劇場公開日 2023年11月3日

「敢えて入れた「、」の意味」人生は、美しい TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5敢えて入れた「、」の意味

2023年11月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

文化の日、午前回のシネマート新宿は今日が初日の『人生は、美しい』。ハングルの原題『인생은 아름다워』にも「、」句読点に代わるスペースが入ってますが、むしろハングルでは文節毎にスペースを入れるのが基本のようなので、邦題がそれに合わせた書き方。そして、映画を観ると敢えて入れた「、」の意味を理解します。
本作は事前情報として、劇場(多分、ヒューマントラストシネマ有楽町)で一瞬予告観た覚えがある程度で、折々に挟み込まれるミュージカル要素などは今回映画を観ながら「こういう映画だったのね」と知りました。別に嫌いではないんですけど、何というか内容も仕上がりもよく言えば「クラシック」。既視感もあるし、脚本そのものはベタですね。と言うか、主演のお二人が私と同世代なこともあり、むしろキャラクター設定は「一昔前感」すら感じます。
まず、早々に出だしからセヨン(ヨム・ジョンア)に対する夫ジンボン(リュ・スンリョン)のあんまりな態度や物言い(今どきはこれを「不器用」では済まされない)に始まり、息子、娘などもちょっと酷すぎて、物語が展開する場面になり、セヨンが「出ていく!」と言い出したのを、私の心の中でも「そうだ、そうだ、出て行っちゃえ!」と彼女を後押ししています(笑)。ところが、そこはセヨンの可愛げの現れ。それこそ、演じるヨム・ジョンアのチャームそのものですね。なんなら、それを救いに最後まで見続けた感が否めないというのが正直な感想です。
終盤には「お約束通りの展開」でホロリと泣かされる(ただし、中高年にとっては単なる生理現象)シーンもありますけど、相変わらず私の心中では「これでチャラになるかよ」と悪態をついています。でも、私と違ってセヨンは優しい。彼女の写真を見ながら、セヨンの家族に対する「妻、母としての無償の愛」なのだと、苦々しくも納得することにしました(笑)。
なんて、今回は自分の心情をコミカルに織り込んでみましたが、一方で今年、私と同世代でセヨンのように娘と息子がいらっしゃる友人の女性が亡くなり、しばらくショックを引きずり、また相変わらず彼女を思い出すたびに淋しい気持ちになることもあって、ちょっと重なる部分のあるこの作品に対して厳しい目線で見てしまっていることも否めません。でも、人生を思い返し、そしてそれを「美しい」と思えるか?と振り返ると、内容がタイトルに全く追いつけていないような気がしてしまいました。
まぁ、配信で十分な内容だと思います。残念。。

TWDera