ナポレオンのレビュー・感想・評価
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ナポレオンとジョセフィーヌの愛憎ラブストーリー
久々の超大作映画です。圧巻の人物・物量を惜しげもなく投入、爛熟たる歴史絵巻が正に動く様相に驚愕です。御年85歳とは信じがたいエネルギッシュ、もういい加減アカデミー監督賞を授かって当然のリドリー・スコット監督。彼の主義でとんでもない人員数のエキストラを起用した広大な合戦シーン、そして冒頭から首が跳ね飛ばされる様はまさに公開の重なった北野武の「首」と重なる。無論遠景などにSFXを多用しているでしょうが、リアルに痛い戦闘シーンの再現に心血注ぐのはどちらも共通してますね。無論、こちらの方がケタが違いますが。流石のアップル・コンピーターの潤沢な資金があってこそ。
誰もが知る歴史の偉人、しかし日本人にとって仔細までは学習してなく、でもフランス国民にとっては現在も圧倒的な英雄であり、関連するEU諸国にとっても、僅か200年前の事実である。と言う事は歴史を歪めることはご法度となってしまう。本作が「グラディエーター」のように脚色が許されない事実によって、圧巻の映像ではあるけれどクライマックスが存在せず、やや平板なエピソードの団子状態となってしまった。要するに息を詰める緊迫感も、エキサイトな面白みもないのは確かなのです。
しかしそれにしても監督の拘りは半端なく、忠実に歴史文献を遍くチェックし可能な限りの再現度はすさまじい。戦いの戦法から戴冠式に至っては絵画が動き出した如く。この再現が本作映画化の最初のポイントであり、もう一つがジョセフィーヌに首ったけ、完全に尻に敷かれたナポレオン像でしょう。前作「ハウス・オブ・グッチ」でのレディー・ガガ扮する嫁となにやら似ていますが。エジプト遠征の重大局面においてすら、一報を耳にした途端に部下に現場を任せ帰郷するほどに愛しぬいた。幾度となく手紙が交わされ、モノローグで思いのたけが語られる、狂おしい程の愛の映画です。もっと正確に言えば、激しい戦闘シーンが脇で、愛の混迷が主と言っても構わない。愛憎の経緯の間にアクションシーンを挟んだとも言えるのです。
ただ、その愛は相当に屈折しており、戦場での冷血完璧主義者とは完全に裏腹なところがミソでしょう。それ程に愛されるジョゼフィーヌ役にヴァネッサ・カービー程相応しい女優は現時点では見つからない、それ程の適役でしょう。「ザ・クラウン」での鮮烈な我儘女のイメージをそのまま背負い、奔放な女を少な目なセリフながら視線で表現する。貴族階級ゆえ囚われの身となり豊かな髪も無残に切り落とされた散切り頭で登場する。冒頭の断頭台でのマリー・アントワネットのボリューミーな髪との対比が活きる。ロベスピエール失脚によって釈放されたものの、夫を失い2人の子持ちで活きるすべを、自らに向けられた視線の先に飛びつくわけ。
主役のホアキン・フェニックスは屈折した狂気を孕んだ人物となれば、自家薬籠中で、少々歳がオーバーな点を除けば完璧です。何故世継ぎが出来ないのかの答えが出たあたりから、離婚が現実味を帯び、逆にそっけなかったジョゼフィーヌ側の思慕が募る皮肉。ただし、この愛憎の描写が完璧かと言えば少々疑問も残る辺りが惜しい。リドリー・スコットの不得手なところが露呈してしまったと言うほかない。
それにしても、トゥーロン城塞でナポレオンの馬が砲弾を直接浴び、馬の胸元が大きく抉れる衝撃シーン。ロベスピエールの自害ミスによる酷い損傷にもがくシーン。王政復古の民衆に向けての大砲による最前線の民衆の吹き飛ばされようも驚愕で。戦闘シーンでの兵士たちの仔細な死にざまも大画面に一挙に複数が展開するわけで。つくづくナポレオンが右手を下げれば、出陣するしかなく、それは兵士自らの死を確実に意味するわけで。ラストに明かされる300万人を超える人命がナポレオンの右手に委ねられていた恐ろしさ。溜息しか出ませんね。
特筆すべきは音楽で、土着の民族音楽と正当なクラシックを使い分けた本作音楽担当のマーティン·フィップスは素晴らしいと思います。一方で、ジョゼフィーヌのイケメン間男の描写は中途半端、獣のような愛のない交わりの必然も唐突で、これらについては2時間38分の映画版とは別の、APPLE+での4時間30分配信で描かれるのでしょうか。長ければいいってものじゃありませんよね、決められた時間で表現して欲しいものです。
