないこと、そして在日であることを理由に、なかなか一歩を踏み出すことが出来ない。
そして運のある井上に嫉妬し続けている。
あまり自分のことを大事にしない金本に良い印象は抱かないものの、だからといって彼女が決して魅力的でないわけではない。
苦しみの中でもがき続ける人間だって、とても美しいものだ。
そしてただひたすらにマイペースな若松孝二。
何だか前作以上に彼の優しさが滲み出る作品だったが、むちゃくちゃといえばむちゃくちゃでもある。
だが何だか憎めない。
滝田洋二郎、黒沢清、荒井晴彦、周防正行と、現在の映画界の大御所が若手として名前を連ねているあたりがとても感慨深かった。
結局最後は映画は熱なのだと思った。
若松監督の「映画は心なんだよ」という言葉が印象に残った。
井上の初監督作品の実際の映像がエンドロールで流れるのは感動的だった。
今は亡き赤塚不二夫、そして本編にも本人役で登場する竹中直人の若かりし日の姿が目に焼き付いた。
まだ見ぬ果ては
自分の映画人生の一歩目を刻んでくれたのが「止められるか、俺たちを」でした。
住んでいた地元は映画館事態少なく、ミニシアターも1館だけ。色々と非日常にまみれていて新鮮でしたが、そこで見た作品も映画に生きる人たちを描いていて、今でもしっかりと覚えています。
そんな作品の続編ということで、どう繋げていくんだろうと思ったら若松監督が映画館を立ち上げた話がメインで進んでいくんだとあらすじや予告を見て腑に落ちました。
やはり楽しかったです。井上監督の自伝的物語でもあり、破天荒全開の若松監督を客観視して描く物語がユニークで、前作よりも作風は明るかった気がします。
東京と大阪は土地代が高いから名古屋に映画館を作ってしまおうと思い切った発想の若松監督から連なる縁で広がる人間ドラマがメインになっていて、その人間模様を見守る分にも面白かったです。
屋上のシーンで語り合ったり、妬みで自分を封じ込めてしまったり、とにかくリアルさが追求されていました。
若松監督の撮影方法は理にかなってるな〜と思いつつも強引なので、当時の現場にいた人たちは恐れ多かっただろうなと思いましたが、スクリーン越しに観ている分には笑っていたので観客で良かった〜と思いました。
井上青年が撮影してる作品を自分色に染め上げるどころかもう自分で撮っちゃうのが面白すぎました。
ラストシーン、青空をバックに若松監督がかつての盟友やめぐみさんが監督を呼び込んで歩き出すシーン、こんなにかっこいい後ろ姿があるのか…!とゾクゾクさせられました。
役者陣は前作から井浦さんが続投で、東出さんに芋生さんに杉田さんが参加していて、演技合戦になっていたのも良かったです。
井浦さんの普段とは違うクセ強めの演技に、東出さんの飄々とした感じ、芋生さんと杉田さんの若々しいギラギラな感じと、色々な面が観れました。
色褪せない映画の面白さと楽しさが詰まっていて、映画人生の始まりが蘇って懐かしい気分になれました。これからも映画を振り返るたびにこの2作がよぎるんだなと思ったらこれからの映画人生も楽しいものになりそうです。
鑑賞日 3/20
鑑賞時間 10:00〜12:05
座席 E-12
2024暫定ベスト。青春時代の熱さと挫折
映画監督に憧れる大学生が、助監督になる。
しかし現場では失敗ばかりで無能扱いで小突き回され、
落ち込む。
在日の屈折した女の子は、心を開いてくれる。
青春時代の現実社会で味わう挫折の苦さ。。。
最後は成功とかの起承転結が無いところが良い。
2024暫定ベスト
井上淳一監督の芋生悠ジャックはなんとしても止めなければならぬ
若松孝二監督追悼上演の海燕ホテル·ブルーを観に2年前にテアトル新宿へ行ったなぁ。
井浦新らの出演者たちに加えて、足立正生監督もトークショーに登壇。
芋生悠が演じた金本法子。
井上への嫉妬を燻ぶり続ける監督志望のアルバイト。彼女は架空の人物らしい。若松孝二の反骨精神のコアな部分を唯一受け継ぐ人物に思えた。
井浦新演じる若松孝二は懐の深い人間味に重きをおいた陽の部分が多い演出で、番号登録のない黒電話の向こう側にいたあの人の姿も全然出て来ないこともあって、アウトローな側面を金本法子のキャラに練り込んだように感じた。それはビルの屋上でのシーンにおいてもっとも強く感じられた。
やっぱりスゴいよ芋生悠🤩
シネマスコーレの券売のガラス越しに井上を見つめる表情にも凄みがあった。
映画の半分は河合塾。河合塾は名古屋発祥なんですな。塾の宣伝映画を若き日の井上監督が撮ることになったが、結局黙っていられない若松監督を描くことに(笑)。田中麗奈のバーで予備校の名物教師と若松監督を引き合わせる場面、伝説の講師の名前はマキノだった。マキノ雅弘?って思ってしまった。噂の真相の記者もでてきた。
河合塾の宣伝映画は「燃えよ青春の1年」っていう題。
1986年制作。
赤塚不二夫が郵便配達員役で出ていて、エンドロールでその映像が実際に流れる。
竹中直人(ナオト)も若い。
ウナ電?
