ほかげのレビュー・感想・評価
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こんなに優しい映画もない。
こんなに優しい映画もない。
戦後の苦しい世の中を生き抜く人たちの姿は、
同時に現在を生きる自分たちと重ね合わせて見ることも出来て。
全てを失うことがあっても、
強く生きて、それでもあきらめないでと。
最後闇市に銃声が鳴り響いて、
暴力に争いは尽きることはないだろうけど、
それでも生きていくんだって。
「戦争は終わったんだ」って、
空に手をかざす森山未來の姿が、
また哀しくてたまらない。
加害者側の恐ろしさ
終戦後の闇市が舞台。
戦争という絶望と闇が精神構造を蝕み
極限で肉体的にフラフラで生きる姿を
描いている。
人間が巻き起こした暴挙、戦争をビシビシと
画面から伝えてくる。
趣里さんの暗闇での瞳。そしてあの少年を
助ける為の叫びは印象的。
森山未來さんの演技も。
権力者からの目線と一般の人々からの
目線の温度差を映像を忌ましめるように観いった。加害者側の恐ろしさを伝えたかったのだろう。
あの少年が投げ飛ばされても器を
洗いに向かうシーンが目に焼き付く。
強く生きて欲しい。
地獄の先の地獄、絆とも呼べない絆
少年を中心に、趣里パートと森山未來パートで大きく分かれている。
趣里パートは、全編彼女の店の中だけで展開される。
少年や復員兵と出会い、疑似家族のような関係を築くうちに、機械のようだった趣里が“おかん”の顔を見せる。
それが単なる母性だけからのものでないことが後に明かされるが、一発の銃声が崩壊を招く。
ここで匂わされた復員兵の“トラウマ”が、森山未來パートに活きてくるのが上手い。
復員兵の過去を語らず、ここから派生して想像させるのだ。
こちらのパートは屋外が中心だが、それでも陰影の濃い画面が目立つ。
ただ、この作品の“闇”は、他でよく見られる単に見づらく分かりづらいだけのそれとは全く違う。
絶妙に表情を隠し、そしてそれ故に感情が浮かび上がるようにつくられている。
ダンスも得意とする森山未來はもとより、腕だけで魅せたタイトルバックなど趣里の肉体表現もまた素晴らしい。
子役も表情芝居が抜群で、台詞はやや(仕事内容のところなど特に)聞き取りづらいが、補って余りある。
最後の銃声や彼らのその後など、空白の残し方も適切だったと思う。
戦争を描かず戦争の悲惨さを描いている点も含め、近年稀に見るほど映画らしい映画でした。
疲れから瞬間的な寝落ちが何度かあり、その繊細な表現を堪能しきれなかったことが悔やまれる。
是非、万全のコンディションで鑑賞することをお薦めします。
人が生きると言う事
うーん、、
趣里の熱演、子役の男の子の瞳
戦争を終えるということ
時は敗戦直後。心と身体に傷を負った人たちに灯影(ほかげ)を当てた映画でした。主要登場人物は4人。女(趣里)は出征した夫が戦死し、子供も戦災で亡くなった模様。飲み屋をやっているが、実際は生活のために身体を売っている。戦災孤児(塚尾桜雅)は、文字通り戦災孤児。喰うために盗みもしているらしい。復員兵(河野宏紀)も同様に文字通り復員兵だけど、出征前は小学校の教師をしていた模様。戦地での体験から、PTSDになっている模様。テキ屋の男(森山未來)は、テキ屋をやってる場面は登場せず、謎の男だったけど、やはり彼も復員兵。戦地での怪我で右腕が使えなくなっている。
そんな登場人物たちが、それぞれの”戦争”を如何に終わらせることが出来るのか、というのがテーマでした。結局将来に望みが繋がる解決に至ったのは戦災孤児1人だけという感じでしたが、それだけ戦争の残した傷跡が大きかったということが実感できる作品でした。印象に残ったのは、終盤の「戦争から帰って来られたのは、怖い人だけ」というセリフでした。逆に言えば、怖くない人、優しい人は死んでしまったということであり、一つの真実だとは思うんだけれども、戦争の恐ろしさを実感できるセリフでした。
物語的には起承転結がはっきりしていて、最初から60分くらい経過するまでの”起承”の部分は女の居酒屋が舞台となっており、てっきりワンシチュエーション映画なのかと思いました。しかし戦災孤児が家を追い出されて”転”の場面になると、物語は大きく動き出しました。テキ屋の男が戦災孤児が持っていたピストルに拘ったことから、何となく結末が見えてきましたが、森山未來の存在感溢れる演技とともに、非常に衝撃的な展開でした。
一方復員兵の存在は、イマイチしっくり来ないものでした。中盤まではキーパーソンの一人でありながら、女の飲み屋を追い出されて以降は物語に絡まなくなってしまい、最後の最後”結”の”結”の部分で申し訳程度に再登場というのは、ちょっと残念な展開でした。
いずれにしても、日本にとっては80年近く前の話ですが、世界を見渡せば今まさに戦争が行われている訳で、そうした地域に住む人たちが、如何に苦しい立場にいるのかということに、自ずと思いを馳せる作品でした。
因みに全く異なるジャンルの映画ですが、先日観た「ゴジラ-1.0」と時代状況も登場人物の心情も重なっているというのは、偶然なのでしょうか。思うに今の日本の状況は、第2だか第3の敗戦後とも言うべき惨憺たる状況とも捉えることが出来るような気がするだけに、そうした現代の状況がこうした作品を生んだのではないかと思ったりもしたところです。
そんな訳で、評価は★3.5とします。