予習おすすめ
アンチ「ナポレオン」な作品
リドリー・スコット監督の作品は私、実は名作「ブレードランナー」と「エイリアン」以外鑑賞してないという偏食ぶりですが、そのイメージから今作は何か傑作の予感が抑えきれず、早足で映画館に向かいました。
当初、この監督は近代史おいて誰もが知るこの偉人のカリスマ性を認めつつ史実や創作を交え、その人物像を良くも悪くも強烈に押し出してくれるんじゃないか、と期待してました。
しかし、期待とは裏腹に最初からストーリー上、何もかもパッとしないのです。
小男なのは良いとして(笑)、ギラギラした野心も明晰な頭脳もとてもある様に思えず、確かに執着心は人並み以上にはありそうだが、彼の数多の功績についてはなんとなくそこに居合わせたら、流れに乗ってたまたまそうなった・・・みたいな、大変受動的な印象をその脚本、演出から感じました。
思うに監督はナポレオンがあまり好きでない・・というよりアンチナポレオンな立場で、この作品に取り組んだのではないでしょうか。ナポレオンの戦果中心の功績を、わざわざ下げる様な不必要な史料を映画の最後に示したりして悪意だけは満ち満ちてましたし。
それに嫌いな人(ナポレオン)が指揮する戦争シーンの演出なんて力入るわけないです。まるで監督自身も傍観者を決めこんでる様な絵作りで・・・それダラダラ見せられる鑑賞者の身になってもらいたいです。正直、平凡なシーンの繰り返しで何度も睡魔に襲われました。
これは言いたくないけど凡作とおもいます。
いい意味でナポレオン夫婦の話
北野武「首」と同じく、予告編観ても実はあんまり期待してなかったのだけど、そうか「グラディエーター」コンビだったか。お客さん意外に多かったな。
そして先週観た「首」に重なる部分は多い。どちらも観客の知っている史実と戰があって、それを出していかねばならない。必然的に戰はダイジェストになるが、こちらはラストの数字と2〜3の単語のテロップにすべてが集約されて、ああ、なるほど、まさにそれ、という即物的展開で偉人でも奇人でもない「こんな男がいた」を次から次へ写す。
中でも妻ジョセフィーヌとの出会いと、結婚、離婚、離れがたい関係性になることと、そしていなくなってから、というところで大きく主人公の変化がでる。というかそこだけ面白い。ある意味、戦場で指揮する武将的な面白くもない側面(ある意味「首」におけるタケシの秀吉だな)をホアキンがやって、その内面をジョセフィーヌが背負った映画、という感じで、いちばん良かったのはもちろんヴァネッサ・カービーであるのが「ハウスオブグッチ」「最後の決闘裁判」のリドリースコット的。
もちろん、ナポレオンの戦いなので、ヨーロッパ周辺国、民族的色合い、舞台装置としてのエジプトのピラミッドにスフィンクス、無人の燃えるモスクワ、凍結湖での戰い、そしてワーテルローまで見せ場は凄まじく魅力的なのだけど、ダイジェストの絵巻物みたくてもったいない。なぜならナポレオンと兵士たちの話ではないので情報は入ってけるけど熱くはならない。
しかし、この間のスコセッシの「キラーズオブフラワームーン」と共にアップルスタジオ、凄いな。やっぱり映画会社ではこんなもの作れない。とにかくエンドロールが長い。いつまであるんだってくらい長い。本編はそんなことないけど。
ジョゼフィーヌ役(ヴァネッサ・カービー)が好きで。
中途半端
戦闘シーンは見応えがあり、特にワーテルローの戦いの方陣が観られたのはよかったです。
ただ、この映画、ナポレオンとジョセフィーヌの愛憎の遍歴に絞ったドラマにした方がよかったのではないかと思いました。
特にバネッサ・カービーの演技が素晴らしかったので、
歴史の知識がないとポカンとしてしまう繋がりの薄い脚本が何とも残念。
戦記ものでもなく、恋愛ものでもなく、どっちつかずの印象です。
ワーテルローの戦いは3日かけて決着がついているので、もう少し経緯をしっかり追ってほしかったです。
まあ、それだけで映画1本になっちゃいますけどね。
戦闘シーン目当てなら映画館での鑑賞をお勧めします。
フランスの英雄譚
誰に対しての映画??