ウナギイヌつながりか?
キャストの大半が福田村事件とダブっていた。
パンフレットを購入。井上淳一監督(58)にサインしてもらった。読んだら、井上監督は福田村事件と並行してこの映画を作っていて、「ソワレ」でぞっこんになった芋生悠を起用したくてしかたがなかったとのこと。芋生悠のためにというか、宛て書きした架空のキャストなのだろう。よく似た妹役のキャストもお見事。井上監督は映画の中で自分を演じる杉田雷麟を芋生悠に襲わさせることによりその想いを成就させようとしたのか? たぶんあのひともそこのところは見逃してはくれまい。サインもらったけど、これからはライバル視しなくてはいけませんなぁ。それとこれからも油断ならないのは荒井晴彦監督。
今年の映画芸術の年間ベスト&ワーストが楽しみ😎
雑談
83年4月名古屋の第二志望大学に入学、開館直後のシネマスコーレ会員番号52番。映研に入り一本だけ監督作もある。劇中で語られたのと同様、その前年に名古屋まで見に行った「爆裂都市」がダメで同時上映の舐めてた「水のないプール」に感動、それをきっかけに「若松孝二」を意識、「俺は手を汚す」もんだ。キネ旬映芸も読み、ピンクやロマンポルノの傑作にも触れた。ただ映画だけがすべてというわけではなく普通に就職してもうすぐ定年を迎える。そんなおいらにとって、この作品は時代背景も含め単純に測れない。そして分厚いパンフレットも読み物として楽しんだ。
映画で特に良かった点は東出昌大。「福田村事件」のエロい青年が、黙っててもあふれるフェロモンをフリーレン張りに消し去り見事に木全さんと化している。そして井浦新はもう若松孝二にしか見えない熱演。
だが嫌だった点も。まず井上の河合塾映画とそれにまつわる出来事の挿話が長すぎたことと金本の扱いが半端なこと。そして砂丘以降のまとめ方は意味不明で雑だ。
フィクションと明言されている金本は映画愛も創作意欲も語るべき葛藤をも抱えた存在であり、井上より若松孝二監督に接する機会も多いはず。サイドストーリーとして彼女を膨らませカタルシスに持って行くこともできたのでは。そして映画秘宝の坪井現支配人のコメント通り、あくまで若松監督と木全支配人の劇場にまつわるストーリーを中心にしたほうが良かったかもしれない。
とはいえおいらの青春のカタワレに触れられ、落涙したことも事実であった。
舞台挨拶付き上映!
映画館のメルマガで、本日の舞台挨拶を知り、ちょうど仕事休みの日だ~~と行ってきました。ミニシアターのため、俳優さんたちが間近に見られて感無量。
終了後ロビーにいらした有森さんに握手してもらえました~。
前作はガッツリ子育て中につき、映画館から足が遠退き作品自体知らなかったため、慌てて配信で見ました。少しテイストが違いますね。今作は単体でも十分楽しめますが、前作も見ておいて良かったです。
続編である今作は、1980年代が舞台。
若松孝二監督による名古屋の映画館シネマスコーレの立ち上げから運営、そこに関わる人々の物語であり、本作井上監督の若い頃の話。若松監督の追悼作品としても見応えあります。
若松監督を見たことがないにも関わらず、井浦新さんの監督役がそっくりと言いたくなるほどの個性的な演技でクセになりそうです。
こういうおじさんいるいる。クスリと笑えるところも多く、でもパワフルで、迷いがない。
「俺の視界から消えろ」は名ゼリフ。「ピンクを差別するな!」うん、作る側はほんっと大変なんだなって思いました。映画が好き、作る人、見る人、演じる人、経営する人。思いがつまっている映画でした。
井上君が失敗を繰り返し、自分が仕切らなきゃならないのにベテラン(若松監督)に注意される場面。金本さんのくすぶってる苛立ち。
そんな場面が、自分も経験あるので泣けました。泣く映画ではないのかもだけど、人生は悩みがつきません。
杉田君、この役にすごくピッタリな俳優さんでした。
結局、看板の「しねますこーれ」は、カタカナになってないのですね?
*****
本物の河合塾の紹介映画の美加理さんが出ていた「赤い秘密」ってドラマを、当時たまたま見ており、この1作でしか存じ上げなかったから後でパンフで知ってびっくり。
全8件を表示