ヒリヒリとした空気感の割に「戦争の理不尽さ」が伝わってこない
戦災で生き残った女と復員兵と戦災孤児が「疑似家族」を構成することで、戦争で荒んだ心に仄かな幸せの火が灯る・・・
つい最近の「ゴジラ−1.0」でも同じようなシーンを見かけたが、こちらは、時としてホラー映画のような画面作りが不穏な空気を醸し出している。さらに、耳障りにも感じられる大音響の効果音や叫び声が、ヒリヒリと神経を逆撫でする。
この映画は、前半の室内劇と、後半のロード・ムービーの大きく二部構成となっており、全体としては、少年の目を通して、生き残った人々に刻まれた「戦争の傷跡」が描かれている。
ただ、後半の、捕虜の殺害を命じた元上官に復讐しようとする元兵士の話はまだしも、前半の居酒屋の話からは、少年や復員兵が悪夢にうなされている場面以外は、あまり戦争の悲惨さは伝わってこない。
あるいは、「ゴジラ−1.0」ではテーマにもなっていたサバイバーズ・ギルト(生き残った者の罪悪感)も描かれず、どうも戦争や空襲のトラウマが観念的で、生々しく胸に迫って来ないのである。
あの時代に、同じような境遇で、体を売らなくても生きて行けた女性はたくさんいたはずなのに、どうして居酒屋の女が、そうなってしまったのかもよく分からないし、闇市などにたくさんいたはずの戦争孤児が、たった一人しか出てこないのも不自然に感じる。
ザワザワとした、あるいはヒリヒリとした空気感の割に、「戦争の理不尽さ」のようなものを実感することができなかったのは、やや肩透かしだった。
彼らの悲痛な思いを忘れてはならない
小動物のような可憐さと野生味。不安気な表情、そして時折見せる柔らかな笑顔。趣里さんの魅力、渾身の演技に引き込まれた。
或る決意を胸に秘めた男性を森山未來さんが、かつて心優しい小学校教員だった復員兵の青年を河野宏紀さんが、つぶらな瞳が印象的な戦争孤児を塚尾桜雅君が熱演。
ほぼ満席のキネマ旬報シアターに登壇された塚本晋也監督。平和への思いを優しい声で語られる姿が印象的でした。
戦争の惨たらしさを私達は決して忘れてはならない。
映画館での鑑賞
暗くて意味不明な時間が長すぎる
独特な雰囲気で面白い映画です。誰が監督か分からない作品より良い。
ただ、この映画は、とにかく暗いシーンが多く何をやってるか分からない。カット割りも多いので、誰が?何を??というシーンが多い。さらに初めの60分くらいは意味がわからない。
かなり苦痛。
配信では見てられないと思う。スクリーンより画面の方が暗すぎて分からないだろうし、とにかく60分は辛い。私なら絶対途中で止める。
趣里と森山未來の演技で何とか観てられる。
特に趣里はファーストシーンで子供出てきたと思ったくらい可愛らしい。
最後の20分くらいでようやく意味がわかったけど、、、感動したり泣いたりすることでもないかな、、
ただ、映画は監督のもの、これだけ個性的な映画になってることはすごいと思います。
坊やの用心棒
戦争孤児の強い眼差しの先に…
どんな戦争映画より
戦争の愚かさ虚しさを痛感する
塚本晋也監督の作品。
2014年に公開された塚本監督版「野火」は
今まで体験した戦争映画の中で
最も生々しい衝撃を与えられました。
戦地で植え付けられた
恐怖や苦痛、憎しみは帰還兵の
精神を蝕み続けます。
戦争が終わっても終わらない苦しみ。
広島出身の自分は小学一年生から
8月6日の登校日は全校生徒で
原爆の映画を鑑賞しました。
小学生にはトラウマ級の残酷な表現や現実は
戦争への嫌悪を植え付けてくれました。
絶対に必要な経験だったと
当時の教育方針に心から感謝しています。
信念も良識も矜持もなく
バイデンの戦争ビジネスに加担し
日本を戦争の出来る国へ向かわせる
岸田総理に是非鑑賞して頂きたい。
戦後の生活って壮絶だゎ
結構見てみたら得した映画。
タイトルなし
TIFF2023にて。
この作品も、『野火』『斬』同様の、ヒリヒリした、不条理さからのやるせなさだったり、人の弱さだったりという機微が表現されていて惹き込まれる素晴らしい映画でした。
全ての登場人物に目力があって印象的でした。
映画祭QAで監督曰く、戦後の闇市にインスパイアされて、そこを舞台に何か作品を作りたかった。キナ臭くなってきた世の中を憂いての、祈りの映画だと話しておられたのも印象深かったです。
終戦直後の日本。
闇市が立つとある場所。
皆、戦争がもたらした不条理さに絶望し、目に怒りを宿し、心の傷を抱え、生きることを見失いかけている。
それぞれのキャラクターが交わる時、ドラマが生まれ、心の闇が少しずつ明らかになってゆく。たどる行く末がとても気になり、こちらもヒリヒリしてくる。
全ての愚直で不器用なキャラクター達がたどる先を見て、
「ああ、そうか…。そうなったか…。」
と心が傷んだ。
良きにせよ悪しきにせよ、それぞれの未来がある。泥の中でも咲く蓮の様に、立ち上がって上手く生き延びることが出来た者が最後に勝ったと言えるのであろう。
ラストはそんな希望を感じさせてくれる終わり方であった。
1946年以降、社会福祉のパラダイムが構築されても昭和中期までは、元闇市が発展してた場所などで、傷痍軍人などを見かけていたが、至る場所のある所では、こういう歴史を辿っての今があるのだな…と理解出来て、そういう意味でも、興味深い作品でした。
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