安定のリドリー歴史大作シリーズ
ナポレオンについての知識はその名前と、かの有名な絵画くらいしかなく、どんな人物で何をした人たのか知らずに鑑賞しました。2時間半くらいの大作でしたが、さすがはリドリー・スコット監督。86歳の御大にしてなお、途中、眠くなったり、集中力が途切れることなく、最後までナポレオンという男の人生を切れのある、素晴らしい演出で飽きることなく見せてくれました。幾度なく出てくる戦闘シーンのスケールの大きさは兎に角、圧巻で、一体いくらお金をかければこんなシーンが撮影できるんだ?と思ってしまうらくらいリアルで凄いものでした。大スクリーンでこの戦闘シーンを観るだけでも映画館に行く価値があると思います。主演のホアキン・フェニックスとバネッサ・カービーの演技は魅力的で素晴らしく、この2人の運命の行く末に目が離せませんでした。ホアキンだからこそ表現できた、どこか得体の知れないナポレオンという男のカリスマ性が見事に映像に出ていたと思います。ドラマパートがブツ切りで散漫だと言う感想もチラホラ目にしますが、個人的には全く気になりませんでした。むしろ、よくこの時間で上手くまとめたものだと感心してしまうくらいでした。ナポレオンに詳しい方は色々とツッコミ処はあるのかもしれませんが、予備知識ゼロの私はとても楽しめました。久々に重厚な大作映画を観れた気分です。
とにかく、リドリースコット監督の手腕に拍手しかありません。まだまだ作品を撮り続けて欲しいです!
なんかあっという間に
新たなナポレオン
ジョゼフィーヌ
偉人にも弱さがある
偉人も人であり、人生がある
グラディエーター2への布石
悪くはなかったです。
史実に忠実であることを目的にした類の作品ではないです。
不正確さを指摘した歴史家へのリドリー・スコットの反応からも分かります(リドリー・スコットはそもそも今の人間が史実と考えているものも歴史の中で大きく脚色されてきたものである、といった反応を示しています)。
またグラディエーターの方向性でもありません。
どうしたってスペクタクルで英雄譚な娯楽大作を期待してしまいますが、その方向性ではないです。
ナポレオン(とその妻)に焦点を当てたヒューマンドラマです。
ナポレオンは人生の中で幾度も戦いを経てきたのでしょうからそれも映画の中でもちろん描かれていますがグラディエーターのように戦闘シーンが高揚する音楽で彩られているわけではないし戦闘そのものの中で感情移入しやすいドラマが描かれているということもありません。
あくまでナポレオンを描くための一つのパーツとして戦闘パートは淡々と描かれている印象を受けました。
国を愛する一人の軍人、妻を愛する一人の男。
この両側面を持つナポレオンという人間を等身大に描こうとした映画であると捉えました。
伴侶であるかに関わらず、女性男性に関わらず、愛する人間がいるならば多くの人が通常であればその愛する人との人生を選ぶのでしょう。
しかしナポレオンは自分の意思であったのか時代とその背景と立場がそうさせたのか運命であったのか国を愛する軍人の道を歩むことになります。
当然そこには悲劇や不条理が生じます。
本作、惜しいなぁ・・・と感じたのはこの部分の描き方がかなり最小限に留まったように感じられたところでした。
世継ぎ問題への対処方法など大きく響いたシーンもあったのですが、全体として歴史上の人物を主役にした創作・フィクションとして更に割り切って良かったように感じました。
しかし一本の映画として見ごたえは十分にあります。
淡々と描かれていると同時にリアルに描かれている戦闘シーン。
素晴らしかったです。
この時代の戦争は本当にこのように行われていたのだろうな・・・と感じさせられます。
陣形の変化、段階的に投入される歩兵騎兵大砲、これらが視覚的にとてもリアルに描かれています。
そして華やかな衣装や装飾。
これも素晴らしかったです。
戴冠のシーンは圧巻でした。
これらは2時間半という長丁場をあっと言う間のものにしてくれました。
上でも少し触れたリドリー・スコット監督、2000年公開のグラディエーター。
こちらは歴史の中で実在した時代を舞台に架空の人物(モデルは存在しているとのこと)を主人公にしたスーパーエンタメ作品。
歴史に脚色を取り入れた映画、この観点では今作ナポレオンと同じアプローチであったかと。
同アプローチによって齢六十ではグラディエーターという娯楽へ、齢八十ではナポレオンというヒューマンドラマへとフォーカスの変化を見せるリドリー・スコット。
今作ナポレオンは2024年公開を控えているやはり歴史+脚色で描かれる事になるグラディエーター2への布石になる作品かと。
果たしてグラディエーター2ではどちらの方向を示してくれるのか。はたまた全く異なる方向を見せてくれるのか。
個人的には1作目同様に徹底して娯楽作品として仕上げてくれたら嬉しいが、何にしても今作ナポレオンを見る限り衰え知らずのリドリー・スコット監督の作品として期待せずにはいられない。
ウイスキー
老けたナポレオン
ナポレオンのドラマティックな生涯を映画として魅力的に再構成した作品。
というよりは、彼の人生における名場面集のような内容。
ナポレオンに関するある程度の知識を持っていないとおそらく展開が良くわからないので注意。
複雑な人間関係は凡そ省略され、ジョゼフィーヌとの関係性に焦点が当てられる。
しかし俳優の関係上、若きナポレオンの痴情を目尻のしわが深い中年男性が演じる。
そのせいか前半は滑稽度が増して、この作品で始めてナポレオンを知る人間は彼の偉大さを全く感じないだろうな、と思わせるものがある。
主人公であるはずのナポレオンが深く掘り下げられることもなく、どちらかというとジョゼフィーヌを通した一つのステレオタイプが描かれる。
ただし、舞台背景やセットは作品を通して素晴らしい。
特に戦争シーン絵に描いたような美しさを出すよう工夫されている。
そのためだけにでも見る価値はある。
イヤな予感はしていたが・・・
なんだろう・・・この高揚感の無さは。2時間半超えの映画で、豪華なセットで戦闘シーンも多く盛り込まれてるにも関わらず、全然引き込まれない。やはり人物描写が薄いんですかね。ナポレオンは掴みどころないし、ジョセフィーヌも何考えてるか分からないし(不妊って言ってたけど、ナポレオンの前の男たちとの子供がいたような・・単に当方の予習不足?)。ストーリーも詰め込みすぎたのか、一つ一つのエピソードが唐突すぎて因果関係もよく分からず、ダイジェスト感が拭きれませんでした。肝心の戦闘シーンも誰が何のために戦ってるのか分からないので、とりあえず有名な合戦盛り込みました的な印象で(ここは当方の予習不足が原因)。。衣装も撮影も、お金かかってるんでしょうけど、この監督が歴史物撮りまくってるので映像に"慣れ""既視感"を何度も感じてしまいました。
リドリー・スコット監督作は個人的にハズレが多くて、今回もイヤな予感を振り切っての鑑賞でしたが、連敗中です。4時間バージョンもあるとかないとか言われてるようですが、世に出ても観ないと思います。
人類史で最も華麗かつ苛烈な男の驚くべき一代記!...ではない事に注意。
最も注意すべきは、この映画は伝記映画ではない、という事。成立してないです。
ナポレオンという信じ難い存在の人生なんて、金掛けた重厚な映像でただなぞるだけで不朽の名作になりそうなもんですけど、今作ではハイライトつまみ食い。場面場面の繋がりほぼ無く、説明もせず。でも最初の妻ジョセフィーヌとの関係性はめっちゃ丁寧にやる、という感じ。
そのジョセフィーヌのくだりも飛び飛びで挿入されるもんだから、とにかく一つのお話として連続性が感じられず、再現VTRの数珠繋ぎ感がハンパ無いんですよねぇ...。
欧米ではナポレオンがどういう時期に何をして、どんな戦いでどうなったか、とか常識過ぎて説明不要だからちゃんと描かないでOKって事なんですかね。ナポレオンの事ボンヤリとしか知らない人は、かなり予習してかないと置いてかれますよ。
まぁ今回は良い悪いというよりは、合わなかったという感じですかね。勝手に別なものを期待してしまったという事かなと。
いやでも、リドリーが監督してタイトルが「ナポレオン」なんだからさぁ....。
これだったらタイトルは「ナポレオンとジョセフィーヌ 〜愛と戦いの日々〜」とかにしてよ。観ないから。
予告編のホアキンの「この国は誰のものだ?」の表情にゾクゾクきて超期待してたんですけどね〜..。
もっと素直に、
故郷の小さな島を追われるように出てきた少年という出発点、
その頭脳と度胸を武器に混沌とした時代を上り詰め、やがて世界を動かすようにまでなる絶頂期(ナポレオンの何が凄いのかをしっかり描く!)、
全能感から慢心してやりたい放題やっている内に、転がるように落ちて行く落日
とメリハリと連続性をもって描く構成であって欲しかったなぁ...と。
私と同じように「物凄い男の物凄い人生が物凄い映像で物凄く描かれる」事を期待してた人は、長谷川哲也先生の「ナポレオン -獅子の時代-」「ナポレオン -覇道進撃-」を読みましょう。
もちろん面白く脚色しまくって破茶滅茶ですが、映画ではほぼ触れられなかった超個性的な部下の軍人たち(なんとノルウェー・スウェーデン連合王国の王様になって、現代スウェーデン王室にもその血が続いている人までいるという!)も大暴れ!
メッチャ楽しめますよ。
ていうか軍人皇帝ナポレオンを描くのに、その覇道を支えた元帥達が全然出て来ないなんて、アーサー王を描くのに円卓の騎士が出て来ないみたいなモンだよなぁ...狂ってますよ。
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